息子を殺した男は「ゲイパニック」を言い訳にした。もう悲劇を繰り返させないで

LGBTQへの暴力を正当化する抗弁を認めてはならない
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1998年10月7日未明、ワイオミング州で大学生マシュー・シェパードさんがゲイであることを理由に2人組の男から激しい暴行を受けた。牧場のフェンスに縛られて執拗に殴られ、氷点下になった現場に放置された状態で発見され、5日後に死亡した

この事件をうけて、人種や宗教に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)を禁止する連邦法の対象を同性愛者などに拡大した改正法案が2009年10月に成立した。この法律は、マシューさんと同時期に殺害された黒人男性の名前も加わった「マシュー・シェパード、ジェームズ・バード・ジュニアヘイトクライム防止法」と呼ばれる。

このブログは、事件から20年の節目に、マシューさんの母親ジュディさんが、ゲイに対する暴力を正当化する弁明「ゲイパニック・ディフェンス」に警鐘を鳴らそうと書いた。

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1998年10月にワイオミング州でマシュー・シェパードさん(21)が殺害されてから1カ月後、ニューヨークで追悼集会が行われた
1998年10月にワイオミング州でマシュー・シェパードさん(21)が殺害されてから1カ月後、ニューヨークで追悼集会が行われた
EVAN AGOSTINI VIA GETTY IMAGES

息子を殺害した男たちの一人が、情状酌量として「ゲイパニック・ディフェンス」(同性愛者の男性に恐怖心を覚えてパニックになり、過剰反応すること)を訴えた日を私は鮮明に覚えている。その男は別の男性に言い寄られてショックを受け、恐怖を覚え、そして自制心を失ったという。そんなばかげた根拠が通用してしまうのかと驚くしかなかった。

こうした加害者たちは、ありのままの自分でありたいという人に危害を与える言い訳として「ゲイパニック・ディフェンス」をずっと悪用してきた。男性が女性を性的暴行した時、「彼女が求めてきたからだ」と言い訳するのと同じだ。

衝撃的な現実がある。いわゆる「ゲイパニック・ディフェンス」を法律で明確に禁じているのは、カリフォルニア州、イリノイ州、そして7月時点でロードアイランド州のわずか3州だ。マシューの死から20年経過したのに、行動を起こしたのはわずか3州なのだ。そしてもちろん、彼が殺害されたワイオミング州は、その3州に含まれない。さらに驚くべきことに、ワイオミング州をはじめとする5つの州では、ヘイトクライムを規制する関連法がいまだに施行されていない。

しかし最近になって、マサチューセッツ州選出のエド・マーキー上院議員とジョー・ケネディ下院議員の2人が、「ゲイパニック」を弁明として使うことを禁じる「ゲイパニックおよびトランスパニック・ディフェンス禁止法」を提出した。この法案は、連邦裁判所でLGBTQに対する暴行に対する法的正当性を訴える時、「ゲイパニック」、そしてトランスジェンダーに対する「トランスパニック」を使って弁護してはならないというものだ。

「NewNowNext.com」では次のように報じている。

ケネディ氏はワシントン・ブレード(LGBTQ関連のニュースサイト)に対して、LGBTQに対する敵意が突発的な暴力につながったとする主張は、「ディフェンス(防衛)ではなくヘイトクライム」だと語った。

「そもそも、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーに対する暴力を正当化する法律上の抜け穴はあってはならない」と、ケネディ氏は付け加えた。 マーキー氏は、個人の性的指向や性自認が「暴力を受ける口実となってはならないし、法廷をヘイトの場にしてはならない」と述べた。

「ゲイパニック、トランスパニックを利用した抗弁は、LGBTQコミュニティに対する理不尽な恐怖と偏見によるもので、刑事訴追の正当性を脅かすものだ。こうした抗弁は禁止し、すべてのアメリカ人が尊厳と慈悲の心をもって扱われなければならない」と、マーキー氏は続けた。

マサチューセッツ州でゲイの男性が何日間も監禁され、暴行を受けた事件で、容疑者の10代の若者は「ゲイパニック」が引き金となったことを主張している。またテキサス州では、ゲイの男性を刺殺した男の刑罰が軽かったことから、「ゲイパニック・ディフェンス」が今も通用していることに懸念が広がっている

20年前、私の息子を殺害した1人アーロン・マッキニーがこの抗弁を試みたが、幸いなことに裁判官はこれを却下した。当時、ゲイパニック・ディフェンスは通用しなかった。そして今も通用させてはならない。

法律専門家のほとんどは、「ゲイパニック・ディフェンス」を抗弁で使用すべきでないと述べている。アメリカ法曹協会(ABA)は2013年、法廷内でLGBTQに対するパニック・ディフェンスの抗弁禁止を求める決議を全会一致で採択した。そしてマーキー氏が提出した法案を支持し、「こうした抗弁は、私たちの社会や司法制度に存在してはならないし、また存在させないように法制化されるべきだ」と表明している。

息子の死を受けて成立した2009年の「シェパード・バードヘイトクライム防止法」と同様に、LGBTQへのヘイトクライムは大半が州の管轄となるため、連邦法ではそれほど多くのことはできない。しかし、より多くの州が法制化する扉を開く素晴らしい第一歩となる。

「ゲイパニック」は言うまでもなくヘイトクライムだ。LGBTQに対する暴力を正当化しようとする偏見に満ちた言い訳を一掃させよう。

ジュディー・シェパードは、マシュー・シェパード財団の共同設立者。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。