『ホワイトハウス・ダウン』 - 宿輪純一のシネマ経済学(6)

『ホワイトハウス・ダウン』(White House Down)2013年(米) この映画の題名と監督がローランド・エメリッヒということで、ホワイトハウスが崩壊するディザスター・ムービーということは容易に想像がつく。本作品は、一言で言えば、ホワイトハウスのダイ・ハードのイメージ。エメリッヒ監督はドイツ生まれで、主たる作品は『インデペンデンス・デイ』(1996年)、『GODZILLA』(1998年)、『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)、『2012』(2009年)等にみられるように"破壊王"である。

『ホワイトハウス・ダウン』(White House Down)2013年(米)

この映画の題名と監督がローランド・エメリッヒということで、ホワイトハウスが崩壊するディザスター・ムービーということは容易に想像がつく。本作品は、一言で言えば、ホワイトハウスのダイ・ハードのイメージ。

エメリッヒ監督はドイツ生まれで、主たる作品は『インデペンデンス・デイ』(1996年)、『GODZILLA』(1998年)、『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)、『2012』(2009年)等にみられるように"破壊王"である。

出演者は、主人公の警官に"これから"の肉体派チャニング・テイタム、そして『Ray/レイ』でアカデミー主演男優賞受賞のジェイミー・フォックスは大統領役。彼は『コラテラル』でもアカデミー助演男優賞ノミネート。黒人でありオバマを意識している感あり。

本作品は8月16日に公開されるが、同じくホワイトハウスが占拠されるという似た題材のアメリカ映画『エンド・オブ・ホワイトハウス』も6月8日から上映中である。ここまでのライバルプロジェクトは珍しい。

さて、ストーリーであるが、"謎"の武装集団がホワイトハウスを占拠する。"偶然"邸内に居合わせた"冴えない"議会警察官が大活躍して、人質となった大統領と自身の娘の救出とホワイトハウスの奪還をしてしまうという典型的なアメリカ映画。ともいえるが、ドンデン返しもあり盛り上がる。圧倒的劣勢の中、主人公たちに危機が迫りまくるが、それよりもエメリッヒ監督の真骨頂の爆発・炎上・崩落するホワイトハウスが大注目である。

議会警察官のジョン・ケイル(チャニング・テイタム)は、黒人大統領ジェームズ・ソイヤー(フォックス)を警護するシークレットサービスを目指して受験するも、不採用となってしまう。不採用だったことで幼い娘を悲しませたくないために、気晴らしも兼ねてホワイトハウスの見学ツアーに参加する。だが、そこへ"偶然"謎の武装グループが乗り込み、瞬く間にホワイトハウスを制圧した上に大統領とケイルの娘らを人質にして占拠する。そののちミサイルでエアフォースワンも破壊され、大統領の生存も危ぶまれて大変な事態になっていく。やはり世界を制覇するにはまずホワイトハウスなのか。

アメリカ映画であるので、主人公には弾は当たらないし、大統領も大丈夫で、ハッピーエンドになるのはお約束。さすがに、本作では大統領は戦闘機を操縦しない。

テロ(Terrorism)は経済や社会に甚大な悪影響を与える。アメリカ経済も社会も9.11の影響を引きずっており、膨大なコストや金融規制による負担が大きい。個人的な話で恐縮であるが、かつて筆者もF銀行勤務時に、特殊銀行設立の特命プロジェクトを担当し、その時ニューヨークのワールドトレードセンターにデスクがあった。筆者は9.11の時には既に東京に戻っていたが、犠牲になった方々は一緒に働いていて存じ上げている。今でも心が痛む。

安全・治安は、経済の大前提である。日本人関係では、海外でテロも発生しているが、筆者が不安に思うのは、日本の治安や雰囲気の悪化である。

かつて、治安と経済の関係では、景気が悪化すると治安も悪化するとされていた。しかし、ベストセラーとなった『ヤバい経済学』では犯罪者激減の理由を中絶の認可があるとして、例えば10代の若すぎる親を持ち、環境の良くない子供は、犯罪に走る可能性が高かったということのようである。米国で1973年に出た最高裁判決で中絶が合法化され、一気に中絶が増えたのである。筆者はかなり極端な意見だと思った。だから『ヤバい経済学』なのだが。

しかし、筆者は最近の日本の犯罪の発生や電車内や駅の雰囲気などは、以前勤務していたニューヨークのそのころより怖いと思うことがある。それは景気の低迷と現状と合わなくなった社会制度にあるのではないかと考える。

農業や医療をはじめとした経済的な規制の他、積立型ではない年金や勤務年数に応じた退職金制度等の社会制度が、現状と合わなくなってきている。それらの制度は、人口増加が前提で、雇用の囲込みの時代の制度であり、現代の情勢と合っていない、そのギャップが問題なのである。通貨危機もそうであるが、"ギャップ"こそ経済"危機"のベースとなる。そのギャップが勤労者や社会にストレスを与えているのではないか。現状維持政策ではギャップは大きくなるだけである。まもなく、財政赤字も1000兆円を超えた。そろそろ、固定的ないろいろなものが変わってくるようにも思える。

筆者の書籍紹介

実学入門 社長になる人のための経済学―経営環境、リスク、戦略の先を読む』(日本経済新聞社)

(出版社による説明)

強い経営は不景気でも強い。大局を観て、現実を直視し、布石を打つ、ビジネスモデルを変え、競争と新技術によって自己革新する「新しい経済学」を身につけよう!

日本企業再建をめざすビジネスリーダー必見! 枝葉にこだわる記述をやめ、ニュースやエピソードを駆使してダイナミックに説明する画期的テキスト。自分の会社の舵取りに新しい経済学がこんなに使える! 不毛な議論に惑わされず自分で経済環境を確かめ、投資、リスク、戦略の半歩先を読む最新知識・ノウハウを解説。語り口調で基本からやわらかく説明し、図表・新聞の切り抜き、コラムなどを用いてビジュアルに展開。

「円安で業積回復」「インフレになれば売上げが戻る」...先入観に囚われた「常識」を排し、本当の問題を把握するための論理的考え方をやさしく解説。経済学から見たビジネスモデルの作り方、財務戦略に生きる金融経済の基本、グローバル経済と論争戦略...ビジネスにいますぐ役立つ経済学の考え方を手ほどき。経済学が苦手な方もご安心。

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