『ゴールド/金塊の行方』―人間は「金」に翻弄される/宿輪純一のシネマ経済学®(122)

最近「金」を巡るトラブルが多いが...

(GOLD/2016年)

Bre-X(ブリ・エックス)事件とは、1995~6年に発生し、アメリカ・カナダの証券市場おいて発生した最大級の鉱山詐欺事件。本作はその実話をベースとしているだけに迫力がある。

『ダラス・バイヤーズクラブ』などのオスカー俳優マシュー・マコノヒーが主演を務めたクライム・サスペンス。しかも、役づくりで腹が出て、髪は薄くなったマシューの演技は、まさに怪演。実際に太ったのは当然のことで、なんと自ら髪を抜いたという噂もある。監督を『シリアナ』などのスティーヴン・ギャガンが務める。

代々の鉱山事業に失敗したケニー・ウェルズ(マシュー・マコノヒー)は残った全財産をつぎ込んで、金鉱を発見するためにインドネシアのボルネオ島へ単身向かう。ケニーは有名な地質学者のマイク・アコスタ(エドガー・ラミレス)と手を組んで金鉱山を探す。

インドネシアの過酷な自然に苦しめられながらも、なんと(!)金鉱が見つかる。会社はニューヨーク証券取引所にも上場し、株価は急上昇するが。詐欺疑惑が浮上。インドネシアでもアメリカでも罠がまっており、ケニーは絶体絶命になっていく。そして、アメリカ映画らしいラストシーンには思わず"にんまり"するのではないか。

映画では「金(きん)」をテーマにしたものも多い。少し前でいうと『007/ゴールドフィンガー』(1964年)や、そのリメイクともいえる『ダイ・ハード3』(1995年)など、強盗ものまでいうときりがない。

まず「金」は金属性能として素晴らしい。錆びないし、金箔で有名であるが伸びる。電気の伝導性もよく、ロケット等の導線は金である。

金融(貨幣論)の観点から言っても「金」は重要な役割を果たしている。近代にはどこ国でも、金・銀・銅の貨幣体制が出来上がっていた。日本だと金貨は小判に当たる。金を裏打ちとして国際通貨制度も出来ていた。

そして「金」は現在でも通貨としての性質をもっている。「金」はそのものに価値があるので、リスクが高まると「金」が買われるのである。しかし、金融商品としての「金」は利息も配当も付かない。さらに「金」は大量に現物を保有することはかなり危険である。そのため「金」を預けることになり、手数料がかかる。ある意味、マイナス金利の金融商品なのである。つまり、積極的に買われるためには「金」の現物価格が上昇し続けることが大事となるのである。

最近「金」を巡るトラブルが多いが、まず「金」は現金決済という慣行があるからである。さらに消費税もかかる。そのため、密輸が多く脱税が横行している。

しかし、人間にとって「金」が魅力的なのは、手に持った時の"ずしっ"とした重さ(「金」は鉱物の中で一番重い)と、あの妖艶な黄金色ではないか。それが古今東西において価値の源泉ではないかと考えている。

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筆者が2003年から様々な媒体で書き、テレビでも解説してきた「シネマ経済学」ですが、平成28日12月18日付で特許庁(小宮義則長官)により、商標登録して頂き、商標登録証も届きました。以前、共著者が共著を英訳し単著として勝手に出版した事件(現在も係争中)が発生し、皆様からのアドバイスも多数頂戴し、以降、著作権や商標権に真剣に対応するようになりました。今後「シネマ経済学」に興味がある方は、筆者までまずご連絡ください。今後「シネマ経済学」(単語)にも®(Registered Trademark)を付けます。

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