『ゴーストバスターズ』―明るく、楽しい"リケジョ"の時代(106)

今回もニューヨークが舞台だが、主人公が女性、しかもリケジョ(理系女子)ばかりなのである。

(GHOSTBUSTERS /2016年)

幽霊コメディのゴーストバスターズ・シリーズの3作目。1作目の『ゴーストバスターズ』(1984年)は、ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス、アーニー・ハドソンの4人のゴーストバスターズ(幽霊退治家)が多数の幽霊たちをやっつけるコメディだった。

主題歌もノリノリで大変楽しく大ヒットした。シガニー・ウィーバーもヒロイン役で出演した。その後、続編の『ゴーストバスターズ2』(89年)も作られた。当然、続編が望まれ、最近も『3』の計画はあった。

しかし、ハロルド・ライミスが死去し、前2作で監督を務めたアイヴァン・ライトマンも降板した。そのため、今回は第1作をリブート(再作成)することとなり、作品名も全く同じの『ゴーストバスターズ(GHOSTBUSTERS)』とした。

今回もニューヨークが舞台だが、主人公が女性、しかもリケジョ(理系女子)ばかりなのである。物理学者エリン(クリステン・ウィグ)は、旧友アビー(メリッサ・マッカーシー)が、共著の幽霊本を承諾もなく電子書籍化しているのを発見する。

筆者も以前同じことをされたが、当然、憤慨して彼女の勤める大学に向かう。しかし、逆に、幽霊調査を一緒に行うことになってしまう。その後、大学を解雇され、超常現象の調査会社を立ち上げて、幽霊退治を始める……。

前作と基本的な流れは一緒だが、違いは、とにかくパワフルなリケジョが、明るくガンガン行くことで、「リケジョ型コメディ」といえるものである。しかも、『マイティ・ソー』などのクリス・ヘムズワースも男子として参加しているが、これがイケメンながらおバカな役柄で、できるリケジョを引き立たせる。

84年の第1作やその後の第2作を見て熱狂した方々は、当然、意識するが、音楽やゴーストたちはもちろん、生き残ったゴーストバスターズ3人とシガニー・ウエーバーのカメオ出演もあり、とても楽しめる。

ちなみに「カメオ出演」とは、前作に出演したなど、その作品に関係が深い著名な役者が短い時間出演することである。「カメオ」とは装飾品のカメオのことで、一瞬でも輝くことの例えのこと。また、本作は現代アメリカ的なノリなので、前作を見ていない若い方にも当然受ける。

世の中でリケジョ(理系女子)の活躍が続いている。単純に労働力という意味ではない。男女のいい意味での"違い"がある。例えば、最先端の科学の研究においては、発想を変えた視点が新しい発見には必要である。商品開発やマーケティングにおいても女性の視点で新しい対応ができる。などなど女子ならではの良い点がたくさんある。

しかも、最近、女性の活躍で感じるのはその"積極性"である。日本の大学生では、以前は銀行の採用面接において、また現在でも大学の講義においても感じるのは、明らかに女性の方が積極的ということである。

また、筆者が最近、アジアからの留学生に(英語で)講義しているが、国名でいうとタイ、ベトナム、ミャンマー、インドネシア、カンボジアなどの学生が15人ぐらいいる。しかし、その中で男子はなんと1人なのである。これは日本だけの課題ではないかもしれない。

政治・経済関係でもトップのポジションにおいて女性の活躍が多い。米国のイエレンFRB長官やクリントン大統領候補、IMFのラガルド専務理事、イギリスのメイ新首相、台湾の蔡総統など上げだすとキリがない。そして、なんといっても、欧州のみならず世界経済のキーパーソンであるドイツのメルケル首相はリケジョなのである。物理学を専攻し、博士号も正式に保有している。

そのようなことはさておき、夏休みでもあり、まずはとにかく楽しく見てほしいコメディである。

【著者の新刊案内】

『決済インフラ入門』(東洋経済新報社/税込み1944円)

変わりゆく"決済"を知るための実務者必読の書。どの本よりも易しく"決済の全体像"が理解できる一冊。アマソン銀行・金融業、そして金融・ファイナンス1位獲得。フィンテック・ビットコインを始め、中国の決済インフラも詳細に説明。

【宿輪ゼミのご案内】

博士(経済学)・帝京大学経済学部経済学科教授・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生達がもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かりやすいと、経済学博士の講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この今年4月でなんと10周年、開催は200回を、会員は1.2万人を超えて、日本一の私塾とも。言われています。次回第212回の宿輪ゼミは8月24日(水)開催。Facebook経由の活動が中心となっており、以下からご参加下さい。

注目記事