(MISSION: IMPOSSIBLE ROGUE NATION /2015)
この「ミッション・インポッシブル」シリーズは、筆者とほぼ同期である「トム・クルーズ」の映画といっても過言でもない。本シリーズの1作目から製作も行っており、彼の意向が色濃く反映されている。1996年、2000年、2006年、2011年とほぼ5年ごとに作られ今回で5作目である。「ミッション・インポッシブル」は、そもそもは1960年代に大ヒットしていたアメリカのテレビドラマ(邦題『スパイ大作戦』)であった。筆者も小さい頃、毎週見るのを楽しみにしていた。この「ミッション・インポッシブル」シリーズは約21億ドル(日本円では、前の新国立競技場の計画とほぼ同じ約2500億円)も稼いでいるまさに「ドル箱」シリーズである。
トム・クルーズは1981年の『エンドレスラブ』でデビューし、本作も入れて、39本の作品に出演しており、ハリウッドのスーパースターである。代表的な作品を見ても『アウトサイダー』、『卒業白書』、『トップガン』、『ハスラー2』、『カクテル』、『レインマン』、『7月4日に生まれて』、『ザ・エージェント』、『マイノリティ・リポート』、『ラストサムライ』、『コラテラル』、『宇宙戦争』、『ワルキューレ』、『アウトロー』、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』・・・とキリがない。
彼は50歳を過ぎているにも関わらず、自分の能力を分析し「スタントなしの激しいアクション」に掛けることにしたのである。本作品はさらに前作よりもエスカレートしている。最初から、400キロで飛ぶエアバスの軍用輸送機A400のドアに、本当につり下がる。もちろんスタントなしで彼がやっている。まさに目を奪われ、あまり書けないが、これらのアクションに猛に引かれる。
今回は見えない敵「シンジケート」との戦いである。副題にある「Rouge Nation」とは「ならず者の国」すなわちこの「シンジケート」のことである。主人公イーサン・ハント(トム・クルーズ)が所属している組織はIMF(Impossible Mission Force)であるが、今回は、同じアメリカのCIA(Central Intelligence Agency:中央情報局)からの圧力で一時的にCIAに併合され。しかも、007の所属するイギリスの情報組織MI6(エムアイシックス)とも対立する。舞台もパリ、ウィーン、カサブランカそして、アメリカと国交を再樹立したキューバのバハマなどと相変わらず世界中を飛び回る。アメリカ映画なので、一般的に主人公は大丈夫なのであるが、お約束の飛び降りやつり下がりと、毎度の激しいアクションはさらにグレードアップしている。さらに本作では、長時間の「水中」のシーンが見せ場となる。そして、孤立する中、シンジケートを追い詰めていく。
筆者は51歳で銀行を定年退職し新しい仕事に付いた。筆者もそうであるがこの年ごろの日本の中高年は、人生の先も見えてきて、疎外感も感じ、元気がなくなってきている方も多いのではないか。トムのこのような頑張りは、筆者も含めそういった中高年の方々に「大きな励み」となるのではないか。知識や経験も豊富な中高年の活性化が、日本経済の成長に結びついていくと信じる。あまり知られていないが、米国の成功した経済政策レーガノミクスの最も重要な柱の一つが再教育を通じた社会人の活性化であった。
さらに、トム・クルーズの組織IMF(Impossible Mission Force)が、筆者には、実際のIMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)とイメージがダブって仕方がない。実際、セリフでも「荒っぽいことをやったが最終的には良かった」がぴったり当てはまる。さらに、最近の中国の進めているAIIB(アジア・インフラ投資銀行)を巡る国際金融情勢と同様に、英国と米国の対立も描かれている。映画のセリフでも英国サイドが「同盟よりも、共通の利益が大事」というなど、いちいちダブってくる。
作品の中のIMFは設立されて40年といっているが、IMF(国際通貨基金)は第二次世界停戦後1946年に設立されたので約70年である。各国からの出資で出来ている機関で、通貨(為替レート)の下落や経常収支の悪化に対してサポートする。
今年10月8~9日、ペルーのリマで世界銀行総会と合わせて、IMF総会も開催される。今年の最大の焦点は中国の人民元が、IMFの通貨SDRの構成通貨(現状:ドル・ユーロ・ポンド・円)に認められる可能性が高いからである。このSDRの構成通貨に認められるということは主要な国際通貨、準基軸通貨として認められるからである。すでにAIIB(アジア・インフラ投資銀行)の加盟によって、欧州や中東の票を固めている。中国とその親密国に対して、米国と日本だけでは拒否権に達しない可能性が高い。IMF、IMFと連呼されるたびに、そのようなことが頭に浮かんで仕方がない。
ちなみに、映画の世界でも中国は躍進している。なんと中国のアリババ・ピクチャーズも本作に協賛しており、テロップに流れていた。中国の美人女優、チャン・チンチューも出演していた。
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