『I America』―海外に支えられるフィリピン経済(111)

東京国際映画祭での上映作品で、フィリピンの作品である。いわゆる戦争における現地妻の問題である。

(I America /2016年)

東京国際映画祭での上映作品で、フィリピンの作品である。いわゆる戦争における現地妻の問題である。米軍の兵士だったアメリカ人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれたエリカが主人公である。アメリカ人の父は、よくある話であるが帰国したまま音信不通になってしまう。実際、兄弟も、白人とのハーフだけではなく、黒人とのハーフなどなどなど、皆、父親が違っていた。エリカはパスポートとビザを取得して、父を探しに渡米する計画を立てていた。

そんな彼女の前に年配のアメリカ人のジョンがあらわれる。歳から行っても父かもしれないと考えた。その母もアル中で死亡する。ジョンと向き合い、確認していくなかで、真実がわかっていき、辛い状況は続いていく。

フィリピンはかつて広大な米軍基地を抱えて、生まれた米比混血の子どもたちは父親が帰国したまま分からないケースも多く、いまなお大きな社会問題となっているのである。同じような子供たちも多数登場する。戦争・軍隊駐留では、どうしてもそのような問題が発生する。

主人公はエリカであるが、作品の最後に、タイトルの「I America(私、アメリカ)」は、分解すると「I Am Erica(私はエリカ)」とも読め、それが監督の考えたことだとわかる。

フィリピンは元々アメリカの植民地だったこともあり、英語もフィリピン語とともに公用語となっている。英会話教育も主要な産業となっている。日本人もフィリピンに英語留学するほどである。もさらに、フィリピン経済の特徴は、海外への出稼ぎが多く約1000万人も海外で暮らす。その送金額はGDP(国内総生産)の約1割も占め、国の経済を支えている。もともとは産業が乏しく、人口を支えられなかったのである。

最近、6月の政権交代以降、政権の支持率も高く、今年は成長率も約7%となり、荒れている世界経済の中では、順調な国である。

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