角野栄子の児童文学が原作で、宮崎駿によってアニメ化された「スタジオジブリ」による同名アニメ(89年)の実写版リメイクである。今回のリメイクは「アニメから実写」である。このパターンは他にも『ルパン三世』のように最近よくあるが、それだけネタに困ってきているのかもしれない。アニメ版では、ユーミン(個人的にはファン:その頃は荒井由実)の『ルージュの伝言』と『やさしさに包まれたなら』が採用されて、リバイバルヒットしたのもなにか懐かしい。今回はジブリとの関係は見受けられない。
ストーリーは基本的に変わらない。一人前の魔女になるための"修行"として、知らない町で1年間生活する13歳の少女キキが、さまざまな出来事を通して成長するということである。ちなみに『魔女の宅急便』の英題は『Kiki's Delivery Service』である。
魔女の家に生まれた少女キキ(小芝風花)は、しきたり通り13歳になったので魔女になるための修行をすることになった。条件は見知らぬ町で、1年間だけ生活するというものだ。黒猫ジジと空飛ぶ箒(ホウキ)に乗って旅に出た彼女は、海辺の町コリコ(ロケは小豆島)に到着する。パン屋女主人おソノ(尾野真千子)の家に居候し、お届けする「宅急便」屋を開業することになった。その後、つらい出来事もあるが母コキリ(宮沢りえ)にいわれたようにいつも笑顔を忘れずに「宅急便」に精を出す。そんな時、逆に、空を飛びたいと願う少年とんぼ(広田亮平)と出会って恋愛が始まる・・・・。しかし、児童文学がベースとなっているだけに安心して見ていられる。
『魔女の宅急便』の「宅急便」であるが、一般的にはこのようなサービスは、現在は「宅配便」という。作者が一般名称と認識していたために「ヤマト運輸」の「宅急便」の名称を使用したいようである。思い出してみれば「宅急便」が76年にできるまでは、小包の郵送は郵便局か、国鉄(現在のJR)しかなかった。しかも到着時期とかよくわからないもので大変に不便であった。それだけに、個別の自宅まで早く届けてくれるサービスは画期的なものであった。この「宅急便」こそ、まさに経営の改革と規制との戦いの集大成なのである。
ヤマト運輸の小倉昌男元社長は経営の分野ではかなり著名である。トラック運送の改革を行い、この「宅急便」の規制緩和に関しては、当局に立ち向かい活発な議論を行っていた。少し前であるが、実際の経営改革を取り上げていたテレビ番組『プロジェクトX』にも取り上げられていたほどである。このように強い気持ちが規制を緩和させ、構造改革をすすめるのである。このようなことが経済成長にとって重要なことである。
しかし、実際は、この規制緩和というものを始めとした構造改革は、なかなかに難しいということは分かる。一言でいうと損をする人が出てくるからである。経済成長を続けているときに、バラマキ的な政策をやるのはそれほど難しくないであろう。しかし、現在のように、経済成長も低く、困難な地合いにあって、将来のために現在の困難(辛さ)を分配することこそが、本当は政治であり、政策ではなのではないであろうか。ドイツは先進国でありながら、経済成長率も高く、また財政赤字の比率も非常に低い。聞いてみると、ドイツの成長戦略政策は、基本的には、いわゆる財政政策ではなく、規制緩和を政策として行うとのことであった。日本でもアベノミクスの「第三の矢」であった規制緩和・構造改革による「成長戦略」への期待が低下してきていることが少々残念である。
筆者は個人的にこの小倉元社長のファンであるが、それは規制改革に立ち向かっていったこともそうであるが、第一線を退いてから障害者が自立して働く場所作りに取り組んでいたからである。個人的にはこのようなことを大変に素晴らしいと思う(筆者は非常に弱い)。
「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたにも分かり易い講義は定評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。22日で記念すべき150回を迎え、2014年4月で9年目になります。
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