『真白の恋』―伸びる北陸/宿輪純一のシネマ経済学®(117)

「真白の恋」は今年の福井映画祭長編部門でグランプリを受賞するなど、今後の北陸を代表する映画になる可能性が高い。

(2016年日本 )

富山県富山市の隣で、富山湾に面する射水市(いみずし)が舞台。最近、『君の名は。』の岐阜もそうであるが、ご当地映画が多い。今年の福井映画祭長編部門でグランプリを受賞するなど、今後の北陸を代表する映画になる可能性が高い。

本作品は自分で貯めた自己資金とフィンテック的なクラウドファンディングで予算を調達した、いわゆる「インディーズ低予算映画」である。しかも、地方の射水市であり、大きな事件も起こるわけでもない、淡々とした作品である。

しかも、軽度の知的障害を抱えるヒロイン(名前が「真白」)の初恋と、彼女を支える家族の葛藤というデリケートなテーマをサラサラと描き切っている。

軽度の知的障害の渋谷真白(佐藤みゆき)は、生まれてからずっと家族と一緒に射水市で生活し、父(長谷川初範)が経営する自転車屋の店番をするなどして暮らしていた。ある日、彼女は、東京からやって来たフリーカメラマンの油井景一(福地祐介)と出会い、初めて"恋"をする。友人は応援するが、家族は当然心配し、でも真白は彼氏を好きになっていく。そして、一応の結末へと向かっていく・・・・。

筆者もそうであったが、小さいころからそういった方々が身の回りにいた。そういう方々を知り、優しい気持ちで自然にサポートすることが大事であると考えている。

主演は、NHK連続テレビ小説「花子とアン」などの佐藤みゆきで、軽度知的障害という難しい役を不自然なく演じきっている。初恋の彼氏を『アルビノの木』などの福地祐介、父親をベテラン長谷川初範と脇を固めている。

"北陸"は富山県・石川県・福井県の3県からなっている。(新潟県を入れることもある)実は、この北陸の経済は平均と比べても成長率が高い。石川県と富山県は観光が強い。2015年の北陸新幹線の開通が観光客を倍増させた。東京と金沢を最短2時間半ほどでつないだ。

よく北陸新幹線は2016年に新函館北斗まで開通した北海道新幹線と比較することが多い。北海道新幹線は乗客が北陸新幹線と比べて少ない。東京と函館を約4時間以上と長いこともあるが、観光地がやや弱いこともある。北陸の場合は観光地をつなぐことに成功した。

今後、北陸新幹線は福井県(敦賀)までつなぐ計画もあるが、2022年度となっている。ちなみに、福井県には鯖江というメガネの製造集積地がある。これは雪国で外出ができないなかでの仕事として、家内制手工業的な製造からスタートしたものである。

それが、日本のメガネ生産の96%を占めている。さらに、世界の鯖江となって、職人的な味もある「鯖江製のメガネ」ということが高付加価値なブランドにもなっている。

【「シネマ経済学」商標登録のお知らせ】

筆者が2003年から様々な媒体で書き、テレビでも解説してきた「シネマ経済学」ですが、平成28日12月18日付で特許庁より、商標登録していただき、商標登録証も届きました。以前、共著者が共著を英訳し単著として勝手に出版した事件(現在も係争中)以降、著作権や商標権に真剣に対応するようになりました。

今後「シネマ経済学」に興味がある方は、筆者までまずご連絡ください。今後「シネマ経済学」(単語)にも®(Registered Trademark)を付けます。

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