『ジゴロ・イン・ニューヨーク』―映画も金融もニューヨーク!/宿輪純一のシネマ経済学(50)

ニューヨークは"映画の舞台"になることが多いと思う。(以前、実際、数えたこともあったが、いろいろ面倒で途中でやめてしまった)そのため、原題は「衰えたジゴロ(筆者訳)」であるが、邦題には「ニューヨーク」と入れたのだろう。
時事通信社

(2013年アメリカ/Fading Gigolo)

ニューヨークは"映画の舞台"になることが多いと思う。(以前、実際に数えたこともあったが、いろいろ面倒で途中でやめてしまった)そのため、原題は「衰えたジゴロ(筆者訳)」であるが、邦題には「ニューヨーク」と入れたのだろう。

筆者は、ニューヨークにも長く居たが、そのニューヨークに一番合うのが、やはりウディ・アレン(78歳)ではないか。彼は好きな監督・役者の一人であり、この連載でも何回か書いてきた。本作品は監督ではないが、久しぶりのニューヨークの風景にやはり彼はなじむ。14年ぶりの監督作以外の出演なのである。しかし、脚本にも入っているせいか、監督・主演のジョン・タトゥーロ(57歳)が、かすむ、ウディ・アレン色の強い、得意のロマンティックコメディとなっている。

助演も、『氷の微笑』のシャロン・ストーン(56歳)、フランス人の女優・歌手のヴァネッサ・パラディなど美人揃いである。

ニューヨーク・ブルックリンの本屋店主(ウディ・アレン)はいよいよ店を占めることになる。そこで花屋の友人(ジョン・タトゥーロ)を、なんと"中年ジゴロ"にして男金を稼ぐことを思い付いた。なんとか友人を説得し開業。最初のお相手は本屋店主のかかりつけの皮膚科医(シャロンストーン)。その後も、彼は裕福な女性たちで商売繁盛!しかし、中年ジゴロがある未亡人(ヴァネッサ・パラディ)に純粋な恋をしてしまう。彼女は厳格なユダヤ教職者の未亡人。なんと、本屋店主はユダヤ教の審議会にかけられることに、さて、彼の運命やいかに。まさに、笑いと哀愁のウディ・アレン節になっている。

そのニューヨークであるが、まさに世界の経済・金融の中心となっている。ニューヨーク証券取引所、NASDAQ(ナスダック)の証券取引所の他、NYMEX(ニューヨーク商品取引所)といった金融取引所がある。また、シティバンク、JPモルガンチェース、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンといったプライムアメリカン(アメリカのメガバンク)の本店もある。金融エリアとして「ウォール街」が有名で、映画にもよく出てくる。筆者もあまりいえないが、若い頃、特殊任務を担当し80 Wall Stのプライムアメリカンの一つに毎日通っていた。現在は、プライムアメリカンなどの大きい金融機関は残っていない。現在はミッドタウンの方に本店を移しているところが多い。

その金融インフラの層の厚さがアメリカ経済の懐の深さというか、強さとなっているのではないか。たとえば、日本は貿易赤字国になって、経常赤字国に向かっているが、アメリカは筆者の知る限り、経常赤字国であった期間が長い。昔の国際経済や国際金融の教科書には経常赤字になると、国債や通貨が暴落すると書いてあったが、アメリカやイギリスの事例を見ていると、そうではないような気がする。そもそもの金融の厚みというか、エンジンを持っているので、資金の埋め合わせが容易にできるのであろう。その辺のことをキチンと考えることが、今後の日本経済のためにも必要であろう。端的には経済の自力の強化と国債と通貨の円を国際化することである。また、そのため海外とアクセスがしやすい金融インフラも必要となってくる。

ちなみに、一般的には、ウディ・アレンもそうであるが、映画も、金融も、ユダヤの方々の産業ともいわれている。ニューヨークにあるユダヤ人街には、ダイヤモンド専門店が並ぶ。ダイヤは金よりも高価で、逃亡するときにも運びやすかったからいう。歴史がにじむ。今回のアメリカの中央銀行FRBの副議長スタンレー・フィッシャーもアフリカ・ローデシア生まれのユダヤの方である。大学時代に彼の教科書で、マクロ経済学を学んだ。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。

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