『トランスフォーマー/ロストエイジ』―高度成長期の意味/宿輪純一のシネマ経済学(53)

前作よりデザインを新しくなったオートボット(ロボット)と人類がともに挑む新たな(いつもそうだが)激しい戦いの物語。前作のディセプティコンとの激戦から4年後の設定。
TOKYO, JAPAN - JULY 29: Jack Reynor (L) and Nicola Peltz attend the press conference for Japan premiere of 'Transformers : Age Of Extinction' at Tokyo Midtown on July 29, 2014 in Tokyo, Japan. (Photo by Keith Tsuji/Getty Images for Paramount)
TOKYO, JAPAN - JULY 29: Jack Reynor (L) and Nicola Peltz attend the press conference for Japan premiere of 'Transformers : Age Of Extinction' at Tokyo Midtown on July 29, 2014 in Tokyo, Japan. (Photo by Keith Tsuji/Getty Images for Paramount)
Keith Tsuji via Getty Images

(2014年アメリカ/Transformers: Age of Extinction)(Extinctionとは絶滅の意味)

米国の実写版『トランスフォーマー』の4作目。それまでの3作は『トランスフォーマー』(2007年)、『トランスフォーマー/リベンジ』(2009年)、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(2011年)。そもそもは80年代に出てきた日本のタカラ(現タカラトミー)の変形ロボット玩具で、米国で玩具の他、コミックス・アニメーションが作られ、実写版映画も作られたもの。製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ。監督は『アルマゲドン』や『バッド・ボーイズ』などのテンポがいいマイケル・ベイ。主演はいままでのシャイア・ラブーフフは出演せず、マーク・ウォールバーグに。声で渡辺謙も出演。

前作よりデザインを新しくなったオートボット(ロボット)と人類がともに挑む新たな(いつもそうだが)激しい戦いの物語。前作のディセプティコンとの激戦から4年後の設定。発明家のケイド(ウォールバーグ)は安値で中古トラックを購入すると、何とそれはオプティマスだったのである。そこへオプティマスらトランスフォーマーの取締秘密機関KSI(Kinetic Solutions Incorporated)が登場する。ケイドはKSIに抵抗し窮地に陥るが、オプティマスに救出されることに。一方、新しいディセプティコンとロックダウンが地球に出現し大変なことに。

新デザインのオートボットはもちろん、"恐竜"を基に作られたダイナボットなどの新キャラクターも登場。破壊を前提とした迫力あるバトルはお約束。「ガンダム」もそうであるが、壊れるときに一種の美しさもあるのではないか。

最近、筆者の家の家電が立て続けに壊れた。冷蔵庫、炊飯器、掃除機、DVDプレーヤー、スマートフォン(スマートフォン以外は日本製)などで、長く使っているものとはいいながらも、痛手は大きい。機械も壊れるものなのである。

壊れると次のものを買う。これはすなわち、家電メーカーの売上げとなり、日本のGDP(Gross Domestic Product:国内総生産)に計上され経済成長の一環となる。経済成長はGDPが伸びることである以上、先進国のようにモノが行き渡ると、その成長率は落ちることになる。モノの面からみると、先進国でモノを買うのは、今回のような壊れたときか、買い替えの時ということになる。

それに比べて新興国(発展途上国)の場合は。モノがないところを一から買い揃えていくことになる。さらに、人口も増加している。このたとえば10%程度の成長率を計上する状態を「高度成長期」という。日本でいうと昭和40年代のころのイメージである。

つまり、社会・経済・商品構造が大きく変わらないという前提のもとでは、高度成長期は1回しかないのではないか。その点では、日本では少子高齢化に入り、再び高度成長期になることはおそらくはない。つまり、その身の回りの家電商品は"最初の買い揃え"に入ることが大事であり、それを逃すと壊れるか、買い替えの時期を待たなければならない。そのため、メーカーさんは早期に新興国に進出し、その高度成長期を抑えなければならないのである。

消費者とすると機械は壊れない方がいいのであるが、機械である以上壊れることになり、景気にも貢献できる。もっとも、機械以外の経済・金融も含めた様々なものについてみてみると、我々の周りに常なるモノは無く、実際にはいつかは壊れるものが多い。その点は、いつも、十分に認識しなければならない。

「宿輪ゼミ」

経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。

Facebookが活動の中心となっており、以下からご参加下さい。会員は6200人を超えております。https://www.facebook.com/groups/shukuwaseminar/

注目記事