BLOG
2018年08月10日 15時56分 JST | 更新 2018年08月10日 15時56分 JST

高齢化社会だからできた 『ツイン・ピークス The Return』

もともと『ツイン・ピークス』のファンであれば、十分にその訳の分からなさも耐えられるであろう。

Phil McCarten / Reuters

TWIN PEAKS: THE RETURN (2017)

相変わらず熱狂的なファンを持つ、デヴィッド・リンチ監督のカルトTVシリーズの最新作。『ツイン・ピークス 3』『ツイン・ピークス』とも呼ばれる。第1シーズンは19904月~5月(8回)、第2シーズンは同9月~翌年1月(22回)、そして、この第3シーズンは20175月~9(18)に米国で放送された。

日本でも大ブームとなった。ワシントン州(西海岸)のカナダに近い田舎町ツイン・ピークスは実在しないが、その撮影されたスノカルミー(地名)へのツアーも人気を博した。実際によく登場する瀧は実在する。さらには、主人公のFBIディル・クーパー捜査官が好んで食べた「チェリーパイ」も人気が出た。「ツイン・ピークス風チェリーパイ」も出たほどだ。

デヴィッド・リンチは、低予算映画『イレイザーヘッド』(1976年)がヒットして監督として認められた。「カルトの帝王」と呼ばれる"良く分からない独特の映像"が特徴である。『エレファントマン』(1980年)で最優秀作品賞、主演男優賞などアカデミー賞8部門にノミネートされて一流監督として認められた。"良く分からない独特の映像"が映画やドラマの13ぐらいを占める。筆者も良く分からないときがある。特に"良く分からない独特の映像"は『ツイン・ピークス』シリーズが大ヒットして評価され、映画でも『マルホランド・ドライブ』(2001年)や『インランド・エンパイア』(2006年)で継続した。

 この『ツイン・ピークスThe Return』が"すごい"のは、"良く分からない独特の映像"もあるが、以前のTVシリーズの最後に「25年後にまた会いましょう」といって、本当にそうしたところである。なかなかそのような作品はない。

 出演する俳優もほぼ一緒であるところも"すごい"。主人公のディル・クーパー捜査官を演じるのはカイル・マクラックランで、デヴィッド・リンチ監督とは『ディーン/砂の惑星』(1984)や『ブルー・ベルベット』(1986年)など、起用されている作品も多い。しかし、日本で人気があったドナ役のララ・フリン・ボイルは本シリーズには登場しない。

あらすじは、相変わらず、赤い部屋などの"良く分からない独特の映像"が良く登場し、筋が良く飛び、評価は分かれるであろう。筆者は評価したい。怪奇な殺人事件が発生し、それを解決させていくというのが、基本的な筋である。今回は舞台がツイン・ピークスに限らず、特徴のある数か所に分散し、それぞれで殺人など怪奇な事件が発生する。ニューメキシコ、ニューヨーク、そして、結構な時間を費やすのがサウスダコタのバックホーンである。今回はもう一人のクーパー捜査官が登場など、余計に訳が分からなくなってきている。しかし、もともと『ツイン・ピークス』のファンであれば、十分にその訳の分からなさも耐えられるであろう。というか、そもそも地上派でも放送されていない。DVDを手に入れるにしても、レンタルするにしても『ツイン・ピークス』のファン以外は見ないであろう。

 表題にもしたが、この様な映画が可能になったのも、高齢化が進み寿命が延びていることがある。2017年の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.26歳でともに過去最高を更新している。日本人の平均寿命は戦後間もない1947年には男性50.06歳、女性53.96歳であった。その70年で男性は約31歳、女性は約33歳延びた。ちなみに、米国の寿命は昨年で、男性が76.1歳、女性が81.1歳であった。

寿命が延び高齢化し、さらに同時に少子化も進むと、経済の構造も変わる。経済成長率が落ち、財政赤字が拡大する。先進国では同じ傾向がある。しかし、その中でもGDP(国内総生産)対比の累積した財政の赤字率一位が日本である。

25年後に会いましょうといって、再び製作したのも"すごい"が、しかし、もっと"すごい"のが、実はある。日本の映画『犬神家の一族』である。最初が1976年で、再度製作したのが2006年でなんと30年である。キャスト市川昆監督の遺作となった。『犬神家の一族』も出演した俳優がほとんど一緒である。これだけのことができるのは、高齢化社会になったからである。