ナイジェリア「民主政」の腐敗――凶悪犯罪者が資金力で政治家になり横領に励む悪循環

ナイジェリアは軍事政権時代、人権活動家に濡れ衣を着せて処刑し、世界的な制裁を受けましたが、当時の凶悪な面々がそのまま政界や司法にいて、見た目には「民主的な」選挙をしているのです。

ナイジェリアの税関による窃盗事件では、警察が露骨に買収されて犯人をかばい、調書も大半がファイルから消えました。警察は被害者から交通費や通信費、飲食や小遣いを巻き上げ続けながら、犯罪者の保釈で裏金を稼ぎ、証拠も隠滅するのでした。

そこへ夫と同じ民族の人が警察長官になり、捜査報告書を仕上げるよう現場をプッシュしてくれましたが、現場は「犯罪事実がない」。そこで、同じ民族の官僚を送り込んでくれ、窃盗などの罪状と犯人を明記した捜査報告書がようやく完成。窃盗から3年半経っていました。

その官僚は危険なので、捜査報告書に夕方サインし、翌日には異動したのですが、異動先まで追及され、左遷されてしまいました。

2ヵ月後、ラゴス州の検事が不起訴と決定。役所の不注意はあるが窃盗は問えない、民事訴訟で解決してくれという判断でした。高級車を買ったり、海外旅行に出かけた検事は、やはり買収されていたのです。

その民事訴訟は長引いて費用がかさみ、首都アブジャに支店を出すつもりで買ってあった家を処分しようとしたところ、何者かが住んでいました!

売主のデベロッパー(現職の下院議員経営)が勝手に賃貸していたのです。アブジャの上級弁護士に依頼して、物件の引渡しと損害賠償を求める裁判を起こしましたが、傍聴に行った人が「原告・被告の弁護士が判事と事務所にこもった」と訝っていた通り、裏で談合して裁判が棄却されてしまいました。

後で分かったのですが、その議員に不動産絡みで身内を殺されたとネットで告発されており、大勢殺しているという話も耳に入ってきました。でも逮捕されることもなく、上院議員や州知事の与党候補の地位を争っています。

窃盗犯のうち、通関業者が人権侵害だと訴えてきて、横領した社員の公判も始まり、裁判が一日に2ヶ所など、目まぐるしく奮闘していた頃、週末にビーチで顔見知りの男が話しかけてきました。

レストランでの食事や買い物の後、ビーチに行ったのですが、どこから尾行してきたのでしょうか、税関職員2、3人も一緒におり、「次の法廷までに保税倉庫かお前(夫)のどちらかが死ぬ!」と脅されました。

男は10年近く前、通関費用を持ち逃げした通関士で、逮捕して被害額を取り戻したのを逆恨みしていたようです。その泥棒は持ち逃げした時、地方選挙に出馬して落選したのですが、税関と共謀して10億円ほどの資金を作り、州知事になると言っていました。

今のところ、保税倉庫の経営者も夫も生きていますが、脅迫してきた男はナイジェリア北東部の副知事になっています。

ナイジェリアの政治家は本来の仕事そっちのけで横領に励んでいます。就任までにかかる莫大な費用を取り戻すためもあるのでしょう。知事は億単位の現金を外国に持ち出し、下の行政レベルでも交付される予算を関係者が山分けしていると、あちこちで聞きます。

ほかにも、マネーロンダリングなどでイギリスで服役中の元知事は、軍人大統領のヒットマンだったと妻が自白していました。汚職や窃盗どころか、凶悪犯罪者です。

ナイジェリアは軍事政権時代、人権活動家に濡れ衣を着せて処刑し、世界的な制裁を受けましたが、当時の凶悪な面々がそのまま政界や司法にいて、見た目には「民主的な」選挙をしているのです。

権力を握っている間にためた資金力にモノを言わせて、自分に逆らえない人を後任に据え、不正を追求されないようにしています。選挙で顔ぶれが入れ替わっても、腐敗が改善しない訳です。

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