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2015年04月07日 15時30分 JST | 更新 2015年06月06日 18時12分 JST

ナイジェリア南部を不安定化するイスラム政治家

3月末にナイジェリア大統領選挙が行われ、30年前にクーデターで1年余り政権を担ったイスラムの元将軍ブハリが当選しました。

3月末にナイジェリア大統領選挙が行われ、ニセ投票用紙を大量に持った人が逮捕されたり、子供が投票している写真がTVやfacebookに出ていましたが、30年前にクーデターで1年余り政権を担ったイスラムの元将軍ブハリが当選しました。

ブハリと政党候補者の地位を最後まで争ったのが、私がナイジェリアで直面した凶行(税関による窃盗、詐欺、放火、車や在庫の不当な押収、尾行など)の背後にいるアティク元副大統領(在任1999~2007)です。

アティクはアルカイダからの資金でナイジェリア南部を不安定化させる工作をしたと報道され、南東部出身の夫にトラブルを仕掛けてきたのもその一端なのでしょう。

アティクの関与を最初に感じたのは、エステートの入口で拙宅宛の書類を盗んだ住民会長を逮捕した時です。同じく住人であるアティクの運動員が「許してやってくれ」と懇願に来ました。

次は首都アブジャで。ウカチュク下院議員(当時)経営の会社から買った住宅が8年も引き渡されず、詐欺で告訴すると家に放火。警察での交渉で再建、引き渡されたのですが、現地で仕上げ工事を妨害され続け、ある業者が「アティクが話したいそうだ、電話してくれ」と言ってきたのです。断りましたが。

アティクは積荷を盗んだ税関の元職員でもあります。主な登場人物の関係をまとめると、同一グループが仕掛けていることがよく分かります。

私たちの前に直接現れた政治家はムスタファ、現在ボコ・ハラムの活動が最も激しい北東部ボルノ州の副知事です。通関業者だった彼を紹介したのは、拙宅に放火した隣家の親戚サムでした(当時は親戚だと知りませんでした)。通関手続き後1年もコンテナを放置したため、2000年に告訴し、警察を通して被害額を回収したのを根に持っています。

その後、ムスタファの秘書が取引銀行の行員となって接近し、「使ってくれ」と懇願した通関業者Oが、2005年に税関と共謀で窃盗。私が日本から応援に来た後、ムスタファは税関職員と一緒に尾行、脅迫してきました。

警察の捜査は適法だったのに、Oが警察で人権侵害されたと訴えてきたのは、ムスタファと同じビルに事務所を構える弁護士。そしてアダマワ州知事(当時)ニャコの夫人である判事が窃盗犯に30万円払えと驚愕の判決を下しました。

ニャコはアダマワ州でアティクと双璧の有力政治家であり、ムスタファと共に海軍出身。ムスタファ逮捕の際、「許してやれ」と海軍の人が何人も来た中にニャコがいたかどうか、もはや確かめようもありませんが、自宅放火でも彼の名前が出てきます。

税関らに損害賠償を求めた訴訟は、裁判が終わろうとする度に判事が交代させられ、判事と弁護人は時に子供じみた芝居をして、今も裁判をエンドレスにしています。判事の人事権を握るのは、ムスタファと同じボルノ州のアウタ主席判事。軍政時代の1995年に油田地帯の人権活動家が冤罪で処刑され、世界的なナイジェリア制裁に発展したのですが、死刑宣告したのがアウタでした。ナイジェリアは民主政になっても、軍政を構成した人がそのまま残っているのです。

裁判所筋によると、私達のように窃盗の被害者が提訴し、裁判が引き延ばされる間に殺されたことが何度もあったそうです。夫の車襲撃、毒殺未遂、自宅放火などを乗り切り、私達一家が全員無事に生きているのが奇蹟だと、警察や弁護士も言います。

告訴した窃盗や放火は、いずれも犯人が警察で容疑を認めたのにイスラムの官僚が保釈して事件を放置、あるいは検事が強引に不起訴とし、単なる腐敗とは異なる、背後の大きな力を感じてきました。こちらの弁護士は誰かから1億ナイラ(6000万円)以上受け取っており、放火犯もあちこちで現金をバラ撒いています。警察や司法を動かすことのできる人が背後で多額の資金を投じているのです。

加害人脈の接点にいるアダマワ州知事は去年、800億ナイラ(480億円)もの不正で罷免されたのですが、疑惑のひとつ、架空工事の発注先は元下院議員ウカチュクの会社でした。

ウカチュクは税関と共謀で窃盗を働いた通関業者と同郷(アナンブラ州)で、近所に住むアティクの運動員や住民会長も、そこの出身だと言っていました。うちで買うはずだった隣家に放火犯一家を入れたのが顧問弁護士だと知って解雇したのですが、彼もそのアナンブラ州でした。私達は17年前から監視対象だったのです。

別々に見えた事件ですが、北東部のイスラム系政治家が南東部の人を手先に使い、イスラムの知事を頂くラゴス州が全面協力しているのでした。アブジャの家の件で、警察で下院議員の会社を交えた面談がある日、ムスタファの元社員が尾行する中、ラゴス州交通局が渋滞の中から当社の車だけ「逆走だ」と押収。

州裁判所の執行官が架空の執行命令で当社の倉庫と店舗から在庫をすべて持ち去った件では、州知事が「詳細は税関にきいてくれ」と、共謀を隠そうともしません。

ナイジェリアは新興国とされていますが、外国人に対してこのような凶行が行われ、司法でも救済されない現状を警告したいと思います。当選後、「法の支配」に言及している元将軍が、テロリストからの資金や横領した公金で凶行を仕掛ける政治家とは一線を画す人であることを願うばかりです。