ちょっと待って!その「児童労働反対!」は本当に正しい?-児童労働に関する誤解

児童労働に携わる子どもは、いわゆる「貧しい国の可哀想な子ども」という枠組みで見られることが多いが、ここには「誤解」も多い。

2013年の国際労働機関(ILO)の発表によれば、現在世界では推定1億6800万人の子供が児童労働に従事しており、世界の子供約9人に1人がその搾取を受けていると考えられている。

この「仕事」に携わる子どもは、いわゆる「貧しい国の可哀想な子ども」という枠組みで見られることが多く、日本を始め世界中の多くの人々が「児童労働反対!」の声を上げている。

しかしながら、この児童労働には「誤解」も多い。本記事では、これまで学生NGOバングラデシュ国際協力隊の一員としてストリートチルドレン問題に関わってきた経験も踏まえながら、この誤解を解き、児童労働に関する理解を深めたい。

駅で働く子供たち-バングラデシュ(photo by 原貫太)

「子供が働くこと」の全てが悪であるわけではない

国際条約の定義では、15歳未満(途上国は14歳未満)の子供が教育の機会を剥奪されながら働くこと、また18歳未満の子供が従事する危険で有害な労働を「児童労働(Child Labor)」と定義している。

子供が働いていれば全て児童労働というわけでは決してなく、健康に悪影響を与えない労働や、子供から教育の機会を奪わない労働に関しては「子供の仕事(Child Work)」として考えられ、児童労働とは区別される。この「子供の仕事」は、子供の成長や家族の絆を深めるという意味で、子供にポジティブな影響を及ぼすとまで考えられている。全て全て

新聞売りの仕事の手伝いをする少年

児童労働は発展途上国だけの問題ではない

児童労働に従事する子供の数が最も多いのは、アジア太平洋地域の約7770万人、また児童労働に従事する5歳から17歳の子供の割合が最も高いのは、サハラ砂漠以南アフリカの約21%と言われている。このデータからも、「児童労働は発展途上国だけの問題」と感じるかもしれないが、決してそんな事はない。

世界の高・中所得国においては約1200万人の子供が児童労働に従事していると言われている。例えば、ヒューマン・ライツ・ウォッチ発表の報告書では、アメリカのたばこ農場に労働者として雇われて長時間労働に従事し、ニコチンや有毒な農薬を浴び、酷暑で作業する16歳と17歳の子供たちの被害が明らかにされている。

線路を歩きながら廃品回収の仕事をする少年-バングラデシュ(photo by バングラデシュ国際協力隊)

児童労働の形態として最も多いのは農業

テレビや新聞に映し出される写真のせいだろうか、「児童労働」という言葉を聞いて、多くの人はレンガ工場で働く子供や、都市部の路上で物売りをする子供を思い浮かべるかもしれない。しかし、国際労働機関の発表によれば、5歳から17歳の子供が従事する児童労働のうち約58.6%は農業とされている。依然として発展途上国の大部分の人が農業を生業としている中、家族の一員として生計を支えるために、多くの子供たちが農業に従事している。

農村部に暮らす子供たち-バングラデシュ(photo by バングラデシュ国際協力隊)

児童労働と一口に言っても、そこには様々な要因や当該国の文化的・意識的要因なども関係しており、これらを理解せずして「児童労働反対」の声を上げることは、時として先進国の一方的な価値を押し付けることにも繋がりかねない。また、日本に暮らす我々の周りに児童労働が潜んでいる可能性も否定できない上に、我々が日常よく使用している物が、発展途上国の児童労働によって作られた可能性も決してゼロでは無い。

児童労働へ反対の声を掲げることは、その禁止や廃絶に向けた取り組みの第一歩として欠かせない。しかしながら、声を上げるからにはそれ相応の「責任」を果たさなければならないのは明白であり、その最低限の責任としてまずは児童労働を正しく理解すること、これが大切ではないだろうか。

記事執筆者:原貫太

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