2030年までに5歳未満の子供6900万人が"本来防げるはずの原因"で死亡する恐れ-ユニセフ報告書

世界の裕福な子供たちに比べ、貧しい子供たちは5歳未満で死亡する割合が約2倍高いことが報告書では示されている。

ユニセフ(国連児童基金/UNICEF)は28日(火)、『世界子供白書2016』を発表した。

同報告書では、世界が最も厳しい状況に置かれている子ども達に関心をもって対応しなければ、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の期限である2030年までに、5歳未満の乳幼児6,900万人が本来防げるはずの原因(病気や飢餓など)で亡くなり(その約半分がサハラ砂漠以南地域の国々)、1億6,700万人の子どもたちが貧困に苦しみ、7億5,000万人の子どもたちが児童婚をする恐れがあると懸念されている。

ポリオ(小児性マヒ)を患うも物乞いに利用される少年。病気や怪我を抱えた子供たちがその姿を「売り」として物乞いをさせられる。"レンタルチャイルド"とも呼ばれる(バングラデシュ首都ダッカにて筆者撮影)。

世界の裕福な子供たちに比べ、貧しい子供たちは5歳未満で死亡する割合が約2倍高いことが報告書では示されている。また、最も豊かな家庭の女子に比べて、最も貧しい家庭の女子が児童婚(18歳未満での結婚、またはそれに相当する状態)をする確率は2倍以上になるという。世界で最も貧しい女子たちの児童婚の割合は1990年からそれほど変化・改善しておらず、毎年1,500万人の女子が子供ながらの結婚をしている。

児童婚は彼女たちから「子ども時代」を剥奪し、彼女たちの成長に悪影響を与える。幼い年齢での妊娠・出産は死亡リスクが高く、出産と共に親子共々亡くなるケースも多い。また児童婚をすると、学校をドロップアウト(中途退学)する事が多いため、彼女たちは十分な教育を受けることが出来ていない。

報告書は、南アジアやサハラ砂漠以南において、中等教育を修了した母親から生まれる子どもに比べて、教育を受けていない母親から生まれる子どもは5歳未満で死亡する確率が約3倍高いことを指摘している。

ウガンダ北部では、5人に1人の子どもが5歳の誕生日を迎えることが出来ないと言われている(ウガンダ北部にて筆者撮影、データは2008年時点)。

一方で報告書は、5歳未満の子どもの死亡率が、世界的には1990年と比べて半分以下へと減少しており、129カ国で男女が同等に学校に通うようなったことを評価している。さらに、1990年代に比べて、極度の貧困化に暮らす人の数は約半分へと減ったことにも触れており、昨年達成期限を迎えたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals/通称MDGs)の結果が表れていることを感じられる。

しかしながら、2011年以降学校に通っていない子どもの数は増加しており、現在世界の約1億2400万人の子供は小学校や中学校に通っていない。その上、小学校を卒業している5人に約2人は読み書きをしたり、また簡単な算数をしたりすることが出来ない。

ゴミ拾いの仕事をする少年。学校には通っていない(バングラデシュ首都ダッカにて筆者撮影)。

持続可能な開発目標とは?

ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals/以下MDGs)の期限である2015年の9月25日~27日、ニューヨークの国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと、その成果文書として、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。

このアジェンダでは、人間、地球及び繁栄のための行動計画としての宣言および目標が掲げられた。この目標が、MDGsを継承・発展させた「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals/以下SDGs)」である。SDGsは「あらゆる貧困の終焉」「ジェンダー平等の推進」「気候変動への具体的な対策」など、17の目標と169のターゲットから成り立っており、2015年から2030年にかけて国際社会が一丸となって目指すべきゴールを掲げている。

UNICEFは『世界子供白書』のプレスセンターにて、「不公平は、避けられないものではなく、また克服できないものでもない、とその報告書は訴えている。最も脆弱な子どもたちに関するより良いデータや、子どもたちが直面している問題に対する総合的な解決策、古くからの問題に取り組む革新的な方法、より平等な投資やコミュニティの参加促進など、これら全ての対策が子どもたちに公平な機会を与える一助となる。」と述べている。

MDGsは目標が8つ、ターゲットが21項目だったのに対して、SDGsは目標が17つ、ターゲットは169項目と多数に上っている。限定的であったMDGsに比べて諸問題に対する包括性が高まっている事、また「症状」だけではなくその問題を産み出している根本的な原因へのアプローチにも重点が置かれていることが評価されている。

加えて、MDGsが途上国、特に最貧国を対象としていたのに対して、SDGsは先進国・途上国を問わず、全ての国々を対象としている。先日、アメリカの公共慈善団体である国連財団(UN Foundation)によって、サッカー日本代表でもある本田圭佑選手がユース担当のグローバル・アドボケート(Global Advocate for Youth)に任命されたが、市民社会を構成している我々一人一人の意識や行動も、このSDGsを達成し、より良い世界を実現するために欠かせない。

記事執筆者:原貫太(早稲田大学4年/学生NGOバングラデシュ国際協力隊 創設者兼第一期代表)

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【お知らせ】

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学生NGOバングラデシュ国際協力隊は、「"気づき"から始まる国際協力」という理念の下、ストリートチルドレン問題に特化し、現地で直接的な活動を行う学生NGOです。これまでに4回の現地渡航活動を実施してきました。

首都圏の大学生を中心に活動中。7月に活動説明会を実施します。

●日時

7/6 (水)18:15~18:45

7/13(水) 18:15~18:45

7/20(水) 18:15~18:45

●開催場所

新宿NPO協働推進センター(高田馬場駅より徒歩15分)

●対象

大学生/大学院生

●参加費

無料

参加希望の方は、以下の申し込みフォームに記入をお願いします。

活動説明会の詳しい内容はこちらのページを、また当団体の詳しい活動内容は、公式ホームページをご覧ください。

バングラデシュ現地での活動の様子(写真:バングラデシュ国際協力隊)

*今回のダッカ邦人殺害事件を受け活動説明会の開催延期を検討しましたが、メンバー間の話し合いの末、予定通りの実施を決定致しました。

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