国際女性デー(3月8日) --グラミン銀行の借り手から話を聞いた(バングラデシュ)

「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」という国際社会の目標の達成に大きく貢献しているのが、グラミン銀行を始めとした各種支援機関によるマイクロクレジットである。
原貫太

毎年3月8日は国連によって定められた国際女性デー(International Women's Day)として、女性の権利と世界平和を目指した様々な働きかけが世界各地で行われる。

「国際女性デー(3月8日)-ジェンダー平等推進に向けた世界の歩み」で概観したように、依然として課題は残るものの、この15年間で「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」という国際社会の目標は広く達成され、特にバングラデシュやインドを始めとする南アジアでは顕著な改善が見られた。

そして、この結果に大きく貢献しているのが、バングラデシュのグラミン銀行を始めとした各種支援機関によるマイクロクレジットである。

一般的に、貧困層に位置する人々は担保と呼べるものを持っていないため、通常の銀行から融資を受けることが難しい。その一方で、グラミン銀行は貧困層を対象にした比較的低金利の無担保融資(マイクロクレジット)を主に農村部で行っている。経済的に貧しい生活を送る人々は借金を踏み倒してしまう事が多いと言われるが、それにも関わらずグラミン銀行における借り手の返済率は97.71%(2014年8月)と、高い値を誇っている。

銀行は借り手に担保を求めない代わりとして、借り手5人による互助グループを作ることを条件としている。農村生活ならではの信頼関係や地域の繋がりを巧みに利用し、高い返済率を維持しているのだ。

グラミン銀行の借り手は97%が女性とされており、多くの女性が経済的貧困からの脱出と社会的地位の向上に成功している。その一方で、グラミン銀行の利子は年率20%と言われており、日本の基準から考えると決して低金利とは言えない。実際に現地バングラデシュの農村部に足を運び、借り手から話を聞いた。

グラミン銀行の借り手の女性たち(2014年9月筆者撮影)

ジャハンさん

58才。グラミン銀行のシステムを利用してから3年が経つ。25歳の娘と16歳の息子がおり、娘さんは「母がグラミン銀行から融資を受けていなければ仕事も出来ず、弟は学校に通えていなかったと思います。」と話していた。

当初2900タカ(約4000円)の融資を受け、ミシンを購入。ミシンでの儲けは、1か月で4000~4500タカになる。現在は毎月750タカを返済、25タカを貯金に充てている。

●グラミン銀行に望むこと

「利子を低くしてほしいです。そうすれば、大きな金額を借り、大きなビジネスをできる。私の場合は、今のミシンのビジネスを大きくしたい。ただ失敗した時返済不可能になるのが怖いので、今は無理に借りようとは思えない。」

●現在の生活で不満・不安なこと

「持病があるため、時々仕事が出来なくなる。また、ビジネスが失敗したら息子(16歳)が学校に通えなくなるので、その点はいつも緊張している。グラミン銀行からお金をさらに借り、夫の仕事にも投資すれば収入が増えるかもしれない。ただ夫は金の管理ができないため、夫のために借りることは今は考えていない。」

インタビュー中の様子(2014年9月筆者撮影)

コデザさん

50歳。4人の娘(2人は既に嫁いでいる)と息子2人がいる。

23年前に初めてグラミン銀行のマイクロクレジットを利用し、当初10000タカ(約14000円)を借りて夫の果物ビジネスに投資した。現在は23万タカを借りており、ビジネスを大きく展開。人を雇って店舗を出せる程になっている。返済額は毎週5200タカ。

家の中にはカラーテレビや冷蔵庫があった。「グラミン銀行のおかげで夢が叶い、人生のプランを立てられるようになった。次は、家を2階建てにしたい。」と話していた。

●グラミン銀行に望むこと

「利子を下げて欲しい。」

●現在の生活で不満・不安なこと

「現在はビジネスに成功しており色々な所から収入が入ってくるため、毎週の返済は負担ではない。特に生活で不満・不安はない。」

グラミン銀行の借り手の方々と

グラミン銀行は2006年、創設者であるムハンマド=ユヌスと共にノーベル平和賞を受賞するなど、マイクロクレジットの代名詞とも言える存在だ。しかしながら、無担保ではあるものの、20%という利子の高さに関しては多くの借り手が不満をこぼしていた。

インタビュー活動や現地で暮らす方からの話を通し、互助グループのメンバーからのプレッシャーに耐えられず自殺してしまう人、また返済できずに更なる「貧困」へと突き落とされる人がいることも知った。

返済率97.71%は、裏を返せば2.29%の人々が返済できていない事を意味する。輝かしい成果の裏で、声を上げることができずに苦しんでいる「最下層」の人もまた存在することを、私たちは見失ってはいけない。

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