「もう一度人生を変えたい」 社会復帰を目指す元子ども兵士たちの式典

「自分の人生をもう一度変えられるように、そして地元の人たちの生活をも支えられるように、一生懸命に働きます。」

ある日突然誘拐され、兵士として戦場に駆り出される。初めての任務として、実の家族を殺すことが強要される。少女兵の場合、性的な奴隷としても搾取される。

「"13歳で誘拐された元少女兵"が語る壮絶な体験談 生き別れた子供との再会を夢見て」「世界で最も残忍な反政府組織"神の抵抗軍"―「ぼくはお母さんの腕を切り落とした」」で紹介したように、元子ども兵の人々が体験した苦しみは決して簡単に癒えるものではなく、その「痛み」は日本で暮らす私たちからは、もはや想像する事すら難しいかもしれない。

しかし、その一方で、日々懸命に社会復帰の道程を歩む彼ら彼女らの姿には、施設で同じ時間を過ごす私自身驚かされるものがある。

子ども兵士(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

私がインターン生として働く認定NPO法人テラ・ルネッサンスが、東アフリカのウガンダ北部グル市内で運営する「元子ども兵社会復帰施設」。

実技試験で洋服を作る元子ども兵たち(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

今月19日、1年半の訓練で木工大工や洋裁のスキルを身に付け、また基本的なビジネスの知識も得た元子ども兵たちが、これから本格的にビジネスを始めていくための道具の供与式(修了式)が行われた。私含め、現地で働くスタッフはこの数日間、式典の準備に追われていた。

供与式を前にした想いを語ってくれていた現地スタッフのグレイス(photo by Kanta Hara)

受益者である8期生や現地スタッフのみならず、彼ら彼女らの保護者や地元の人々、またNGO関係者など多くの人々が一堂に会する式。

元子ども兵たちが社会的な繋がりをさらに強め、本格的な社会復帰の道のりを歩んでいくための、大きなターニングポイントになったはずだ。

子ども時代に壮絶な経験をした彼ら。

反政府軍から脱出し、NGOなどの保護を受けてからまだ数年しか経っていない人がほとんどだが、彼らが一日でも早く社会復帰し、「普通の生活」へと戻れるように、私も全力で供与式をサポートした。

式で8期生に授与されるミシン(photo by Kanta Hara)

式典中の来賓のスピーチ。スピーカー席左から4番目が筆者。(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

登壇者の話を真剣なまなざしで聞く8期生たち。(photo by Kanta Hara)

供与式で洋裁の道具を受け取った元子ども兵の方(photo by Kanta Hara)

元子ども兵ジェイド(仮名)の想い

「訓練期間、私のことを見守り続けてくれた神様に、深く感謝しています。同時に、日本の支援者様、特にテラ・ルネッサンスの支援者様にも「ありがとう」と伝えたいと思います。あなたたちの助けが無ければ、私が1年半の訓練を終えることは難しかったと思います。私が訓練を終えられたのは、日本の皆様のおかげです。」

「今この瞬間は、私が施設を出て外に行くのに必要な物、ビジネスを始めるために必要な物一式(道具や機械)を手にすることができて、とても幸せに感じています。」

供与式で木工大工用の道具を受け取った元子ども兵の方(photo by Kanta Hara)

「これから外に出て、テラ・ルネッサンスで培ったスキル―私の場合は木工大工のスキル―を使って、ビジネスを開始します。自分の人生をもう一度変えられるように、そして地元の人たちの生活をも支えられるように、一生懸命に働きます。」

「日本の人たちにメッセージがあります。テラ・ルネッサンスのような活動、支援は本当に素晴らしいです。だけれども、私たちだけで活動、支援が終わってしまってはいけない。続かなくてはならない。テラ・ルネッサンスが実施するような訓練を必要としている人たちは、まだ他にもいます。だから、これからも活動を続けてほしいです。」

式典後の集合写真(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

元子ども兵アンネ(仮名)の想い

自分の人生を変えていきたい。拘束を逃れて帰還した後すぐは、自分には生計を立てるための手段が全く無くて、人からお金を借りて何とか日々の生活を凌いでいました。テラ・ルネッサンスで訓練を受けている時も、病気になった時はテラ・ルネッサンスから薬を貰っていた。子どもたちを育てることも出来ず、テラ・ルネッサンスにずっとサポートしてもらっていた。これからは、自分の力で生活費を稼いで、子ども達を支え、自立して生活できるようになりたい、そう思います。」

アンネ(写真左)と筆者(写真中央)(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

編集後記

「"初めての任務として母親の腕を切り落とす"子ども兵の問題は、大学生の私にとって目の前の解決したい問題になった。」で綴ったように、かつてはどこか遠くの世界の出来事にしかすぎなかった子ども兵問題が、今は私の目の前にある。

初めて元少女兵の方から直接話を聞いた時から、ちょうど1年。元子ども兵の方々が、少しずつではあるかもしれないが、尊厳を取り戻し、社会復帰の道のりを確実に歩んでいることを感じられた、本当に素晴らしい式典になった。

人は微力ではあるが、無力ではない。この言葉を改めて噛みしめ、日本から12,000km離れたウガンダの地で頑張り続けようと、改めて決意を固めることができた。(原)

(2016年1月20日 原貫太ブログ「世界まるごと解体新書」より転載、一部修正)

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記事執筆者:原貫太

1994年、神奈川県生まれ。早稲田大学文学部社会学コース4年。認定NPO法人テラ・ルネッサンスインターン生。

大学1年時に参加したスタディーツアーで物乞いをする少女に出逢ったことをきっかけに、「国際協力」の世界へと踏み込む。2014年に学生NGOバングラデシュ国際協力隊を創設、第一期代表。国内での講演多数。

交換留学生として、カリフォルニア州立大学チコ校にて国際関係論を専攻。帰国後、赤十字国際委員会駐日事務所や認定NPO法人テラ・ルネッサンスでインターン生として活動。政治解説メディアPlatnewsでは国際ニュースの解説ライターを務める。

認定NPO法人テラ・ルネッサンスのインターン生として、2017年1月~2月末にウガンダ&ブルンジで勤務予定。

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