シリーズ「拝啓 路上で生きる子ども達へ」①―1億人のストリートチルドレン

皆さんは「ストリートチルドレン」という言葉を聞いて何を思い浮かべるだろうか。

「僕は8歳。両親は去年死んだよ。生きるために、毎日働かないといけないんだ。もし叶うなら、学校というものに通ってみたい。」

駅で暮らすストリートチルドレンたち。写真中央は筆者。(photo by Kanta Hara)

海外、特に発展途上国と呼ばれる国々に足を運んだ経験があれば、裸足で路上をかける子どもや道端で働く子どもを、一度は見かけたことがあるだろう。

経済発展著しいアジアやアフリカの途上国では、その恩恵を受ける富裕層がいる一方で、急激な都市化によって小さな犠牲者たちが生まれていることもまた事実だ。

私はこれまで、大学2年時に創設した学生NGOバングラデシュ国際協力隊のメンバーとしてバングラデシュで活動する過程、また個人的な研究でアフリカに足を運ぶ過程で、路上で生きる子ども達と多くの時間を過ごしてきた。その経験や私が学んだ事を活かし、シリーズを通じてその定義から実際のインタビュー録まで、「ストリートチルドレン問題」という一つの"世界の不条理"を幅広く考えたい。

線路沿いのスラム。(photo by バングラデシュ国際協力隊)

「ストリートチルドレン」の定義

皆さんは「ストリートチルドレン」という言葉を聞いて何を思い浮かべるだろうか。路上で暮らす子どもだろうか?観光客に物乞いをする子どもだろうか?それとも、飢えて死にそうな子どもだろうか?

私たちが最初に考えるべき「ストリートチルドレンとはどんな子どもなのか?」だが、これにはいくつかの定義が存在する。

"ストリートで過ごす時間やそこで生活するに至った理由は関係なく、都市のストリートにおいて働いているすべての子ども。" (UNICEF(国際連合児童基金))


"自分の家族から離れて生活し、ストリート・空き家などが広義の意味での実質的な家となり、成人による保護や監督を受けていない状態にあること。" (1982年 ジュネーブ国際子どもカトリック会議)


"本来ならば、大人たちから十分に保護され、監督されるべきである年齢であるにもかかわらず、家を離れて路上で暮らしている子どもたちのこと。" (『国際協力の地平-21世紀に生きる若者へのメッセージ』 NGO活動教育研究センターより)

事実上、ストリートチルドレンの明確かつ統一された定義は存在せず、研究者やNGO(非政府組織)関係者、政策施行者によって異なっているのが現状だ。

港で働く子供たち。(photo by Kanta Hara)

全世界で1億人以上の子供が路上で暮らしている

定義上の問題、また場所を変えながら生活する事が多いストリートチルドレンの特徴などにより、正確な人数は把握されていないが、現在世界では1億人以上のストリートチルドレンがいると考えられている*。2010年時点での15歳未満の子供の数は約18億4200万人と言われている(国連発表)ので、この1億人という数字が如何に大きな数字かが実感できるだろう。世界人口の増加、また急激な都市化がその速度を緩めることなく続く中で、その数はますます増加しているかもしれない。

全世界に1億人以上いると考えられているストリートチルドレンだが、その大半は男の子だと考えられている。実際私がこれまで出会ってきたほとんどのストリートチルドレンも男の子だ。その理由としては、以下4つの理由が挙げられる。

①男の子は家事など家庭での役割が少ないこと

アジアやアフリカを始めとした発展途上国の多くでは、その規範や文化から家庭での仕事は女性(女の子)が担う事が多い。その為、例えば家族の中の誰かが「出稼ぎ」をする必要に迫られたとき、ほとんどの場合は男の子が選ばれる。

②男の子は働き手となること

路上での暮らしを続けるためには、まずは安定した仕事(決して「安定的」と言える仕事ではない)に就く必要がある。しかしながら、路上生活者が就く事の出来る仕事は日雇い労働など力が必要になるものがほとんどであり、また非公式な仕事(ゴミ拾いや電車の乗客の荷物運びなど、誰かに雇ってもらわなくとも行う事の出来る仕事)でも多くが体力を必要とする仕事であり、相対的に女の子よりも男の子の方が働き手となる。

仕事の合間に休息を取る子ども。(photo by Kanta Hara)

③相対的に男の子は「冒険的」であること

私がこれまでインタビューを行ってきた中で、「都会を見たくて田舎からバスに乗ってきたが、帰り方が分からず、また帰るためのお金も無い。だから、そのまま都会に住み着くことになり、今は路上で寝泊まりし働きながら生活をしている。」という子供がいた。ほんの少しの「冒険心」からこのようにストリートチルドレンになってしまう子供もいれば、「親から離れて暮らしたい。」と思春期の男の子らしい想いから家出をした結果、他のストリートチルドレンとの共同生活が想像していたよりも楽しかったので、そのまま路上での生活を続けているという子供も多く見られる。

④女の子は路上で暮らしていると被害に遭いやすい

女の子は路上で暮らしていると、他のストリートチルドレンなどからレイプ(性的暴力)などの被害を受けやすいため、出来る限り親と共に暮らすか、もしくは女の子だとばれないように男装しているケースも存在する。

無防備な姿で路上に寝る少女

*児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)では、18歳未満を「児童(子供)」と定義している。

バングラデシュ国際協力隊の活動はこちらをご覧ください。現在新メンバーも募集しております(4月に説明会実施)(大学生限定)。

原貫太

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