072 | いつでも、いつまでも、潜れる身体でいるために。

タンクを背負わず、息を止めて海中深く潜るスポーツ・フリーダイビング。7年ほど前からその魅力に完全にはまってしまったと話すフリーダイバーの武藤由紀さんは、平日はITのベンチャー企業で働き、週末はフリーダイビングに没頭している。多忙な生活の中、潜る身体を維持するために行っている事を聞いてみた。

タンクを背負わず、息を止めて海中深く潜るスポーツ・フリーダイビング。7年ほど前からその魅力に完全にはまってしまったと話すフリーダイバーの武藤由紀さんは、平日はITのベンチャー企業で働き、週末はフリーダイビングに没頭している。多忙な生活の中、潜る身体を維持するために行っている事を聞いてみた。

「フリーダイビングは、がむしゃらにやってはいけないという珍しいスポーツだと思います。やるぞ!っていう気持ちに身体を追いていかせるようなスポーツは多いけど、フリーダイビングはそれができない。がむしゃらにやると海で気絶してしまうという危険性もあります。むしろ身体の調子を観察し、そこに気持ちが寄り添っていくイメージですね。やるぞ!と思わない訓練が必要なんです」。頑張らないためのトレーニングとして行っているのは、ヨガや瞑想。朝と寝る前の瞑想では、海に潜っているときを想像しながら、心を無の状態にする。「何も考えないということが一番難しいんですが、これが一番大切。脳で考えている時というのは、血が脳に巡り、酸素をたくさん使うんです。そうすると水の中で息が続かなくなってしまう。海の中では酸素の消費量を少なくすることがなによりも大切なので」

でも、一番大事だと思っていることは、トレーニング以上に「身体が本来持っている、潜れる力」を活かすための習慣。例えば、毎日少しでも水に入ること。。水着を常に持ち歩き、仕事が忙しくても、朝や夜に少しでもプールに行き、プールに行く時間も取れない日は、お風呂にただゆっくり浸かる。10分だけでも水に入るだけで、武藤さんの"水欲"が満たされ、水と一体化した穏やかな気持ちになるという。食事で気にしていることは特にないというが、週末に海に潜りたいと思うと、自然と身体に悪そうなものは口にしない。「潜れる身体でいたいという気持ちが強いと、ジャンキーな食べ物を食べたいと思わなくなりました。仕事柄、外食が多かったり、飲み会だったりということも当たり前にありますが、その中でも自然に必要な食品を身体が選んでいる気がします。なので、基本身体任せなんですよね」。

「競技のための特別な調整をして、すごい記録を出して、それ以外の期間には全く潜れないというのはいやなんです。普通の生活をして、いつでも50mを潜れる身体でいたい。海や水が好きなので、一年中、そして一生潜れる身体でいたいです」と言う武藤さん。泳ぎたい、海に潜りたいという身体の声に耳を傾けて、その気持ちに応えることが武藤さんにとってのカラダにいいことなのかもしれない。写真/石渡朋 文章/宮原未来

武藤由紀

●むとう・ゆき

素潜りを競うフリーダイビングの日本代表選手。自ら主宰するフリーダイビングチーム「リトル・ブルー」を通じ、フリーダイビングを安全に普及させる活動にも取り組む。神奈川・葉山にあるアウトドアフィットネスクラブ「BEACH 葉山」にて、週末限定で、スキンダイビングのクラスを受け持っている。

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(「からだにいい100のこと。」より転載)

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