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2014年07月17日 23時58分 JST | 更新 2014年09月16日 18時12分 JST

台湾で人気を集める、ものづくり空間やスマホアプリ

土橋克寿

 台湾の交通の要・台北駅から程近い所に位置するクリエイティブ開発特区「華山1914文創園区」。この夏には、人気漫画ONE PIECEの展覧会やLINEのポップアップストアも開かれており、終日活気づく人気エリアだ。その一画に居を構えるのが、東京・渋谷で人気を集めるデジタルものづくりカフェ FabCafeの台湾店「FabCafe Taipei」である。レーザーカッターを初めとするデジタル工作機器が備えられており、こだわりのコーヒーを味わいながら、ものづくりを楽しめる。

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 Fabcafeは世界中のクリエイターを繋ぐプラットフォームを構築しようとしている。台湾店を担うのは、ハーバード大学でデザインを専攻した経歴を持つ、FabCafe Co-founderのTim Wong。ここでは、誰でも気軽に参加できるワークショップが開催されている。グラスにデザインを施したり、クッキー型を製作したりと、女性に好評なカリキュラムも多い。Timはその思いをこう話す。

「地元のクリエイティブな人々との繋がりを大切にして、一緒にものづくりを楽しんでいきたいです。『台湾で自らのプロダクトを見せたい』『デザイナーとして挑戦したい』『異なる思考プロセスからのフィードバックが欲しい』といった思いを抱いた方が FabCafe Taipei を訪れた時、我々は力になれます。オープン思考のクリエイティブコラボレーションが、新たなものづくりの流れを加速させていくのです」

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  FabCafe Taipeiから徒歩5分。TED Taipei事務所も入居するビルの1フロアを占めるのが、ものづくりに特化したコワーキングスペース「MakerBar Taipei」である。工房的な雰囲気を醸し出すMakerBar Taipei では、ハードウェア関係の起業家から、フリーのソフトウェア開発者・ジュエリーデザイナー、大企業のデザイナー・リサーチャーまで、様々な分野の人々が集まっている。ワークショップが週2回ほど開催されており、話題の3Dプリンターや自作ロボットも身近に感じられるだろう。

「我々は"学び"へ注力しつつ、台湾でメーカーのエコシステムを構築していきたいと考えています。ものづくりにおける中国・深圳の魅力的な環境は、世界中から人を呼び寄せています。台湾政府もこの動きに気付いており、中小工場が集積している今の環境を活かした取り組みを始めています。これらの工場は、ハードウェア系スタートアップのプロトタイプ製作に大きく貢献できるでしょう」とMakerBar Taipei COOのMonica Shenは語る。彼女は、さらにこう続けた。

「我々は人々を刺激する、大きなサクセスストーリーを必要としています。『あなたにもできるんだよ!』と言えるような。だからこそ、お互いのアイデアを交換していく国際的な繋がりを構築していきたいと思っています。我々は、日本で多くのイノベーションが生まれていることを知っていますので、ぜひ足を運んでみてほしいです」

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 台湾は歴史的にハードウェア関係に強みを持つが、最近は苦戦を強いられている。例えば、国際的な携帯電話メーカーHTCも、アップルやサムスンの攻勢を受けて業績を低迷させている。そんな中、次世代を担うソフトウェアの起業家も次第に増えている。その一人、StorySense Computing CEOのEdward ShenはMIT Media Labを卒業後、様々な選択肢がある中で台湾へ帰国・起業した。彼はその理由をこう話す。

「現在、台湾の製造業は非常に低い利益率に苦しんでいます。一方、世界におけるソフトウェア・インターネット・モバイル産業が劇的に拡大しているにも関わらず、この分野における台湾発の大成功はまだ生まれていません。もし私たちが台湾経済を向上させると共に、世界レベルでインパクトを与えられるモノを作り出せたら、シリコンバレーなどで生活している才能ある友人たちも帰国を検討するかもしれない。台湾のハイテクノロジー産業を盛り上げたいのです」

 人工知能開発に特化したStorySense Computingは、「おばあちゃんにも優しいコンピュータ」の製作を目指している。特に言語分析関連のアプリ開発へ注力しており、WhatsTheNumberはiOS版やAndroid版、有料版、無料版を含め、全体で100万ダウンロードを突破する人気アプリだ。

 電話番号検索に特化しているWhatsTheNumberは、店舗や公共施設の名称を入力すると、現在地から関連情報をリストアップ、ワンタッチで電話をかけられる。日本語検索にも対応しており、「ドミノ・ピザ」「ヨドバシカメラ」と入力すれば即座に検索結果が表示されるため、わざわざウェブ検索する必要はない。なお、Lite版では20件まで、有料版では無制限でお気に入り登録でき、友達と情報共有することも可能だ。シンプルなサービス設計であるため、使い方は簡単、高齢者にも受け入れられるだろう。まるで、スマホ時代に最適化した個人用イエローページのようである。

 また、今年6月にリリースされた「Watchube」は、その時の"感情"を基に友達と交流できる動画系SNSだ。様々な動画が「ハッピー」「リラックス」「感動」「可愛い」とカテゴライズされており、ユーザーは手軽に気分転換できる。"感情"に基づいて自動的に分類された動画によって、自分だけのビデオライブラリーを構築できるため、自分自身とテイストが近い友達も一目瞭然となる。既にAndroid版が公開されており、iOS版は7月末に提供開始する予定だ。

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 同アプリを提供するicommoni FounderのDaniel Changは台湾で生まれ、幼少期に日本へ移住した。パークハイアット東京、日本HP、大日本印刷などを経て起業している。日本語、中国語、英語を流暢に話し、今回が3回目の起業となるシリアルアントレプレナーである。DanielはWatchube に込めた思いをこう話す。

「文章や写真とは異なり、動画はいつでもどこでも視聴できるわけではありません。再生時間や音声という制約がある動画は、Facebook上で唯一パッと見れないコンテンツといえます。Facebookのタイムラインにあるビデオコンテンツを全てアプリ内に表示させ、SNSとして独立させるニーズが十分あります。また、動画コンテンツに基づいて交流する際、今の"感情"を友達とシェアするには『いいね!』だけでは不十分です。自分で作成したジェスチャーを通じて交流する、そういった楽しみ方が求められています」

 台湾で長年育まれてきた製造業を基礎に、新たな要素を取り入れた"ものづくり文化"。当初から英語圏・中華圏を想定してサービスを開発している"起業家たち"。彼らがどのような物語を創り出していくのか、楽しみだ。