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2018年09月01日 12時22分 JST | 更新 2018年09月01日 12時22分 JST

政治家・行政への陳情・ロビイングは悪いことではない!カギは透明性だ

業界とつながる政治家や行政がおかしいのか?

 新たなビジネスモデルに法制度が追いついていないことによるトラブルへの対応、そして成長戦略のための規制緩和。これらの議論を前に進めるためには、行政や政治家に対するロビイング(ロビー活動)が必要不可欠になってくる。しかし、"霞が関ビジネス"と揶揄されるような、"官僚とのパイプ役"による汚職が報じられるなど、陳情、ロビイングには旧来のイメージや、一般の人たちからは遠いものだというイメージを持たれがちだ。このことについて、市民の活動をサポートしてきたジャーナリストの堀潤はどう見ているのか、話を聞いた。

■業界とつながる政治家や行政がおかしいのか?

 「民主主義」というと、どこかキラキラしていてキレイなイメージがありますが、そもそもは王様が統治していた時代、いかに自分たちの権利を獲得していくか、という綱引きのプロセスから出てきたものです。ですから当然、黙っていても何かが平等に配分されるということはなく、自分たちの主張を通すためにはそれこそ"働きかけ"をして、政治を動かしていかなければいけません。

 例えば日本には待機児童問題があります。政府の方針に対し、お父さんお母さんたちの中からは「幼児教育の無償化より、保育園の整備と全入化を優先すべきだ」という声が上がりました。署名運動を立ち上げる人たちも現れ、僕のところに相談があったので手伝っていたところ、思いのほか筆数が集まりました。そこで、「イクメン議連」にも名を連ねていた与党のある男性議員に聞いたところ、「政府の方針と違うから受け取れない」と言われてしまいました。しかし同じ党の女性議員が「それなら私が受け取ります」と言ってくれた上、文科省、厚労省、内閣府の官僚たちを議員会館に集め、お父さんお母さんたちと直接対話する場まで設けてくれたんです。そこでは文科省の人が「私たちは幼稚園担当だったので、そういう問題があるんですか」と驚き、終わった後も厚労省の人と意見交換していましたよ。

 その様子を見ていて、同じ悩みを抱えた人たちが声を挙げ、アクションして、政治家とつながり、政策立案のプロセスに関わっていくことが日本でも可能なんだと感じました。

 ただ、この場合のテーマは共感も得やすい公の利益の問題です。これが例えばIT企業やその業界団体だった場合、どこまでが公の利益で、どこまでが私の利益なのかという問題が出てきます。こ医療業界だろうが、土建業界でも同様です。たとえば先日の西日本豪雨でもは、地元の土建業界が弱くなっていたエリアでは応急処置をする業者さんが不足していたようです。そういうとき、土建業界が団結して行政と一緒に対処するのは悪いことだ、とは言い切れないでしょう。

 そんな風に考えていくと、陳情をする企業や業界団体の人たちや、それを受ける政治家を単純に責めることはできないのではないか。最初の話に戻れば、むしろ声を挙げ、制度を変えて何かを実現するためにアクションし、勝ち取った人たちだともいえるからです。非常に活躍している政治家の政治資金報告書を見てみれば、いろいろな業界とつながっていることがわかります。でも、それが本当におかしなことなのか?と言えば、そうでもないわけです。

■透明性と信頼性を担保し、市民とつながる政治家・行政の実現を

 僕はアメリカに留学したことでロビイングのイメージがガラッと変わりました。ワシントンDCに行くと、「あの人はあの業界の有名なロビイストだよ」というようなプロフェッショナルがたくさんいて、政治と業界をつないでいるのを見ました。しかもそれは"お前もワルよのう"というような世界ではなく、非常にドライな交渉事の世界でした。

 やはり行き着く先は、そうした交渉の過程を事後的にど検証できるよう、記録を残すことと、その情報を公開することです。加計学園の問題だって、公益性をきちんと検証できるだけの情報が共有されていれば、あんなにこじれることはなかったのではないでしょうか。「総理のお友達ではあるけれど、確かに素晴らしい。国家戦略特区、"第三の矢"にふさわしいね」なのか、それとも「やっぱり縁故だけでお金を突っ込んだだけじゃん」なのかが判断できたはず。つまり、日本におけるロビイングの弱さ、身内優遇的なネガティブイメージには、そんな背景があると思っています。

 また、日本では情報公開請求が新聞社やNPOなど、専門的な領域になっているのももったいない。先ほどロビイングの専門家が活躍しているという話をしましたが、アメリカでは同時に公文書の請求が簡単にできるようになっていて、その対象はメールのやり取りにまで及びます。僕がサンディエゴの原発について取材した時には、日本の三菱重工の担当者と地元の電力会社、管轄するエネルギー省の担当者の所属と名前が入ったメールを、自宅からネットで請求してプリントアウトできましたから。

 もちろん陳情も同様です。日本では地元の市議や県議を連れて東京の政党本部や議員会館に会いに行って...というのが盛んに行われている一方、一般の有権者がそこまでするのは難しい。省庁がパブリックコメントをネットでも募集していますが、これも投稿のハードルが高く、アリバイ作り・ガス抜きのような印象が拭えません。行政と直接対話ができる住民説明会だって、対話というよりは一方的な説明という性格が強いケースがほとんどでしょう。

 これもアメリカの事例になりますが、有権者が政府のサイトにスレを立てて、そこに同意の声が多く寄せられたものについては正式に答弁します、という方針を採りました。オバマ政権下での取り組みです。ユニークな事例では、「公共事業として宇宙開発に力を入れ、"デス・スター"を建造すべきだ」という意見に、『スター・ウォーズ』のファンを中心に、多数の賛同が集まってしまった。それでも政府は「時間的にも財政的に実現は厳しい」ということを論理的に説明した上で、「ただ、将来デス・スターを建造できる人を育てるため、教育分野への投資は増やします、フォースと共にあらんことを」というような回答をして喝采を浴びたわけです(笑)。

 自分たちにも政府を動かすことができるかもしれないという市民の意識と、みんなが賛同するような良い提案に対しては本気で回答しますよという行政の姿勢。結果として物事が実現しなくても、"聞いてくれている"という信頼が出てきますよね。さらに行政と住民との直接対話も、「パブリック・ミーティング」として、説明会ではない、侃々諤々の議論が広く行われています。日本でも行政機構と市民社会の接続がもっと強くなるよう、制度面の改革が進んでいくといいですよね。(16日、談)

■プロフィール

1977年生まれ。ジャーナリスト・キャスター。NPO法人「8bitNews」代表。立教大学卒業後の2001年、アナウンサーとしてNHK入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て2013 年4月、フリーに。現在、AbemaTV『AbemaPrime』などにレギュラー出演中