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2018年02月04日 10時25分 JST | 更新 2018年02月04日 10時25分 JST

「変化を好きな者はいない」 ― 生き残るためのカギ

いくつかの例を挙げながら、市場淘汰されないためのカギとなるトレンドを説明しました。

前回に続き、先に紹介したワールドマーケティングサミット東京2017から、富士フイルムホールディングス 代表取締役会長 CEO 古森 重隆 氏をはじめとするゲスト登壇者の講演前半をまとめます。

同サミットの設立者であるフィリップ・コトラー氏に賛辞を送られて登壇した古森氏は、「(自身は)営業出身。マーケティングで押さえているのは4P程度で、書籍を数多く読んだわけではない」とまず前置きし、コトラー氏と共鳴する経営理念および経営現場について語りました。

上瀧和子

古森氏は、1934年に銀を使った写真フイルム事業で創業した富士フイルムにおいて、カラーフイルムの世界需要がピークを迎えた2000年に社長に就任し、以後10年足らずで100分の1へと市場が縮小する中、アンゾフのマトリックスをもとに市場戦略を展開しV字回復を実現した取り組みを紹介しました。富士フイルムが1980年代から進めていた映像画像のデジタル化、デジタルカメラの開発、周辺事業の拡大によるデジタル変革を進める一方で、医薬品、化粧品、高機能材料などの新規分野への進出を加速。また、複合機などの事務機事業を持つグループ企業、富士ゼロックスを統合し、写真以外の事業強化を進めました。あわせて、希望者を対象に割り増し退職金を伴うリストラ、写真関連特約店の経営権買い上げや現像所、生産設備などのリストラにより、痛みを低減しながら構造改革を実施しました。

上瀧和子

ここで古森氏は改めて、企業としての目的を、「写真文化を守ること」「世の中が価値あると認める商品やサービス、技術力に基づく優れた製品を提供すること」、そしてゴールを、「変化を先回りし、次の世の中のために投資し、発展し続ける企業」と定義しました。

そして、「自身は経営者として舵取りをしただけ、実際に実務をやったのは社員」と述べ、経営者の任務を、「3年先、5年先と経済や経営の環境を読み取る。全部に目を光らせ、変な兆候、匂いがあったら気づく」「リーダーとしての哲学と大局観を持つ。左脳のロジック、右脳のロマンをもって有事には全身全力で正しい方向性を示す」「社員ひとりひとりに明確なメッセージを発信する」と述べ、猛烈なスピード、ダイナミックさ、優先順位付けにより戦い抜く強烈な意思を示しました。

■変化は必ず最初に機能停止をもたらす

Tribeca Flashpoint Collegeなどの起業スクール運営ほか起業支援事業を行う米1871社 CEOのハワード・トゥルマン氏は、「変化を好きな者はいない。変化は必ず最初に機能停止をもたらす」としながら、3Dプリンター、ドローン、複合現実などのテクノロジーにより新しいビジネスが生まれ、データ、注目(attention)、脈絡(context)などの価値が高まるトレンドを解説しました。そしてAmazon Hubの宅配ロッカー、Amazon Keyの不在時宅配などがもたらす消費における「時間」概念の変化、テキストからボイスへのメッセージの置換、「今」のニーズに応えるRight Nowエコノミーなどを例に挙げながら、市場淘汰されないためのカギとなるトレンドを説明しました。

上瀧和子

■マーケティングはサイエンスかアートか?

西ESADEビジネススクール教授でミュージシャンであるサルバドール・ロペス氏は、音楽とマーケティングを比較しイノベーションのために役立つ知見を述べました。先のコトラー氏がマーケティングにおける数値の重要性を述べたのに対し、ロペス氏は、ファンを突き動かすミュージシャンのマーケターとしての本質を解き、自らギターを弾きながら「マーケティングはサイエンスかアートか?」と質問を投げ、両方をかけ合わせハイブリッド化することが重要と提言。何を混ぜられるか、何か新しいことを作り出すのに他の誰とコラボできるか、先入観をマインドハックで破りどのルールを破れるか、どうやってファンをSNSなどで強くできるか、ファンのためにもっと何ができるか、AIで自分のブランドをもっと人らしくできるか、どうやってもっと仕事を楽しめるか、どうやって会社を通してもっと良い世界を作れるか、といった人間の本質に問いかけました。

上瀧和子

コウタキ考の転載です。