「心理検査」や「適正検査」と聞くと、占いみたいなイメージが浮かぶでしょうか。私自身は、そのような診断・検査系のものとは、なんとなく距離を置いていました。信頼できるかどうかよりも、何かしらの形で導き出される結果に対して、妙に影響されてしまうのではないかという不安があったからです。
その一方で、もしかしたら日本では「占い」の類いだと思われている心理検査や適性検査は、専門的な分野ではかなり活用されています。若者支援の分野でよく聞くのは「VRT」「WAIS」「GATB」あたりではないでしょうか。就活生は「SPI」が一番耳にするものかもしれません。
過去、若者の自立支援の分野ではこれら検査はほぼ実装されていないかったと思います。むしろ、経験や体験があり、それが少しずつひとと変化、成長させていく。そのような活動の中で仕事や自立を考えていくアプローチが一般的でした。
しかしながら、2000年代に入り、日本でも若者支援が本格的に政策として始まってくると、さまざまな専門性(専門資格)を持つ支援者が流入し、既存の若者支援の活動に変化が生まれてきます。時間と空間を共にする(寮型は24時間!)活動することで互いの理解を深めていく経験を根拠にした支援に、統計的根拠を重視する支援が組み合わさりました。
それでも、なかなか検査という支援手法が一般化しませんでした。現場スタッフから、検査とフィードバックに基いた支援について提案を受けたのが3,4年前。そして2015年より、J.P.Morgan社より協力をいただき、400名近い無業の若者に検査の受検機会を提供しています。
僕自身が驚いたのは、受検を示唆された若者の多くが受検を選び、受検後のアンケートを見てもポジティブなものが圧倒的に多くなってます。いまではほとんどの事業所で実装しておりますので、受けたい!ということであればぜひお問い合わせください。
そのような動きを見て、まさか経営者である僕自身がやったことがないなどとは口が裂けても言えません。言えませんので、やっぱり受けておこうと考え、検査関係を総括しているスタッフに(こっそり)依頼をして受験してきました。
選んだのはGATB(一般職業適性検査)です。学習効果が働いてしまうので、詳しいことはここで書けませんが、計算や言語能力、空間図形を見るような紙ベースのものから手先の器用さなどをみるため機材を使ったものもやりました。
いわゆる、学校のテストや受験ではありませんが、各単元ごと制限時間内に終わるどころか、半分もいかないままにタイムアウト、休憩する間もなく次の単元へ。ホッと一息つく暇もなく、気がつけば、あっという間に検査が終わります。驚くほどのスピード感です。
数日後にフィードバックの時間を取りました(1,2時間程度で結果は出るらしいのです)。そして結果の説明を受けるなかで思ったのが「その通り・・・」ということ。特に僕の場合は高いところとそうでないところの開きがそれなりにありました。
そうでない箇所について、スタッフから「地図読めますか」「反復動作得意ですか」「インプットした情報を瞬間的にアウトプットできますか」と、普段から苦手としている質問を優しくかけてもらいます。僕自身が「苦手」と自覚している部分が非常に多く、さすがに占いとは違うことがよくわかりました。
ご専門の方にはわかると思いますが、ざっくりと、僕のアウトプットの波形は大いに右肩下がりでした。プロ野球選手の投げる「落差の大きいカーブ」のイメージです。ただ波形と数値を見ると、誰かより低いのではないか。平均と比べて自分のスペックはどうか、と考えてしまいがちです。しかし、そこはフィードバックできる人間が説明し、言葉を紡ぎながら、その結果から何を考え得るのかを、事例を交えながら話してくれます。
おそらく、僕の思考や性格を知っているので、それに合わせたフィードバックをしてくれたと思うのですが、統計的・合理的なフィードバックで、納得度も高いものでした。検査とフィードバックだけではなく、若者支援のなかでも、自立支援に比重をおいていると、動的な活動が併設されますので、非常によい相乗効果が見込めるものと、これまでに受験した若者の言葉や結果から推測することができています。
もしかしたら、多くのひとが自らのキャリア・特性を考えるうえで、このような検査をしたことがないかもしれません。まさに僕のように。しかも、公的機関に限定すると、GATBなどの検査が受けられるところは数えるほどで2カ月待ちの状態でもあるそうです。
どれだけニーズがあるかは未知数でしたが、供給が少ないということで、私たちの各事業所ではいくつかの検査機会を提供しております。フィードバックについても丁寧にやらせていただきます。もしよろしければご活用ください。
(2016年2月12日「若者と社会をつなぐ支援NPO/ 育て上げネット理事長工藤啓のBlog」より転載)