シリーズ「日本には『大義なきイラク戦争』への総括がない」・・・①賛成・支持した政治家に安保を語る資格はあるか?!

イラク戦争。それは今や世界では「間違った戦争」と評価されています。しかし、この日本ではその総括すらない。

イラク戦争。それは今や世界では「間違った戦争」と評価されています。理由は簡単です。米国が戦争を正当化した事由、すなわち、イラクが大量破壊兵器を有しているという事実もなければ、テロ組織・アルカイダとイラクとの共謀関係もなかったからです。

しかし、この日本ではその総括すらない。総括もせず、特に、あの時、イラク戦争に賛成した、あるいは支持した政治家に「安全保障」を語る資格はないでしょう。そうした政治家は、当時の米国やイラク、アルカイダ等の動き、国連査察委員会の査察状況、国際法規への理解等々を踏まえた判断を完全に間違ったからです。政治家は「来し方」が厳しく問われなければなりません。

しかし、当事国のアメリカも当時、開戦を宣言したブッシュ政権下、国民全体が熱狂の渦の中にありました。当時、圧倒的なイラク戦争支持の中で、たった一人、勇気をもって反対した黒人女性下院議員は、世論から「非国民」という大批判、大合唱を受けたのです。

ただ、私は、米国という国は「振れすぎた振り子はまた元に戻る」国だと思っています。いわば「弾性変形」。変形してもまた元に戻る。そう、民主主義がまだ機能しているのです。その証拠に今、「イラク戦争は間違いだった」と総括したオバマ氏が大統領になっています。

英国もそうです。英国はブレア政権下、その米国と歩調を合わせた唯一の常任理事国でしたが、その後、何度もイラク戦争の正当性について検証が行われ、2010年に設置された政府から独立した調査委員会では、ブレア自身も証人喚問され、当時の法務長官も外務省の法務部門も「新たな国連決議がない武力行使は違法と考えていた」と証言する等、イラク戦争の合法性に重大な懸念が示されています。報告書は既にまとめられ、近々発表されるようです。

オランダも独立調査委員会が2010年に「イラク戦争は国際法違反だった」と結論づける報告書を公表しました。

しかし、この日本という国では、政府はおろか、公的な機関でも、全くイラク戦争の総括が行われていません。英国、オランダのような独立調査委員会など望むべくもないのです。残念ながら、「民主主義すら輸入」した国として、まだまだ、成熟した民主主義を持っていない、残念ながら、その一つの徴表だと認めざるを得ないのではないでしょうか。そう、日本は「塑性変形」。まだまだ「振れすぎた振り子は元には戻らない」のです。

しかし、この「安全保障」という問題が、安倍政権によって、国政のトップアジェンダとして掲げられたこの時に、あらためて、この国で、あの「イラク戦争の総括」をしておくことは、今後のこの国の行く末を考えておくために有益ではないでしょうか。

そこで当時、私が「小泉政治の正体」(PHP/2004年11月刊行)という本で、このイラク戦争に当初から私が反対し、その理由を国際情勢、国際法規両面から記述した部分を紹介することで、皆さんの議論を深める一助ともなれば幸いと考えました。来週から順次、この私のHP上にアップしていきたいと思いますのでよろしくご愛読ください。

(2015年10月5日「江田けんじ 今週の直言」より転載)

イラクでの戦争

注目記事