私は以前にも述べましたが、初当選(2002年)以来、企業団体献金は一切受け取っていません。企業や団体に高額なチケット(2万円/枚)を売りつけて政治資金を集めるパーティーも開催していません。
確かに、政治にお金はかかります。しかし、私の場合、個人献金と、そして、税金たる政党助成金(年間1000万円超)と文書通信交通滞在費(年間1200万円)で十分、その費用はまかなえているのです。
それでは、どうして、特に自民党の政治家は、企業団体献金や資金集めパーティーにこだわるのでしょうか?
実際、私が最初の選挙(2000年)に自民党から出て驚いたことは、選挙告示前の「事前運動」は法律で禁止されているはずなのに、そろそろ選挙があるのではないかと囁かれはじめると、町中に、大きな顔写真入りのポスターが貼りめぐらされることでした。右も左もわからなかった私も、最初の選挙の時、言われるがままに「事前ポスター」なるものを貼りました。
幸い、自民党から出れば、ポスターを張る場所はいくらでもあります。支援者には地主層が多いので、マンションやビルの壁、駐車場の柵、農家の軒先など、ポスターを貼るスペースに困ることはありません。法律では規制されない「事前ポスター」ですから枚数制限もない。結果、おびただしい数の枚数になり、その印刷代や紙代、貼る労力をアルバイトに頼めば、その人件費もバカにならないのです。
ちなみに、自民党を出てからの私は、この政治家個人の「事前ポスター」なるものを一切貼りません。お金がかかることもありますが、街の景観、環境を乱すことも甚だしいと考えたからです(ただし、最近は江田個人ではなく政党のポスターは、党全体や依頼された候補者のことを考えて貼るようにはしています)。
それから、後援会への入会案内書や、入会申込ハガキ付きの政策リーフレットも、何万枚も作らなければならない。政策や主張を織り込んだ政策ビラも何種類もつくる。そして、駅や街頭に立って、演説しながら配る。また、後援会への入会勧誘と称して、各家庭にポスティングや戸別配布することもある。
このリーフレットやビラの印刷代もバカになりません。お金のある政党候補の場合は、上質な紙に、きれいなカラー刷りの立派なものが多い。そうなら尚更お金がかかる。この点でも、自民党を出た後の私は、昔のガリ版刷りのような貧相な紙で、しかも自家印刷することでコストを安く抑えました。
こういう「事前運動」が、なかば常識として、公然と許されています。それでは、なぜ法律で禁止されているはずの事前ポスターやリーフレット、ビラの類が許されるのか。
例えば、ポスターの場合、その片隅に小さく「個人演説会の告知」と書かれているのがミソなのです。例えば、「江田けんじ個人演説会の開催、何年何月何日何時から、どこそこ」と書いてある。ポスターは、あくまでも演説会を告知するための広報媒体なのであって、決して、江田けんじ個人をPRする選挙活動ではないという位置づけにしているのです。
しかし考えてみると、でかでかと顔写真入りで「江田けんじ」と書き、演説会の文字は見えないところに申し訳ないように書いてあるだけ。誰が見ても、演説会の告知ではなく、江田けんじ個人の政治家をアピールするためのポスターでしょう。
まさに公職選挙法違反なのですから、選挙管理委員会も警察も、取り締まろうと思えば取り締まれる。しかし、与野党とも、全国各地で公然と「みんなで渡ればこわくない」をやっているのですから、やむを得ず放置しているのが実情なのです。何とまあ、政治家という人種は、こういった「脱法行為」を考えることにかけては天才的だと感心してしまいます。
通常、「選挙にお金がかかる」という場合は、これらの事前運動にかかるのです。選挙期間中は、法律で厳格に、ビラやハガキの枚数が制限され、ポスターも公営掲示板にしか貼れないので、昔ながらの供応接待や買収(もちろん選挙違反)でもやらない限り、実はあまりお金はかからないのです。
従って、私の結論は、この「事前運動」を、どういう名分であれ、法律の字義どおりに全面禁止すべきというものです。その代わり、選挙期間中(衆院選挙なら12日間)の運動を、「公営選挙」(自治体による公開討論会開催とその広報・報道等)や「インターネット選挙」の導入により充実させる。そうすることで、現職に対し、新人候補の不利も緩和させることができる。
住民にとっても、駅や街頭活動による騒音やポスター公害に、実際の選挙の一年以上も前から悩ませられることから解放されます。選挙期間中だけ我慢すれば良くなるのです(続く)。
(2016年2月15日「江田けんじ公式HP」より転載)
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