なぜ政治に金がかかるのか?・・・①企業団体献金禁止は細川内閣時に決着済み

結局、企業・団体からの献金が、何の規制もなく、個人の政治家に流れ込むという実態は少しも変わっていないのです。

甘利問題を受け、維新の党と民主党は共同で「企業団体献金(パーティー券の購入を含む)禁止法案」を、この国会に提出することとなりました。予算委員会でも散々、この問題を安倍首相に問いただしましたが、まったくやる気がありません。「民主主義にはコストがかかる」「企業・団体が政党に献金すること自体が不適切なものとは考えていない」等々と答弁するだけです。

しかし、白地で(一から)この問題を議論するならともかく、そうした議論はとうに決着済みなのです。「安倍さん、今更何を言うのですか!」というのが率直な私の思いです。これまで問題が起こるたびに「政治資金の透明化」ということでお茶を濁してきた自民党も、もうそろそろ観念したらどうでしょうか。こうした「政治とカネ」スキャンダルがいつまで経ってもなくならないのですから。

私が「とうに決着済み」と言うのは、本来は、細川政権の時に進めた政治改革の一環として、国民の税金を使って政党助成金制度を導入する代わりに、政治家個人への企業・団体献金は禁止することになっていたからです。政治資金規正法の附則にもそう規定されていました。しかし、小渕内閣で、「企業・団体献金は禁止」と称しながらも、それは政治家「個人」に対するものだけで、「政党」には可能ということにしたのです。

そうなると、政治家という人種は、「便法、脱法行為を考える天才」です。企業・団体献金が許される「政党」といえば、自民党本部、民主党本部などの政党本部だけなのかと思ったら「あにはからんや」、それまでなかった「政党支部」という組織が、「雨後の筍」のように作られたのです。

結局、政治家個人と一心同体ともいえる政党支部、たとえば自民党衆院神奈川八区支部という政党支部へなら、従前どおり、企業・団体献金ができることになった。支部長は、その選挙区から出ている政治家個人が務めるから、入ったお金は、その政治家個人の一存で自由に使える。

また、その企業・団体献金を受けた政党支部から、政治家個人の政治資金管理団体にも寄附できるから、結局、企業・団体からの献金が、何の規制もなく、個人の政治家に流れ込むという実態は少しも変わらないのです。

さらに、政治団体を通せば、政治家「個人」も実際上、企業・団体献金を受けられるということもあります。例えば、業界が「建設業政治連盟」「自動車整備政治連盟」といった政治団体をつくり、傘下の企業から集めたお金を、そこを通じて政治家個人に献金するのなら、それは合法なのです。まさに「形を変えた企業・団体献金」「マネーロンダリング」でしょう。もっとも、私は、既に述べたとおり、企業団体献金は政治信条として受けとってはいませんが。

こういう国民を欺くやり方、尻抜けの方法を平気で作っておきながら、一方で、税金で年間300億円を超える政党助成金も受け、完全な二重取りとなっているのです。これを国民との約束違反、裏切りと言わずして何と言いましょう。

しかし、「政治とカネ」スキャンダルが起こるたびに、「政治資金の透明化」が多少進むぐらいで、大山鳴動してネズミ一匹も出ず。これでは、いつまでたっても同じことの繰り返しです。企業献金には、補助金受給企業や赤字企業からの献金規制もありますが、元々調査能力もない政治家個人事務所が「知らずに受け取った」として返金する事例も跡をたちません。

やはり、抜け道の政党支部への企業・団体献金も全面禁止し、必要な政治資金は、個人献金と、税金たる政党助成金(年間1000万円前後)、文書通信交通滞在費(年間1200万円)、立法事務費(年間780万円)等でまかなうべきでしょう(続く)。

(2016年2月8日「江田けんじオフィシャルブログ」より転載)

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