リオセレステの滝
中米の小国、コスタリカ。
人口は490万人。面積は九州と四国を足したぐらいだ。
この小国が近年世界的に注目を集めている。
いくつかその理由を列挙してみたいと思う。
・2012年のイギリスの民間シンクタンクの調査で「世界で最も幸せに暮らせる場所」世界一に。
・電力の9割以上が自然エネルギー由来。今年に入って75日もの間、自然エネルギーだけで100%電力をまかなったとの発表も。
・「生物多様性ホットスポット」と言われ、地球上の生物種の5%近くが生息すると言われている。
・一時は過度な伐採によって国土面積の3割弱まで減った森林は5割まで回復し、もともとの7割まで戻る勢いだ。
・2021年までにカーボンニュートラルを目指している。
・民主主義が根付いていて、小学校の時から模擬選挙がある。
・1949年に憲法で軍隊を放棄することを決定。以来、軍隊を持たない平和国家である。
自然豊かで、幸せに、平和に暮らせる国コスタリカ。
なんて理想的な国家なのだろう?
行くしかない!と、ついに先月行ってきた。
中米の中でも比較的安全と聞いていたサンホセだが、歩いてみると、昼間にも関わらずホームレスらしき人に怒鳴られ追いかけられたり、何人も路上で寝ている人を見た。後で聴いたことによると、経済が悪い隣国から多くの移民が流入していることが治安悪化の一因になっているそうだ。初日はどちらかというと落胆して過ごしたというのが正直なところだ。
土日となる2日目、3日目は、せっかくなので地方を目指すことにした。
地熱発電所があるというアレナル火山とテノリオ火山を目指すことにした。
まず訪れたテノリオ火山は地球の心臓部のようだと思った。ジャングルから現れたのは世界一美しいとも言われるリオセレステの滝だった。上流に行くと、ところどころから青い川から温泉が湧きだしていてとても神秘的だった。
その後訪れたアレナル火山では、なんと川全体が温泉となっている場所を見つけ、何時間も浸かり、森の中で癒やされた。
アレナル火山の温泉で感じたのは深遠なる平和だった。豊かな自然の中で、人々が心満たされ、対立する要素が全くない状態。人が自然の中に生かされている感覚。とてもいい体験だった。無尽蔵に流れる温泉。このようなエネルギーを活かし、コスタリカはカーボンニュートラルを目指しているのだ。
サンホセに戻り目指したのは国連平和大学だ。
1980年に国連総会決議に基づいて設立された大学院で、国際法、人権、平和教育、メディアなどを学ぶことができる。世界50ヶ国近くから毎年150人ほどがあつまり、1年間平和を学ぶ。コーヒー農園を上った山の上にある、理想郷のような環境だった。国連平和大学をコスタリカに誘致したことも、コスタリカの平和国家ブランド作りに大いに貢献しているのだろう。
最終日はコスタリカ国会へ突撃訪問にチャレンジしてみた。
午前9時に国会のゲート前に行き、門番の女性に中に入りたいと無茶なことを言っていたら、彼女が当惑しているちょうどその時、真後ろに偶然コスタリカ政府の広報官が通りかかるという偶然!上手いこと自己紹介し、訪問が許可され、プライベートツアーをしてくださった。隅々まで案内していただいた挙句に、国会議長席にまで座らせていただいた。
何てオープンな国なんだろう!
聞けば国会傍聴には誰でも来れるし、あらゆる委員会の会議もガラス越しに傍聴出来るのだとか。
広報官にどうしても聞きたいことがあった。それは、コスタリカがなぜ軍隊を持たずに平和を維持出来ているのかということだった。案内してくれた広報官リカルド・ルイスさんは得意げにこう答えてくれた。
君たちは軍隊がない国のことを想像できないと言う。
私たちは、軍隊が存在する国のことを想像できないんだよ。
新鮮だったと言ったらいいのだろうか。
平和へのアプローチの出発点が違い過ぎて拍子抜けしてしまった。
その後の彼や、出会った人々からの話を総合すると、コスタリカは軍隊を持たずに平和を維持するために不断の努力をしているようだった。
かつてはオスカル・アリアス元大統領が中米の紛争を停戦調停してノーベル平和賞を受賞しているし、コスタリカは軍隊を持たないが、アメリカ大陸諸国間の防衛に関する相互支援条約である米州相互援助条約(リオ協定)に加盟している。この条約には17ヶ国が加盟している。日本が米国のみに頼っていることと対照的だ。
建前上、平和国家な日本。
軍隊を廃止し、本質的に平和な国家であるコスタリカ。
治安が悪化していることもあるし、理想郷とは言えないまでも、エコツーリズム、自然エネルギー、平和文化など、多くを学べるのではないだろうか。もっとコスタリカの事を学びたいと思った旅となった。