「血塗られた服」は着て欲しくない 映画『ザ・トゥルー・コスト』が伝える現実とは?

衣服がどこから来るかを深く考えたことはありませんでした。しかし、ブランドの裏側にいる人々やその現場について学び始めると、そこにあった現実は衝撃的なものでした。

バングラデシュの縫製工場で働く女性が訴えます。

「私たちの血で作ったものを 誰にも着て欲しありません」

衣服労働者で一児の母のシーマは早起きして工場に行き、朝から晩まで低賃金できつい労働をこなし、"安い"服を生産しています。彼女は子どものナディアには年に1~2回しか会えません。

ファッションブランドにとって低賃金のバングラデシュは魅力的で世界中のブランドがバングラデシュを拠点に衣服を生産しています。シーマのように厳しい環境で働く労働者は何百万人もいるといいます。

今から約2年半前の2013年4月24日、そのバングラデシュの首都ダッカで8階建ての商業ビルで縫製工場などが入居するラナ・プラザが崩壊し、1,100人以上が犠牲となりました。本来は工場ではなく商業施設として建設され建物で、基準を満たさない鉄筋やレンガが違法に設置された大型発電機などの振動に耐えられなかったと報告されています。

この世界最悪レベルの産業事故のニュースは世界中を駆け巡りましたが、映画『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』を後に制作することになるアンドリュー・モーガン監督の元にも届きました。

「アメリカで生まれ育った私は、自分の衣服がどこから来るかを深く考えたことは一度もありませんでした。しかし、ブランドの裏側にいる人々やその現場について学び始めると、そこにあった現実は衝撃的なものでした。ファッションは労働依存度がもっとも高い産業で、世界のもっとも貧しい多数の労働者たちが衣服の生産に従事しており、その多くが女性です。これらの女性の多くが最低限の生活賃金以下の賃金で、危険な労働環境で、基本的な人権さえない状況で働いています。また、こういった労働者の搾取の問題に加え、ファッション産業は石油産業に続いて、2番目に環境汚染の多い産業でもあります」

この問題の解決を見出すためにモーガン監督は映画『ザ・トゥルー・コスト』の制作を決意し、今年5月に公開され、CNN、WSJなどで取り上げられるなど、大きな話題になっています。

同じく5月にはカンヌ映画祭のマーケットで上映された時、『ザ・トゥルー・コスト』のエグゼクティブ・プロデューサーの一人で『英国王のスピーチ』で有名なコリン・ファースの妻、リヴィア・ファースは、アンドリュー・モーガン監督とインタビューを受け、このように語っています。

「私たちはとにかく早く消費することを良いことだと洗脳されているの。でも消費者としてどれだけ私たちがパワフルな存在かということを知る必要があるわ。何かを買うときに、私たちは実際には投票しているでしょう。もしファッションブランドが15年20年先まで利益を出していきたいなら彼らは環境への影響とか社会的な不正義について行動すべきね。ずっと悪くなり続けているわ」

― リヴィア・ファース

モーガン監督は特定の企業を批判するために作ったのではないと前置きしつつ以下のようにも語りました。

「服が安く手に入るからといって、こんなに消費するのは止めて、スローダウンしてはどうだろう?そうすることが経済的にも、倫理的にも、環境的にも上手くいくんだ」

「みんな着る服に愛着を持つべきなんだ。そして足るを知り、その服を着続ければいいのさ」

― アンドリュー・モーガン監督

華やかなファッション業界の裏側 知られざる真実とは?日本ではユナイテッドピープル配給にて11月14日(土)から渋谷アップリンク劇場や市民上映会にて公開します。

全国に作品を届けるためのクラウドファンディングも10月19日まで実施中です。どうぞご協力ください。

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