ガルトゥング博士の来日目的は真の「積極的平和」を基とした3つの提言をすることだった

戦後70年、安保法案が国会通過をしようとしている8月19日から8月22日の3泊4日の日程で、「積極的平和」の提唱者であり平和学の世界的権威であるヨハン・ガルトゥング博士来日ツアーを企画したものとして、伝えなければならないことがあります。

戦後70年、安保法案が国会通過をしようとしている8月19日から8月22日の3泊4日の日程で、「積極的平和」の提唱者であり平和学の世界的権威であるヨハン・ガルトゥング博士来日ツアーを企画したものとして、伝えなければならないことがあります。多くのメディアが私が来日前に書いた記事のタイトルに倣うように、ガルトゥング博士が安倍政権の「積極的平和主義」は「概念の盗用」だと発言したことを強調して報道していますが、彼の来日目的が「私が正しい」「本家だ」とわざわざヨーロッパから言いに来たのではないということを説明させてください。来日前に「盗用だ」とおっしゃたことは事実ですし、インタビュー等で実際に安倍政権の「積極的平和主義」は、軍事をベースとしており「私の提唱する積極的平和とは全く異なる考えだ。平和の要素が全くない」「誤用だ」とはっきりと明言されていたことも事実です。しかしこれを伝えることがガルトゥング博士の来日の主目的ではありませんでした。本当の来日目的は、本来の「積極的平和」の概念にもとづいた日本への提言をするためだったのです。

「なぜ私が世界中から招かれるかというと、それは私が何かに声高に反対する意見を持っているからではなく、提案を持っているからなんだ」

「日本には平和運動(Movement)がない。あるのは反応(Reaction)だけだ。憲法9条を安眠枕に寝続けている。起きて未来に向けてクリエイティブに何ができるのか右派左派を超えて考えねばならない」

「日本には何かに反対するムードで覆っている。政府が恐れるのは反対ではなく代替案を国民が出してくることだ」

このように語ったガルトゥング博士が提案する安保法案に替わる「積極的平和」に基づいた代替案は以下の3つでした。

1.北東アジア共同体を構築すること

中国、台湾、北朝鮮、韓国、極東ロシア、そして日本が公正で共感を持って参加する北東アジア共同体(NEAC)を構築すること。沖縄を特別県としてNEACの本部を置く。6ヶ国から始まった欧州共同体(EC)や東南アジア諸国連合(ASEAN)から学ぶことが出来る。米国との関係は、良好なままを保つこと。

2.専守防衛に徹すること

集団的自衛権ではなく専守防衛を提案する。敵地攻撃能力のある武器ではなく、防衛のために短距離な武器を所有する。沿岸を防衛するために、自衛隊だけではなく民兵にも役割を求める。スイスをモデルに日本が占領された場合にどのように市民が抵抗するかということも準備する。

例えば日中が抱えている尖閣諸島(中国名釣魚島)の解決方法としては、共同管理を提案する。日中がそれぞれ40%ずつの権益を分けあい、残りの20%をNEACか周辺の環境整備のために使う。中国の40%のうちの5%を台湾に渡してもいい。分け方はいろいろ考えられる。

3.憲法9条1項を世界のために

憲法9条1項を日本のためだけではなく世界に広げること。世界で最も好戦的な国はある調査によるとアメリカ、イスラエル、英国だが、彼らの憲法に日本の憲法9条1項を盛り込むように働きかける。日本はアメリカの従属国でなく、このような平和貢献の分野において世界のリーダーとなることができる。

8月19日の田原総一朗さんとの対談イベントには300名。8月21日の横浜市大さん橋ホールでの講演ワークショップには400名が詰めかけました。この2つのイベント以外には、数多くのプレスインタビューをこなし、安倍昭恵夫人との対談、鳩山元総理との面会などもありました。

ガルトゥング博士のニュートラルな姿勢には大いに学ばせていただいた。誰とでも対話したいと常に願っており、自分も話すし、相手の話をよく聞く。「対話」の出発点でしょう。安保法案は反対だが自民党の考えには「以外に思うかもしれないが」賛同していることも多くあるんだともおっしゃる。「あっちもこっちも区切りはない(no boundary)んだよ」と。 ガルトゥング博士からの学びやイベントレポートなど、後日また書こうと思います。

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