BLOG
2018年10月29日 11時51分 JST | 更新 2018年10月29日 11時54分 JST

「子供は7人いるけど結婚はしてないよ」 ある小さな島で、事実婚が多い理由ー

いろんなことをすっとばして「いきなり子供ができて、とりあえず一緒にいて家族になる」って感じでしょうか。

太平洋にある人口27万人の小さな国・バヌアツを知っていますか。日本ではまだまだ馴染みのない国です。私はその国のクリニックで保健師として2年間働きました。そこで出会った患者さんのストーリーは、日本の常識からはみ出るようなことばかりでした。でも、恋愛をして、結婚して、家族が出来て、という過程は国が違っても、根本は同じです。

全10回の連載で、バヌアツのディープな性事情を紹介しながら、そこから見える日本の性や生きることを皆さんと考えていきたいと思っています。

国が違えば言葉も文化も、恋愛模様も違います。

バヌアツ人はどんな恋愛をしているのか?

首都に住む若者たちの恋愛模様は、日本と大きく変わりません。出会いの場は、コミュニティ、学校、教会、ナイトクラブなどなど。でも、デートといっても遊びにいくような場所はないから、海、川、ブッシュ、お互いの家を行き来する、というのが定番のデートのスタイル。首都には旅行客向けのリゾートホテルもあるので、若いカップルがリゾートホテルのプールやビーチバーなどでデートをしているのを見かけることもあります。

そんなこんなで仲を深めていったら、「結婚」ということになるはずだけど、結婚にたどり着くまでには、長い道のりが存在します。

HuffPost Japan
教会での挙式の様子。1日に複数のカップルが同時に結婚式をしていました。

バヌアツはキリスト教の国なので、教会での挙式が基本。それにプラスして、出身の島の「カスタム(慣習)」に従う必要があるのです。夫妻の出身地域が違えば内容も方法も全く違います。基本的には、結婚は「男性が女の人を買う」という概念なので、男の人の出費が多くなる。

結婚に必要なものというと、、、女性の家に支払うお金、豚・鶏などの家畜、布、アイランドマット(木の葉で編んだマット)などなど。そして結婚式の開催費用、招待客に振舞うご飯の準備もあります。招待といっても親族の範囲はとても広いし、コミュニティ全体が家族みたいなものだから、相当な人数が結婚式には集まります。結婚式は1日で終わるところもあれば1週間も続くところもあるというから、大変ですね。笑

というわけで、結婚するにも大変な手間と時間とお金がかかるので、多くのバヌアツ人は「事実婚」の状態のままです。「子供は7人いるけど結婚はしてないよ」と、とある患者さんに聞いた時は驚いたものです。

教会での式が終わるとひたすらダンスをする時間。新郎新婦も御揃いのアイランドシャツとドレスを着て参加します。

きっと日本だったら「プロポーズして結婚して子供ができて」って手順が王道でしょうけど、バヌアツはいろんなことをすっとばして「いきなり子供ができて、とりあえず一緒にいて家族になる」って感じでしょうか。途中で相性が合わなければさようなら。父親違い、腹違いの兄弟がいる、ということも良く耳にしました。

結婚をせず事実婚状態であるもう一つの理由としては、キリスト教では「離婚」はできないから(きちんと手続きをすれば可能のようですが)。クリニックに来たある女性は「子どもは1人だけいるよ。でも彼には他の女の人とも子どもがいるのよ。結婚するほど信頼出来ないから結婚はしない。今もその女の人のところに行って帰ってこないこともある」と、話してくれました。浮気されているのにも関わらず、まだ関係が続いていることに驚きでした。

そんなバヌアツ人男性の女性関係に私は驚愕しました。

病院の産科病棟で聞いた話では、、、

「同じ村で同じ日に子供を産んだ人がいるらしいのよ。で、どっちもシングルマザーなんだけど相手(父親)は同じ人だったんだって!なんとその男の人、同じタイミングで5人ぐらいの女の人と子供ができちゃったらしいよ。女の人たちはそれ知ってお互い殴り合いの喧嘩したんだって~。」とあるナースが話しているのを聞きました。

・・・唖然でした。

同じ男性が5人も!ってのと、喧嘩するのは女の人たちなのかい!って笑 男性はどうした!!!?

これはとても極端な例だし、真面目なカップルもたくさんいる。

あるカップルは「明日僕たち結婚するんです。これから子供のことも考えたいし、タイミング法とか避妊法とか教えて欲しい。」と2人揃ってクリニックにやってきました。カウンセリングの最後には「明日の結婚式、あなたも来てくれる?」と招待状までくれる仲睦まじい優しいカップルでした。結婚式で彼らの友人から聞いた話では「彼女たちは親に結婚を許してもらうまで5年くらいかかったんだよ」と。きっと良い夫婦、家族になるんだろうなぁとささやかな幸せを分けてもらいました。

友人の結婚式にて。衣装もデコレーションもすべて手作りです。

そんなこんなで、バヌアツ人もバヌアツスタイルで恋愛も結婚もしているのですが、性に関しておおらか過ぎるのが頭の痛いところ、、、

たくさんの女性患者さん達がクリニックに性感染症の治療で来ますが、「私のパートナーは旦那1人。でも旦那は信頼できない。きっと他にもパートナーがいる。じゃなきゃ、性感染症になるはずがない!」と話す人が多い、多い。

「コンドームは使わないの?」と聞くと、「相手の意向で使うことはない」との返答。そして彼らは何回も何回も性感染症にかかってクリニックにやってきます。

「そんな男たちなんて関係性を切ってしまえばいいのに、、、」と思うのですが、人口27万の小さい国、小さいコミュニティ。関係を終わらせるといっても完全に切ることは難しい。なぜなら、「女性は男性の所有物、男性が家族の長である」という考えが未だに強いので、DV被害が驚く程高いのです。国連が発表しているバヌアツのDVに関する統計では、生涯においてパートナーから身体的性的な暴力をふるわれた人は60%、過去12か月で身体的性的な暴力をパートナーからふるわれた人は40%とされています。

男性が女性に暴力をふるうということを、日本から来た私でさえ目にしたり耳にしたりすることが多く、目元が切れている患者さんが来たり、同僚の看護助手さんが目元にあざを作って出勤していたり、自宅の近所では罵声や叫び声、物の壊れる音が聞こえたり、妊婦さんが腹部をけられて流産、最悪のケースではDVが原因で亡くなった方もいる、という事もありました。

性に関する話をするときは、男女で場所を分けます。公の場で性のトピックを話すのはまだまだハードルが高いことです。

「恋愛をする」というのはどこの国でも同じ事ですが、価値観や文化の違いで恋愛模様は全く違います。でも、「恋バナと下ネタ」は絶対に盛り上がる鉄板ネタ!彼らとそんな話をして共に時間過ごしていると、お互いの心の距離感がグッと近くなる気がします。まずはそこを理解しないと、クリニックの患者さんのニーズや状況に合わせたカウンセリングが出来ないと感じました。

過去の記事はこちら↓

「小さな南の島のディープな性事情 2年間過ごして変わった価値観」

https://www.huffingtonpost.jp/koda-minami/sexual-issue-vanuatu_a_23567089/?fbclid=IwAR2LSlIrBMHO2f0mx1A41UATi3aVU02Y6SsZwr67-usQeK3ePJZ_ADj8nX8