若者よ、投票に行こう!自分の未来のために

オフィスへの通勤路となる秋葉原でいつも気になる日常風景がある。午前10時の開店を前に、毎日、何十人もの若者がパチスロ店の前に並んでいるのだ。

オフィスへの通勤路となる秋葉原でいつも気になる日常風景がある。午前10時の開店を前に、毎日、何十人、多い日には何百人もの20代から30代の若者がパチスロ店の前に並んでいるのだ。

時間が十分にある学生ならまだしも、その年齢をとうに超えている30歳前後の男性の姿も目立つ。きっとパチンコやスロットを打つことを仕事にしている人が多いのだろう。

確かに今の時代に限らず、昔からパチプロはいた。ただ、昔と違ってパチスロ店やパチンコ店で見かける世代がずいぶん若返っている印象がある。全国のパチンコ業者や遊技機メーカーなどが加盟する「日本遊技関連事業協会(日遊協)」の広報担当者によると、「スロットは若い人が多い。パチンコは年配者が多い」という。

バブル時代の末期に大人になった私にしてみれば、毎日パチスロ店に朝早くから並んでいる彼ら若者の姿を見て思うことは多々ある。時間や目標に縛られることなく、日々、自由に生きることが彼らの幸せなのか。あるいは、バブルなど潤った時代を感じたことなく、ずっと我慢辛抱することを体で覚えているために現実逃避しているのか。はたまた、不安定な仕事のため、実家の親に甘えてパラサイト生活はしていないのか。内心は不安を抱えて、スロットをしていないのか。

埋もれた才能を無駄にせず、早めに開花させ、このうちの一人でも、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグのような若者が出てきて、日本社会を引っ張ってくれればいいのに、と40半ば過ぎのおじさんは思ってしまう。彼ら自身の未来のためにも。。。

衆院選が12月2日に公示された。自民、公明の与党は、金融緩和や財政出動、成長戦略で景気回復につなげるアベノミクスの継続を訴えている。アベノミクスは確かに金融市場での人々の期待感を高め、株価を倍増させた。人やモノ、カネの流れを、ナマコのように、長らくじっとさせていた「デフレマインド」から「インフレマインド」に変えた。

あえて安倍首相の立場をおもんぱかれば、首相も歯ぎしりをしたい気分だと思う。バブル崩壊後の「失われた20年」から日本経済を浮上させることは誰しも容易ではない。たったの1年や2年ではできない。少なくとも5年以上は成果が出てくるのには必要と思われるが、国民やメディアは短期間での果実を求めてきている。そして、かりにアメリカのオバマ大統領のように、景気を回復させたとしても、支持率が上がるとは限らない。

野党は、アベノミクスの雇用や所得への波及がついていっていないことを責めている。非正規雇用の割合がすでに40%に達し、非正規労働者の待遇改善が必要だと指摘したり、アベノミクスがもたらした物価高による生活苦を訴えたりしている。

ここに興味深い数字がある。週刊エコノミスト(2014年12月9日号)によると、パートやアルバイト、契約社員、派遣などの非正規雇用者は1982年から2012年までの過去30年間、670万人(16.9%)から2043万人(38.2%)になって、1400万人近く増えた。これは数字の上では、この30年間に増えた仕事が全て非正規雇用であったことを意味し、その大多数がワーキングプアでもある、という。また、かつては若者の非正規比率は1割台に過ぎなかったが、今では若者の2人に1人は非正規である、と述べられている。日本が格差社会に突入するなか、大卒のワーキングプアも着々と増えている。

今のままでは若年層の暮らしが厳しくなるのは目にみえている。現在の国民負担率(税と社会保険料の合計が国民所得に占める割合)は約40%となっている。つまり、私たちが稼いだ所得のうち4割は自らの可処分所得(実際に使える手取り分のお金)にならない。このうえ、消費税がさらに上がると、可処分所得はさらに減少する。

日本はただでさえ、GDPの2倍以上にも及ぶ1000兆円を超える巨額の公的債務を抱え、財政が火の車。政治家は表立って議論しないが、年金支給年齢の引き上げもいずれ議論されるようになるだろう。

こうしたツケをもろに受けるのが、冒頭で紹介したような若い世代なのだ。ぜひ投票に行って、自らの未来のために意思表示をしてほしい。前回の2012年の衆議院選挙では20代の若者の投票率は38%と、全世代最低の投票率だった。

年配者の中には、自分の子や孫の(世代の)ことを本当に心配して、若者に投票して欲しいと思ってくれている人も多い。若い世代の声がもっと通る世の中になってほしいと願っている。今のままだと、若い世代に膨大な借金だけを残していってしまう。若者はもっと怒っていいはずだ。そうしないと、何も変わらない。

「投票したいと思う候補者が誰もいない」。よくこんな声を聞く。そんな時は、あなたが特に重視する政策(例えば、雇用でも医療でも教育でも原発再稼働でも)の中で、ベターだと思える候補者や政党にぜひ投票してほしい。それでも、どこにも入れたいと思われる人や政党がないのあれば、白票でもいいし、誰か歴史上の好きな政治家等の名前を書いて意思表示してほしい。

若者がちょっとしたきっかけで、投票に向かうのではないか、との兆しはある。ツイッターで、「低投票率の20~49歳の若年世代が1%投票を棄権すると、1人あたり年間約13万5000円の損となる」との日経新聞の記事を紹介したところ、瞬く間にリツィートが1万1000件を超えた。驚きだった。

若者負担を明示した、わかりやすいトピックで、わかりやすくすればソーシャルでもどんどん拡散されるということを実感している。あとは実際の投票行動に結び付けることだ。あなたの未来のためにも、若者よ、12月14日、投票に行こうではないか。

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