あけましておめでとうございます。キャリアカウンセラーの小橋です。
さて、去年よく聞かれた言葉に「人生100年時代」があります。
この言葉を聞いて、あなたはどう感じていますか?70歳まで働くなんて・・・とうんざりしているかもしれません。でも心のどこかで新しい働き方に期待する気持ちもありませんか?
今回は、人生100年時代に自分らしいキャリアを手にするためのツールを紹介したいと思います。
キャリア・アンカーが教える自分らしい働き方
人生100年時代と言われるようになり、「キャリアを振り返ろう」「自分を見直そう」という言葉をあちこちで目にするようになりました。
実際に「すぐ転職したいわけじゃないけど、今後どう働くか考えておきたい」という声もよく聞きます。
では、いったい何から始めればいいのでしょうか。
今回紹介したいのは、経営管理論や組織心理学が専門のエドガー・シャイン教授が提唱した3つの問いです。
1. 自分はなにが得意か
2. 自分はいったいなにをやりたいのか
3. どのようなことをやっている自分に意味や価値が感じられるのか
それぞれ、自分の「能力」「動機」「価値観」を探る問いです。きちんと考え始めると、しっくりくる答えにはなかなかたどり着けないのではないでしょうか。でもそれでいいのです。
シャインは、この問いを通じて自覚していく「これこそ自分らしい働き方だ」と思える自己イメージを「キャリア・アンカー(錨)」と名付け、より納得のいくキャリア選択をもたらす指針になると提唱しました。
自分を知ることは簡単ではないけれど、とても大切なこと
これからの生き方と働き方を語った本として、昨年話題となったリンダ・グラットン氏の「LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略-」では、無形資産の大切さや選択肢の多様化など新しい価値観が詳しく語られていますが、私の印象に残ったのは著者があることを繰り返し説いていたことです。
それは「自分を知ることの大切さ」です。
変化していくためにも、多くの選択肢を意味あるものにするためにも、自分がどのような人間か、なにを大切に生きているのかを知っておくことが重要だ、としています。
上記の3つの問いで見えてくるのは、「これこそが私」と認識している自分のこと。まさに自分への主観的な理解です。
日本のビジネス界では、能力の把握は推奨されても、自分の欲求や心理的傾向の理解は重要視されてこなかったと感じます。確かに右肩上がりの時代には、会社の価値観に従ってとにかく働くことが会社にも社員にも利益と安泰をもたらしてくれました。でもこの変化の大きい時代にはもうそれだけが正解ではなくなったのですよね。
そこで、リンダ・グラットン氏の言うとおり、自分を知ることを始めてみて欲しいと思います。
シャイン教授が指摘したシンプルな法則があります。誰でも、価値を感じ動機づけられているものごとはうまくできる、というものです。反対もあります。専門的な道を究めたい人は管理職の仕事の意義を見出せないでしょうし、安定した環境を好む人は挑戦的な仕事では実力を発揮できないでしょう。もちろん働いていればやりたいことばかりできるわけではありません。
ですが、自分を知ればまず進むべき方向が見えてきます。
他の人よりうまくできることで、自分自身も満足できることがきっとあるはずです。「自分はどんな人間で、どうキャリアを積みたいのか」という情報を上司と共有できれば、職場でも自律的なキャリア構築につなげることもできます。仕事ができると言われる人の多くはこの状態を作り出すことが上手です。キャリアプランを会社任せにできない今、自分を知ることは、自分らしく働くためにも成果を出すためにも必須のスキルなのです。
いいキャリアかどうか。それを決められるのは自分だけ
自分を知るという作業は慣れていないとどんどんできなくなっていくものです。いつか落ち着いたら考えよう・・・なんて思っていると、いつの間にか何がしたいのかわからなくなっているかもしれません。
特に長く働くほど、「外見上のキャリア」に目が向きがちです。外見上のキャリアとは、履歴書のような「何をやってきたか」という積み重ねのことです。
でもキャリアには「内面的なキャリア」という側面もあります。これはその時々の仕事生活にどんな意味があったかという主観的なイメージで、他人がどう見ているかとは別のものです。3つの問いは「内面的なキャリア」を知る手がかりにもなります。
育休中や時短中だったり仕事を辞めたりしたママは、現在の状況をキャリアダウンと感じているかもしれません。たしかに外見上のキャリアではそうかもしれませんね。でも、家族と過ごす時間を持ちたいという「動機」「価値観」に従って決断したことと思います。だからこそ、その動機や価値観も大切にしてください。
人は能力を活かすだけでは長期間満足して働くことはできません。動機を伴わない能力はしぼんでいくこともあるのです。家族との時間を無理に削って働いても、イライラするばかりでいい仕事はできなかったかもしれません。反対に、仕事と家族のどちらも大切にしたいと思ったからこそ、見えてきたものもたくさんあるのではないでしょうか?
確かに昇進しないかもしれないし、担当から外されるかもしれません。でも、大切にしたいものを大切にして、今できることを精いっぱいやっている。そんな今の日々が、今後数十年にわたってあなた個人の能力と可能性を広げてくれることと思います。
これから数十年の働き方を思うとき、外見上のキャリアしか振り返れないと今と同じような仕事のイメージしか沸いてきませんが、内面的なキャリアは能力と可能性を広げるエンジンになってくれます。
内面的なキャリアを自覚できれば、自分にとっての成功とは何か、満足いく働き方とは何かといった「自分らしい働き方」が見えてきます。
かつては、働き方に制約のあるワーママに「成功」などなかったのかもしれません。でもこれからは、自分自身が納得して「いいキャリアだった、私は成功した」と言える時代が来ます。
それは人生100年時代の新しい働き方とともにあるのだと思います。
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キャリアカウンセラー小橋の「越えていこうよ、ワーママもやもや期」
小橋友美
米国CCE, Inc認定
GCDF-Japan
キャリアカウンセラー
1979年香川県生まれ。お茶の水女子大学卒業後、信託銀行に10年勤務。
病気と結婚を機に退職し、キャリアカウンセラーとして活動を始める。
採用実務経験を活かした若年層向けの就職支援を行う一方で、ワーママ、プレワーママが抱える「働くことへの悩み」を共に解決したいと考え、
仕事も生活も楽しむためのキャリア支援活動を行っている。
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