小学生が「"原宿の街"を変えたい!」と区長に提言 全5日間の壮大なワークショップ密着ルポ【前編】

果たして、どんな5日間を迎えるのでしょうか?

以前、LAXICでは「この夏、小学生が"原宿の街"を動かす?! 大企業を退社し、1カ月で壮大なプロジェクトを立ち上げた3児の母」のインタビューにて、Social Kids Action Project(以下SKAP)を立ち上げた植野真由子さんにお話を伺いました。

SKAPとは小学生が主役になって地域の大人に聞き込みをし、街の課題を見つけ、解決策を提案するプロジェクト。民間・地域・行政がつながりあって、子どもたちの活動を全力でサポートし、5日もの時間をかけて各自1つのアイデアを導きだします。

今回の舞台は「原宿」。最終日には、原宿が位置する渋谷区の長谷部区長をはじめ、多くの企業や地域の大人たちへ「原宿をどんな街にしたいか」をテーマにプレゼンします。単に発表するだけでなく、アイデアの実現に向けて動き出すところまでを想定しているところがポイント。まさにビッグプロジェクトなのです。

同じ小学生の子を持つ母として、このプログラムでどう成長するのか、大人たちはどう応えるのか、最終的にはどんな提案をするのか......

アイデアへとたどり着く過程をこの目で見たい!という一心で潜入取材してまいりました。夏休み初日の7月下旬から5日間、渋谷区在住の小学4〜6年生まで総勢12名が原宿に集まりました。果たして、これからどんな5日間を迎えるのでしょうか?

Day1:緊張気味の子どもたちをゲームで一気に引き込む

初日、朝9時前に会場入りする子どもたち。各テーブル3名×4チームに分かれ、みんな初対面のお友達がほとんどなので緊張した面持ちです。

そんな中、放課後NPOアフタースクールのスタッフのリードで、早く集まった子どもたちからカードゲームを始めました。もう、こうなれば子どもたちは打ち解けるのが早く、あっという間にリラックスした雰囲気に。

「そろそろ始めるよ。おはようございます!」植野さんのかけ声でスタート、まずは自己紹介から。ここでは取材であろうとなんであろうとみんな参加者なので、大人も全員自己紹介します。

その後、メンバー同士で共通点探しゲーム。「好きなアニメは?」「好きな食べ物は?」など、たくさん質問しあって、共通点をたくさん見つけられたペアが勝ち...... と、盛り上がったところで本題に。

「Social Kids Action Projectってなんだろう?」植野さんがコンセプトを子ども達に説明します。子どもたちも一応、理解して参加しているものの、実際にはどんなことをするのか想像もつかない様子。そんな中、

ここでのルールは3つだけ。①アイデアを認め合おう! そしてマネしよう! ②当事者になろう! ③失敗を恐れずどんどんチャレンジしよう! ここでは◯も×もないよ、チャレンジすればみんな花マルだから、とにかく楽しんで参加してね!

この一言で安堵したのか、ワクワクした表情で期待を胸に膨らませていました。

「原宿を使う人ってどんな人?」「どんな街だったら嬉しい?」

引き続き、ゲーム形式は続きます。「じゃあ、原宿を使う人はどんな人かな? 1分間で書くよ!」と付箋に書いていきます。小学生、高齢者、海外の人、最先端の人...... 全員で100枚ほど書き上げました。

「次はそれぞれの人がどんな原宿だったら嬉しいか?」を別の付箋に書き出します。つまらない人がいない街、人混みがない、公園や自然がいっぱい......

なんと300近いアイデアが出ました。これらを壁に貼って、それぞれ照らし合わせていきます。もちろん、すぐにのってこられる子、まだ緊張してペンが進まない子、それぞれですが、みんな当事者として自分のペースでテーマと向き合っていました。

次は実際に原宿の街づくりに関わる地域や企業の方3名のゲストスピーチ。原宿表参道欅(けやき)会の松井理事長からは「表参道の歴史や欅並木の話、今抱えている問題」。東急不動産の関口さんからは「今まさに進んでいる再開発計画」。

最後にセコムの井内さんからは「安全・安心・快適・便利な街づくり」について、原宿の街になぞらえて紹介していました。どれも知っている原宿の知らない話ばかり、懸命にメモをとったり質問したりする姿がみられました。

午後は実際に原宿の街をお散歩します。いつもの欅並木も話を聞いてからだと違って見えます。セコムのシールも街中でたくさん見つけました。こんな風にして街を歩いたことがなかった小学生たち。最後に明日からのインタビューに向けて実践練習で、お互いインタビューし合います。

ただ質問を聞くだけでなく、答えに対してさらに深掘りするゲームも盛り上がりました。以上で濃密な初日はこれにて終了。いよいよ明日からは街に出てインタビューです!

Day2:原宿で「暮らす」人たちにインタビュー

2日目ともなれば、朝から打ち解けている様子。最初は「みんなお友達の名前を覚えてる?」それぞれのニックネームを呼び合います。今日は2グループに分かれて5軒の取材先を巡ります。郵便局に原宿警察、神宮前小学校にセコム、東京メトロ、和食店に保育園......

などそれぞれ20分お時間いただき、地域で暮らす人々にお話を伺うことに。出発前に各所での司会を決め、それぞれインタビューする内容をノートに書き出す準備も。

「まずは着いたら挨拶をしようね。その後はYes Noで答えられる質問よりも、話を膨らませる質問をしよう」とインタビューの基本をおさらいして、さぁ出発です!

私の同行させていただいたABグループはまず郵便局へ。みんな緊張した面持ちですが「おはようございます、SKAPの〇〇です。少しお時間良いですか?」まだまだ表情も雰囲気も硬い様子ですが、きちんと練習通り挨拶から始められています。2軒目は一枚板のカウンターの和食レストランへ。

こちらのオーナーはおじいさまの代から神宮前小学校という生粋の原宿人。「原宿で住みにくいところは?」など用意した質問が飛び交う中「お酒はどのぐらいありますか?」など、アドリブ質問も出るくらい、少しインタビューにも慣れて来た様子。

その後神宮前小学校 原宿警察 セコムへと聞き込みは続き、お仕事中にもかかわらず、皆さん真摯にご対応して下さいました。時には難しい質問や、普段考えていないことなども聞かれてタジタジの大人たち。蒸し暑い中、午前中のフィールドワークしっかり足で稼いで頑張りました。

聞いてきた内容を元に、アイデアを作成し各自発表

午後は午前中の振り返りをした後「原宿で暮らす人はどんな原宿にしたい?」をテーマに、A3サイズのシートにアイデアを作成します。今まで自分たちが考えもしなかった実際のなまの声を、みんな上手く拾い上げていました。

発表後、その発表の仕方やアイデアについてお互いに良かったところを付箋で書きフィードバックします。「アイデアが新しい!」「発表の仕方がわかりやすかった」など良かった意見をもらえます。次への自信になりますし、また友達の優れたところをマネすることが成長につながります。こうして2日目は終了し、3日目は「原宿を訪れる人」の視点でフィールドワークです。

Day3:原宿に「訪れる」人たちの声をヒアリング

3日目の冒頭。これまでの振り返りをしつつ植野さんからこんな衝撃的な言葉が。

今日からまた新しい、全く違うアイデアが欲しいから...... 昨日までのことは、一回すべて忘れて!

「え〜!」と子どもたちも驚きつつ、キラキラした表情に。こういった飽きさせない、ワクワクする気持ちが子どものやる気につながります。訪れる場所に合わせて質問も考え直し、グループでもシェアし合います。3日目ともなれば、随分打ち解けあって意見交換もスムーズに。

しかも今日は街ゆく人に声をかけるアポなしの街頭インタビューもあるので、少しシミュレーションしてフィールドワークへ出発です!

表参道ヒルズ、BEAMS、観光案内所...... と原宿を「訪れる」人の声を拾いに歩きます。昨日から比べるとインタビューの仕方も随分慣れてきて、取材中も相槌を打ったり「なるほど〜」と声が出たり、相手の話やすい聞き方ができていました

時には質問がうまく伝えられず困ったチームメイトを察知して、お互いをフォローし合う姿も見られたりするように。最後は"6%DOKIDOKI"という『THE 原宿Kawaii』の代名詞的なお店にも。小学生が普段行かないようなお店なので、キラキラした店内やスタッフに少し緊張しながらもヒアリングする姿が印象的でした。

原宿を街行く人に、突撃該当インタビュー!?

最後はいよいよ街頭インタビューです。自分たちが意見を聞いてみたい人や話を聞いてくれそうな人を探しますが、夏休みとあって人の往来も激しい原宿の交差点。ひと言目のタイミングが難しそうでしたが、この非日常的なドキドキ感もチームメイトとなら!と勇気を振り絞って、声をかけに行きました。

観光中の2人組で、率直な意見や自分たちが気づきもしなかった意見をもらえた様子。「あなたたち小学生? すごいね! 暑い中頑張ってね!」とエールをもらい、すっかり勢いづいて「もっといろんな人に話を聞いてみたい!」と時間を延長して、街頭インタビューをしていました。

「街ゆく人にも自分で交渉してインタビューできた!」という達成感もあって、報告する姿も自信たっぷりでした。

午後はフィールドワークを振り返りつつ、昨日と同様、原宿に訪れる人目線でアイデアを作成します。発表をした後もお互いのフィードバックを行い、3日目無事終了。4日目はいよいよビジョンの作成です。前回は大激論大会が行われたそうですが...... 今回はどうなるのでしょうか?

丸1日かけて濃密なプログラムを全力でこなす小学生に対して、決して子ども扱いすることなく本気で応えている大人たち。

お母さんに薦められて参加した子もいれば自分でチラシを見て応募した子など、参加動機は様々ですが、みんな当事者としてしっかりと「原宿」という街を捉えていたので、アイデアも思わず唸るものばかり

それに子どもらしい大胆な質問や、自由な発想があるのも良いですよね! 答えのない問題に対して回答を探る難しさと楽しさ、この両方を感じ始めているように思えました。

何よりも、街中でインタビューして回ることで、たくさんの大人と関わり、自分の言葉で取材することによって、大きな自信を得ていったのではないでしょうか? では後半では4日目と最後のプレゼン大会をレポートします。

ワーママを、楽しく。LAXIC

取材・文:飯田りえ

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