その夫婦ゲンカ、ロジカルに解決して、夫婦仲良く過ごしませんか?

最終的には、お二人が描く"理想の夫婦関係"に近づくお手伝いをしていきます。

初めまして。白土栄子と申します。皆さんは、『夫婦コーチング』という言葉を聞いた事があるでしょうか? 

夫婦コーチングとは、システム・コーチング(※)というメソッドを使って、夫婦の間にある目に見えない絆(パートナーシップ)に関わり、コミュニケーションの質を上げていくことを目的とするものです。

※システム・コーチング®とは?

コーチングの新しいアプローチとして生まれた「システム・コーチング®」。1対n(複数)の関係、2人以上のパートナーシップやチームをクライアントとするコーチング。

出会ったときから、二人の間には目には見えない絆(パートナーシップ)が生まれます。

この絆≒赤い糸、出会ったときには、周りが引くぐらいラブラブでも、放っておけば、時と共に絡まったり、びっくりするほど離れてしまったり、冷え切ったり...... 時には知らないうちに切れてしまうこともあります。

夫婦コーチングでは、夫婦の赤い糸(パートナーシップ)の現状を、問いかけや、五感を使ったワークで健康診断のように明らかにしていき、最終的には、お二人が描く"理想の夫婦関係"に近づくお手伝いをしていきます。

私はこの夫婦コーチングを通じて、多くのご夫婦に関わらせていただき、最近では、コーチングだけでなく、大学病院の産婦人科や行政機関での講演やワークショップでの機会提供も増えてきました。

この連載では、夫婦で育児や人生を豊かに楽しむコツについて、心理学やデータなどのサイエンスを交えてご紹介していきたいと思います。

職場もご近所付き合いも上手くできるのに

なぜか夫とは対立してしまう

さて、まずは、夫婦コーチングや講演会で頻繫に聞かれるお悩みをご紹介していきたいと思います。

  • クライアントからも職場からも信頼が厚く、コミュニケーション能力高いと評価されている。職場での問題にはそこそこ上手く対処もできる。しかし夫とは、なぜか揉めてしまう。
  • 真剣にお付き合いを始めたとき、あるいは結婚を決めたときは、「この人となら人生を歩んでいける」と思ったはずなのに、気が付けば、気に障ることばかり......
  • 本当は助け合ったり、穏やかに過ごしたいのに、ちょっと話すだけでついイライラが溜まってしまう......

などなど。

子育て中のご夫婦は、生活スタイルやリズムが変わることで余裕を失い、多かれ少なかれ、このような悩みを抱えがちですね。

巷に溢れるネット情報や、いくつかの書籍には、この「モヤモヤ」「イライラ」について、様々な対処が書かれています。

ママ向けには、「一人で過ごす時間を作ろう」、「パパに甘えよう」、「ベビーシッターを頼もう」、「家事代行を頼もう」といった育児や家事の負担を減らそうといったもの。

パパ向けには、「ホルモンバランスが乱れがちなので、ねぎらいの言葉をかけよう」とか、「労わろう」とか、「出来る家事(?)は、手伝おう(?)」、「パパが子どもと過ごす日を決めよう」といった、上から目線の「ママの育児・家事」を前提とした対処法も散見されます。

もちろん上記の観点も必要です。

しかし、残念なことに、これらは慢性的な偏頭痛にアスピリンを飲むようなもの......

ほとんどの場合、根本的に解消されないことがほとんどです。一時的にママが休める時間をとったり、パパが家事をしても、本質的なモヤモヤやイライラはなくならないのです。

この不満が続くと、「自分はこんなに努力をしているのに、相手は変わらないという」という不信感が募り、自分でも気づかないうちに、夫への愛情が消えてしまうことも少なくありません。

なぜなら、私たち人間は合理的なので、自分の努力に対し、相手の「変化」という報酬を得られないと判断し、仕事や育児、あるいは他の交友関係に対象を向け、無意識的にパートナーを自分の重要人物から外してしまうからです。

こうした状態が長く続くと、結果的に、パートナーとの些細ないざこざが致命傷となって、家庭内別居、最終的には離婚という選択につながってしまうことも......

「パートナーをまちがったんだ!」「嫌いになった相手といつまでも暮らすより、離れた方がお互い幸せよ!」という方もいますが、ここでも残念なお知らせがあります。

人生はいつでもやり直しがきく!はずなのですが、ある調査によると、結婚生活における問題の69%は永続的な問題とされ、これは結婚相手を変えたとしても、また別の同じような問題が引きおこると言われています。

つまり、私たちは誰と結婚しても、この69%のモヤモヤ、イライラからは逃れられないことになります。

夫婦間の勝手な期待と常識の違いが、夫婦ゲンカの根本原因

では、どうしたら、このモヤモヤやイライラを解消することができるのでしょうか。

なぜ、私達は、仕事や友人関係ではうまくコミュニケーションがとれるのに、夫とは揉めてしまうのでしょう?

喧嘩のたびに、私たちは思います。

「普通分かるでしょ?」

「そんなこと言ってないじゃない、勝手な解釈しないでよ」

「ちょっと、なんで、スマホ見てるのよ、まだ話は終わってない!」

喧嘩中、私たち妻は夫の言動が意味不明状態、まさになぜ、どーして?の連続になります。これは、夫も同じ。

それもそのはず、違う価値観を持って生きてきた二人の人生が重なっているのです。原因は、重く複雑です。

では、なぜ夫婦のコミュニケーションは難しいでしょうか、原因を考えてみましょう。

1、夫婦が互いに抱く、勝手な期待

夫婦になる瞬間、結婚を決めた瞬間は、どんなきっかけがあったとしても、幸福の絶頂期。お互いが理想の家庭生活を描き、「あんな風になりたい」「あんな風にはなりたくない」と、あれやこれやと夢を描きます。まさに幸せホルモンが魔法のように効いて、彼のちょっと自分勝手な所は、頼りがいがあるように感じるし、洗濯物や掃除ができないのも、自分を頼ってくれていると思うと嬉しく感じられます。とにかく何でもポジティブに受け取れるのがこの時期であり、同時に結婚生活への期待を高める時期です。

しかし、残念ながら、「相手の全部を受け入れられる(もしくは受け入れたい!)」状態には、寿命があります。なんと平均して2年! 通常の恋愛関係は、2年で終了すると言われているのです。

すると、なんでも相手がよく見えた恋愛感情は消え、"真の結婚生活"が始まるのです。ようこそ! 現実の世界へ!

勿論、長い交際期間を経て結婚する人もいますよね。付き合いが長くなれば、多少の欠点が見えてきますが、適齢期である、周囲のプレッシャーがかかるなど、恋愛以外の要素が入ってくると、私達の脳は今度は恋以外の要素で、その"欠点"を補おうとします。

「きっと、結婚すれば変わるだろう」

「きっと、子供が生まれたら変わるだろう」

「きっと、もう少し時間が経てば......」

きっと×いつかを繰り返し、相手と未来に"期待"をするのです。

悲しいかな、人は自分が決定した選択にこだわる傾向があります。

一度決めてしまうと、「自分の選択は正しい」と信じたいという心理が働くのです。

この結婚は正しい選択、だから、きっと相手はいつか変わるだろうと期待をします。

しかし、これが落とし穴!

恐ろしいことに、この「相手への無言の期待」は、ほぼ無意識に形成されていきます。

例えば、

子供が生まれたら、きっと彼はもう少し、残業や飲み会が減るのだろうという期待を妻が持っていたとします。

しかし、その期待を夫が理解していない、察していない場合、残業や飲み会の頻度は変わりません。多少変わったとしても、妻の「無言の期待」を理解したわけではなく、なんとなく妻の状況を察して、行動を変えてみた程度でしょう。

妻の期待は叶えられないわけですから、徐々に小さな不満が溜まっていきます。特に、赤ちゃんがまだ小さいときは、夫と生活リズムも合いにくくコミュニケーションの頻度も質も落ちがち。生活パターンや行動範囲が大きく変わる妻に対して、あまり変化のない夫に対し、いら立ちを感じやすい時期です。

何かのタイミングで、妻の不満が爆発し大喧嘩に発展、なんて話よく聞きますよね。

妻からすれば、どうして気がつかないの?と思うぐらいのタイミングで、いよいよ堪忍袋の緒が切れたということなのですが、残念ながら、夫にはこの爆発は、ほぼ予測不能です。まさに突然の襲撃です。パニックを起こし、一気に戦闘モード、あるいは防衛モードに入ります。

しかし、大抵この類の喧嘩は決着がつきません。赤ちゃんが泣きだして中断したり、夜も更け、お互いに疲れてしまいグダグダでおわり...... 朝になる。お互いに更にモヤモヤイライラが増えていくというバッドスパイラルに入っていくのです。

この勝手な期待は、夫婦ケンカを複雑化させている一因です。

2、皿洗いをめぐったケンカで起きていることは? 夫婦それぞれの"あたりまえ"は違う

「普通、そうじゃないですか?」「これって常識からしておかしいですよね?」

夫婦コーチング中、この言葉を何度聞いたことか(笑)

この仕事をする上で、私は"普通"と"常識"という言葉ほど定義がそろっておらず、恐ろしい言葉はないと思うようになりました。一言に"常識"と言っても、その人が生きてきた価値観や人生が濃厚に凝縮されています。夫婦喧嘩が大事(おおごと)になるのは、自分の人生といえる常識が攻撃されているからです。

例えば皿洗いについて、「普通はこうやって洗うんじゃない?」と軽く話したとしましょう。自分では何気なく言った言葉でも、相手の心の中では、要領の悪さ、あるいは自分の育った家庭環境について、否定されているような感覚が起きます。

そして、否定されたのはお皿の洗い方ではなく、自分自身だと感じてしまう、まさにアイデンティのピンチです。本来、リラックスしてエネルギーを充填したい場所、無防備でありたい家庭で、このようなピンチに遭遇したら・・・それはヒートアップしますよね。

通常、他の人間関係では、特にビジネスの場面では、ここまでのことは起きません。私たちは、他者と自分は違う人間だと理解していますし、もめごとが起きても、仕事や色々な価値観の人がいると割り切って、理性的に様々な対処ができます。

しかし家庭は究極のパーソナルスペース、無防備でありたい場所です。外での重圧から解放され、自分がありのままでいたい生活の基盤です。

この基盤を共にしている家族、特に自分の意思で選択した相手であればこそ、「ありのままの自分を受け入れて欲しい、理解して欲しい」と願ってしまうのです。(しかも、できれば努力なしで笑)。

たとえ、お皿がきれいに洗えなくても、そんな自分もただ受け入れて欲しいのです。

このように、人それぞれ異なる"常識"を家庭の中に持ち込むことが、夫婦ケンカの要因の一つです。

夫婦ゲンカを建設的に解決しませんか?

よく離婚の理由に、性格や価値観の不一致を挙げるご夫婦もいます。しかし、そもそも夫婦は違う人間であり、性格も価値観も違う、そもそも合わない存在です!(思い出してください! 相手は自分にない魅力があったはずです。だから惹かれ、恋をしたのです。)

私達は、そもそも価値観の異なる相手に惹かれ、恋をし、結婚相手として選んでいるにも関わらず、いつのまにか、相手に対してこうあって欲しいという"勝手な期待"と、 ありのままの自分の受け入れて欲しい、理解して欲しいという"勝手な期待"を抱き、結婚生活に突入していきます。

この前提を抜きにして、話しあうこともなく、不満をため込んだり、喧嘩を続けていくと、モヤモヤとイライラが積もり、次第に"諦め"に変わってきます。もし、今パートナーに不満を抱えているとしたら、

まずは、夫婦はいずれ分かり合えるという幻想を捨て、そもそも分かり合えない、価値観の合わない相手が夫婦となるのだということを前提に対話を始めることを、強くお勧めします!人生を無駄にしないためにも!

ちなみに、何もせずに、年月によって分かり合えるという可能性は低いと言えます。熟年離婚や計画離婚は年々増加傾向にあるのはこのためです。

セミナーや講演で、「相手に不満はあるけど、あの人は変わらないからあきらめています。私も毎日忙しいし、 夫より子供に時間をかけたい 」という声をよく耳にします。

適度な距離を、お互い干渉せずに生活を分かち合う、子供が成人するまでの我慢として生活を共にする...... それも一つの選択だと思います。 しかし、それは本当に二人で納得した人生でしょうか。

そこで、夫婦コーチングの登場です。

夫婦コーチングでは各自の抱く"勝手な期待や諦め"を、五感やワーク、時にはアセスメントを使って露わにし、"二人で合意した期待や未来へのチャレンジ"に変えていきます。夫婦で話すと感情的になりすぎて、我慢をしたり、本心でないことを口走ったりして、とんでもない大喧嘩に発展することがありますが、第三者である私達コーチが関わることで、"二人のより良い未来のために対話"をすることから軸をぶらさずに対話することが出来ます。

夫婦は近すぎて見えない。私達コーチは、二人のコミュニケーションや赤い糸が今どんな状態なのか、お二人に実感してもらえるよう、最善を尽くします。そうして客観的に自分たちを捉えることができれば、二人の期待である理想の未来が見えてくるのです。

夫婦コーチングは、離婚を前提に受けにこられる方もいますが、お互いの不満の背後にある期待を語り知りあうことで、再び愛情を取り戻していかれる場合も多くみられます。

夫婦は近すぎて、見えないものです。だからこそ、男女の違いなどの一般論で片付けず、自分たちの状態を知るための努力や、そのご夫婦なりのコミュニケーションが不可欠なのです。

だって、どうせなら、自分のパートナーを心から愛しく、信頼したいと思いませんか?

自分の事のように応援したい、もしくは応援してくれる人が、一緒にいてくれたら、人生がもっと楽に、楽しくなるように思いませんか?

その関係は、夫婦間での対話やコミュニケーションを通じて育んでいくことで手に入れられるものだとしたら、いかがでしょうか。

いつだって、お互いの意思さえあれば「夫婦の関係性」は築き直せます。

今後連載では、夫婦コーチングの具体的実践方法、日常で活用できるメソッドをご紹介していく予定です!ご期待ください。

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その夫婦ゲンカ、もっとサイエンスで解決しませんか?夫婦コーチング入門

白土 栄子

1976年生まれ 筑波大学卒業後、人材サービス関連企業に入社後、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所研究員を経て、コンサルタント・コーチとして独立。組織開発・人材育成を中心に大手企業~成長企業まで幅広く支援しながら、夫婦関係やパートナーシップ、家族のより良い関係性をテーマに活動中。

HP:http://tsunagu-company.itkk.jp/

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