【LAXIC学生編集部発】人生100年時代 自分でキャリアを創り、イニシアチブを握る意識を!

まだまだ会社員として働くことが一般的なキャリアとして描かれますが...

ラシク・インタビューvol.79

株式会社Waris 代表取締役 共同創業者 田中 美和さん

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大学生の時からライフイベントを踏まえた「100年時代」の働き方を考え、取材をする「LAXIC学生編集部」の発足に先立ち、今年、新入社員として社会人生活をスタートする私、安彦が女性としてのキャリアプランの立て方、そして将来の働き方について株式会社Waris共同代表 田中美和さんにお話をうかがってきました。

今後働き方が多様化していく中で、20代のうちに身につけておくべきスキルとは?

現在自分のキャリアについて悩んでいる学生の方、就職活動の真っ最中の方、そして私と同じく今年から新入社員としての生活をスタートさせている方、必読です!

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働く女性テーマにした雑誌編集経験は計7年

リアルな働く女性の声に触れた経験が、起業に繋がった

LAXIC学生編集部 安彦(以下、安彦):田中さんは「日経ウーマン」で長年雑誌の編集者をされていましたが、学生時代から「働く女性」というテーマに関心があったのですか?

田中美和さん(以下、敬称略。田中):日経ウーマンは学生の頃からたまに読んでいる雑誌だったので、就職活動中も携わりたい雑誌のひとつではありました。ただ働く女性というテーマについては、配属されて実際に働いてから関わるようになりましたね。

日経ウーマンは男女雇用機会均等法が施行された2年後の1988年に創刊された雑誌で、日本で働く女性にフォーカスした雑誌としては草分け的な存在です。その雑誌に新卒で配属されて合計7年携わったのですが、社長からマネージャー職、一般社員の方、またタレントや女優さんまであらゆるタイプの働く女性からお話を聞けたのは貴重な経験でした。

また、時には読者の方のご自宅にも伺って、これからのキャリアビジョンやお金のことなど、読者のリアルな声を取材しました。主に30代のOLの方が多かったのですが、等身大の声に触れた経験が今の会社を起業したことにも繋がっています

編集部:田中さんご自身が会社員時代に葛藤や苦悩を感じたことはありますか?

田中:雑誌の編集の仕事はとても好きだったのですが、この仕事が自分に向いているのかどうか何度も悩みました。もともと自分に自信があるタイプではないので、企画会議のときにおもしろい企画が出せずに落ち込んだり、もっと多様な観点から取材できたのでは?などと考えることもありました。今だからこそ言える結論としては、既にその役割や仕事が自分に与えられているのだから、向いているかどうかを先に悩まず、まずはその場でベストを尽くすことが大切だと思います。

編集部:学生の頃から、フリーランスになることや起業することは想像していましたか?

田中:学生時代は目の前のことに夢中になっていたので、全く考えていませんでした。当時はメディアに携わってアイディアを形にする、人の役に立つ雑誌を作りたいというのが自分の中で大きなゴールになっていました。メディア業界はフリーランスのライターさんやカメラマンさんが多い世界なので、仕事をする中でプロフェッショナルなフリーランスの方にたくさんお会いして、プロとして手に職をつけて働くのはかっこいいなと思うようになりましたね。

「女性のキャリア」というテーマに出会えた雑誌社時代

次は「直接課題を解決したい!」との思いから退社を決意

(株)Warisを3名で創業

編集部:東日本大震災がきっかけで、会社を辞めてフリーランスに転身したという記事を拝見しました。その時のことについて詳しくお伺いできますか?

田中:日経ウーマンの制作に携わることができて、とても嬉しかったというのがキャリアのはじまりなのですが、取材をする中で、日本の働く女性たちの多くが葛藤や不安、もやもやを抱えながら働いていることを目の当たりにしました。女性がこうした葛藤を抱えながら働かなければならない社会はおかしいなと思いましたし、課題を解決する仕事をしたいと思うようになりました

メディアはあくまで中立的に事実を伝えるのが仕事なので、課題の解決は直接的にはできないんですよね。私としては、新卒から約10年間ひとつの会社でメディアを通して女性を支援する仕事をしてきたけれど、次の10年、20年は直接課題を解決したいという思いから会社を辞めることを考えました。

会社を退職すると決断したきっかけとして東日本大震災は大きいです。私は東京にいたので直接被災したわけではありませんが、地震をきっかけに自分の人生について考え直しました。人生って当たり前のように明日も明後日も続いていくと思っていたけれど、そうじゃないんだなって。人生は本当に一度きりで有限だからこそ、本当にやりたいことをやって生きていきたいなと思うようになりました。

2011年の夏に、上司に会社を退職してフリーランスでやりたいとお話をしました。ただ、「直接課題を解決したい」という思いは強くありましたが、実際に何をやるかは決まっていませんでしたね。

編集部:会社員から、フリーランスへの転身に不安はありませんでしたか?

田中:もちろん不安はありましたよ。11年間、社会的にも経済的にも安定した会社で仕事をしていたので。ただ、東日本大震災を経て本当にやりたいことをやろうという思いが背中を推しましたね。

編集部:過去と現在を振り返ってみて、自分が変わったと思うこと、もしくは変わらないことはありますか?

田中:よく雑誌記者から会社経営への転身は珍しいと言われるのですが、自分の中では繋がっています。記者だった11年間は女性のキャリアや女性が生き生き働けるようなサポートがしたいというテーマに出会えた大切な期間で、そこで感じた課題を具体的に解決するための今があると思っているので、私の中では繋がりがあると思っています。今はビジネスという形を通して変革を起そうとしているのでアプローチが違うだけで、女性が生き生き働き続けることをサポートしたいという思いは変わっていません

安彦:自分のキャリアを考える上で一番大切にしていることはありますか?

田中:人との繋がりと、あとは自分の心に聞いてみることです。キャリアチェンジを考えるとき、もちろん不安はあると思うのですが「本当は何がしたいんだっけ?」と自分に問いかけてみるのが大切だと思います。

あとは周囲に自分のやりたいことを発信することです。今の仕事やキャリアで何をしたいのか、何を大切にしているのかを自分の中だけに留めておくだけでなく、リアルの場で人に話したり、SNSで発信することが大事です。伝えると人が出会いを連れてきてくれるんです。これは正直、会社員のときはあまり感じませんでしたが、フリーランスになってみて多様な方と会って、信頼関係を築く事の大切さを感じました。

キャリアにブランクがある人はもっと増える

生100年を見据えた、多様な生き方・働き方を実現したい

編集部:今後のビジョンを教えてください。

田中:2013年に株式会社Warisを起業したのですが、今は多様な生き方、働き方を実現したいです。

今、会社でやっている事業を少し説明させていただくと、大きく分けて二つあります。まず一つは女性プロマッチング事業です。色々な専門やスキルをもっているプロフェッショナルな女性と企業様をフリーランスという形でマッチングしています。まだまだ会社員として働くことが一般的なキャリアとして描かれますが、今は自分のスキルを活かしてフリーランスとして働きたい女性が増えています。そういった女性に対してお仕事を紹介するサービスを運営しています。

二つめに、多様な働き方の実現として、企業へのコンサルティング事業を行い、女性登用にあたっての仕組みや研修をご提供しています。

また、今新たに取り組んでいる事業として「キャリアママインターン」があります。すでに会社を辞め数年のブランクがある方に向けて、企業の第一線で働く機会をご提供したいという想いから、学生のように一定期間インターンとして働いていただいて、企業様からオファーがあれば正社員として採用していていただくという内容です。

例えば大手の広告会社やメーカーでキャリアを積んできた女性の方でも、一度会社を辞めてしまってから長いブランクがあると、派遣会社ですら登録が難しくなってしまうのが現状です。でも実は、企業の方もそういう女性たちと出会う機会がないだけなんですよね。そこで、インターンという形でお引き合わせして、その後採用していただくルートを作っています。

今後、一時期キャリアにブランクができる方はもっと増えると思っています。男性でも数年は介護に専念しなければならなかったり、大学院や海外で学びたいという人も増えるのではないでしょうか。「LIFE SHIFT」の著者 リンダ・グラットンさんも言うように、これからは人生100年の時代であり70・80代まで働くとなると、仕事をストップしなければならないブランクも出てくると思うのですが、ブランクのある人がキャリアのメインストリームから排除されるのは建設的ではないですよね。

今後、もっと多様な生き方、働き方が容認される社会を作っていきたい、と思っています。

編集部:Warisには女性の会員さんが多くいらっしゃると思いますが、仕事と家庭を両立している女性の共通点はありますか?

田中:Warisのユーザーの7〜8割がママさんなのですが、自分の軸が明確な方がうまく両立されている印象がありますね。例えば「自分は家族とこういう時間を過ごしたい」「1週間のうちこのくらい子どもと一緒にいたいから、仕事は何時に終える」など自分のありたい姿とそれによる優先順位が明確な方の満足度が高いと思います。

仕事も育児も受け身になってしまっている方は、なんで私ばっかり...... というジレンマを抱えてしまうことが多いのではないでしょうか。

編集部:Warisのご登録者のようにプロフェッショナルなスキルを持つ女性たちは増えていると思うのですが、その後自由な働き方をするためにはどのようなことを心掛けるべきですか?

田中:私自身、最近フリーランスになりたい方が増えてると感じています。新卒で就職する会社で定年まで働くという意識も薄れているのではないでしょうか。フリーランスとして働くためには、ある程度の専門性とスキルが必須になってきます。要するに「あなたは何屋さんですか?」という質問に答えられることが求められます。私たちの多くの利用者の方も、会社員時代の経験がベースとなってフリーランスの仕事が成り立っています。

まずは配属された部署で、20代のうちにどういう経験をしたいかを意識するのが大切で、10年くらいはその職種での経験が必要です。フリーランスとして企画・戦略立案(全体の企画戦略づくり)から実行(実際にローンチさせる)という一連の流れを経験してるのってすごく大事なんです。

例えば採用の実務しかしていないとか、広報で実際にリリースは出しているけど全体の広報戦略をしていない場合だと、そうしても小さい単位のお仕事になってしまい、報酬とも紐づいてきます。自分が中心となる業務で、実務から戦略立案までの一連の流れを10年くらいで経験して「私はこれが得意です」と言えるものがあるとよいですね

また、キャリアは掛け合わせなので、例えばマーケティング×WEBだったり、ToC向けが得意、20代30代の女性向けのWEBの立ち上げ経験が豊富などの強みがあれば、よりその人の特徴が出てきます。

若い人は会社が全てを与えてくれると考えがちですが、そうではなくて「自分が自分のキャリアを作っていく」「自分がキャリアのイニシアチブを取っていくんだ」という意識が大切です。30代でフリーランスになりたいのであれば、20代のうちに自分の得意分野といえる仕事を作りましょう

例えば、マーケティングでフリーランスを目指すのであれば最初の配属が営業だったとしてもマーケティングをやりたいという発信を行うことが大切です。ぜひ人事面談などのチャンスを活かして、自分のなりたい姿を積極的に発信していきましょう。

編集部:将来のキャリアについて考えている学生に向けて、最後にメッセージをお願いします!

田中:今私たちが関わっている人材業界や働き方を考える人たちの中ではリンダ・グラットさんの「LIFE SHIFT」が話題になっているので、ぜひ読んでみてください。現在、日本人女性の平均寿命は86歳です。今後の医療の発展を見込めば、100歳生きられる時代になります。そうなると60歳で引退して、残りの40年間を貯蓄と年金だけで生活するのは厳しいですよね。もう自分たちの親のキャリアプランは通用しないので、70、80歳まで働くことを大前提としてキャリアを考える必要があります。

例えば新卒で数年働いてからすぐに辞めてしまい、その後ずっと旦那さんの収入だけに頼り、自分は無職というのは、人生の豊かさ的にも経済的にも不安定性があり厳しいです。一時期仕事を辞めたとしても戻ってくるように経験値を積んだり、仕事のボリューム感を調整して、その時々に合った雇用形態を選択しながらキャリアを形成するのがいいのではないかと思います。

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私自身、結婚や出産などの大きなライフイベント後に自分がどのように働いていくのか想像できずにいたのですが、20代のうちに自分の得意分野をつくることで将来の働き方の選択肢が増えるというお話が印象的でした。4月から社会人生活がスタートしましたが、ライフステージに合わせて自分でキャリアを創っていく意識を忘れずに働いていきたいです。

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【田中 美和さん プロフィール】

米国CCE,Inc.認定GCDF-Japan キャリアカウンセラー。国家資格キャリアコンサルタント。1978年生まれ。日経ホーム出版社・日経BP社で約11年にわたり編集記者を経験。主に働く女性向け情報誌「日経ウーマン」を担当。これまで取材・調査を通じて接してきた働く女性の声はのべ3万人以上。女性が自分らしく前向きに働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年株式会社Waris共同設立。女性プロ人材とプロジェクト型ワークとのマッチングや、女性活躍・ダイバーシティ推進についてのコンサルティングなど多様な生き方働き方を推進。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事。

文・インタビュー:安彦 海咲

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