一日1時間の家事でイクメン? 「育休は取らない」平成生まれ男子に思う、イクメン神話

育児や家事をやるのは、当然だと思っているようです。

内閣府が発表した「歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児関連時間」を見て驚きました。

夫が、家事育児に費やしている時間の平均は一日当たり67、そのうち育児に関わるものは一日当たり39です。

グラフを見ると先進国中では最低の水準であることがわかりますね。「夫が家事や育児に参加している時間」は本当に少ないのだと、人目でわかります。

でも実を言うと、このデータ以上に衝撃を受けた出来事が私の身に起こりました。

一日1時間の家事でイクメン?

「イクメン」という言葉は、今では誰もが当たり前のように使う言葉です。でも、現実はどうでしょう。内閣府が発表したデータを見て「数字は正直だな」と

私は思いました。もちろん平均値ですから、当然もっと協力的なパパがいることはわかっています。

あなたの夫は平日会社から帰ってきて「1時間」程度、家事をしていますか? 子どもとお風呂にはいる、だけでも30分くらいにはなりますね。それで夕飯の後片付けか、洗濯物を片付ける程度をしてくれれば、家事1時間とみなせるところでしょうか。

......と、イクメンについてアレコレ考えていた私ですが、実は先日ちょっとしたことで長男とあやうく口論になりかけました。我が家は年の差兄弟を育てており、長男は既に社会人。下の子が塾でいない間の夕飯で、「男性の育休」の話題になったときのことです。

「育休は取らない」という平成元年生まれの長男

長男はいわゆる一応は大手といわれる会社に就職しています。そんな彼があっさりと「男にも育休の制度があるのはみんな知ってるよ、でも誰も取ってない」と言い、「取れるわけないじゃん、だって誰かが取ったら、誰かがその分の仕事をやらなきゃならないんだよ。そりゃ、子どもが生まれる時に立ち会うとかさ、それならいいよ、でも育休を1ヶ月取るって言って、オレがその分、その人の仕事をやらなくちゃならないのは無理」と、こう言ったのです。

私は驚きつつ、「風土」「カルチャー」という言葉を改めて思いました。

確かに大変でしょう。会社から、ひとりの働き盛りの人が育休を取る。その間、その人の分は誰かが働かなければなりません。1ヶ月等、短期の育休場合、新たに人を補充するのもなかなか難しいのでしょう。

私はライターとしての立場で、「なぜ男性の育休は浸透しないのか」と散々考えてきました。ですが、このとき初めて母としての立場で「我が息子が誰かに代わって毎日残業し、仕事をする」と考えると、「所属部署は人が少ないと言っていたし、ひとり抜ければその分仕事が増えて負担も増える。それは大変だし、可哀想だなあ」と思ってしまったのです。

と、同時に「違う違う!」と反対している自分がいました。若い長男が「育休をとる誰か」の代わりを担い、やがて息子が結婚をし子どもを持つ時に、次に若い子が同じようにやればいいじゃないか。あるいは余力のある大手企業なのだから、そこに人員を増やすよう進言し、男性も育休を取りやすい環境へと変えようとするべきなんだよ! と、あわてて反論しました。

でも長男は言いました。

「会社に言うの? 言えるわけないじゃん。誰も取ったことないのにさ。取る必要もないのにさ。そんな事言い出して、みんなになんだアイツみたいに思われたら仕事だってやりづらくなる。そこまでして育休取ろうなんてオレは思わないけど」

「もし1ヶ月もオレが休んだら、絶対誰かに迷惑かけるんだよ。結婚して共働きして、子どもが出来たら家事や育児は絶対に手伝うよ、でも育休取ろうなんて思わないよ」

「だいたい育休は彼女が取るもんでしょ」

このひと言を当然として言い放つ息子に対して、反論する気が失せました。

育児や家事をやるのは、当然だと思っているようです。昭和な我が夫は家事なんぞ、何ひとつやりませんから、それから考えれば進歩しているのでしょうか。

でも、私の長男は「育休の制度はあっても取れない、取らない、取ったら他のみんなに悪いから」と言う。育休は女性が取るものだと思っているのです。

働く母として、息子に教えられることは?

長男の発言を聞いてから、私にはどうも「イクメン」という言葉だけがひとり歩きしているように思えてしまいました。若く、元気で、働く母を見て育った平成元年生まれの長男にして、まだ、男性の育休は現実的ではないのです。それが、ごくごく小さな工場や超零細企業ではなく、名の通った会社でも、です。

「奥さんも働くのが普通だと思う」とまでは思っていて「だから、そりゃ、家事とか育児とか一緒にやるよ」とは思っている平成生まれの社会人たち。だけど、男性の育休は「取れるわけないじゃん」だけでなく、「取るのはよくないと思う、だって周りのみんなに迷惑かけるでしょ」そう思わせる企業風土の根強さに、複雑な気持ちになりました。

同調圧力とでも言うべきなのでしょうか、「育休取ったら、周囲の同僚に迷惑をかけるからやらない」と自ら思ってしまう雰囲気が今もまだ、当たり前のようにあるんだなあとしみじみ思いました。でも、実際に男性が育休をとって、周囲に負担なく、これまで通りに仕事を回していくのって、実際には難しいのも事実なんだ、と思うところもありました......

長男には彼女がいます。大変優秀なキャリアを持つ女性です。でも、長男と結婚したら、彼女はそのキャリアをどう私の息子と分かち合うのでしょう。私の息子は、育休は取れず、取らず、取りたいと思わず、取ろうとはせず、でも「共働き」というライフスタイルを選択するはず。

私は、息子の世代にイクメンの未来を期待していました。だけど、この道はまだまだ遠いのでしょうか。働く母が見せてきた姿も、日本が持つ男女の働き方スタイルに、結局、それほど大きな影響を与えることはできないのでしょうか。

それでも、私はやはり働く母の姿を、これからも見せていくしかありません。あるいは結婚をしたら彼女自身が長男の意識を変えてくれるかもしれない。企業が変えようとしないのなら、雰囲気に染まってしまうのではなく「あれ、ちょっと違うんじゃん?」とせめて疑問を持ってほしい。

何も食卓で、長男と育休について議論するつもりはなく、私は途中で黙ってしまい、そのまま野球の話になっていました。あの時、男性が育休をとることについて、私自身の経験や気持ちをきちんと伝えることが、「イクメン」を育てるということだったのかも...... ちょっと今、後悔しているところです。

【ライター 大橋 礼】

年の差15歳兄弟の母。DTP会社勤務後、フリーで恋愛・料理・育児コンテンツを執筆中。今や社会人長男のママ仲間とは「姑と呼ばれる日」に戦々恐々しつつ、次男の小学校では若いママ友とPTAも参戦中。飲めば壮快・読めばご機嫌! 本とお酒があればよし。

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