卵子凍結を考えている方に知っておいてもらいたいこと 後半②~卵子凍結の過程で注意しておきたいこと~

卵子凍結を行うには手術が必要です。そのことをまず頭に入れておいてください。

先日、未婚女性の卵子凍結についての記事を書きましたが、今回は、卵子凍結の過程についてお話ししたいと思います。一般的な方法を各ステップでご紹介していますが、あくまで知っておいて頂きたいことであり、推奨しているわけではありません。

まず、卵子凍結を行うには手術が必要です。卵巣に針を刺して卵巣内の卵胞から卵子を採取する方法です。ちなみに、取り出した卵子に精子を振りかけて受精させる方法が体外受精、卵子に針を刺して精子を直接入れる方法は、顕微授精になります。これらは生殖補助医療※と言われています。

STEP1 インフォームドコンセント

まず、手術に必要な術前検査(感染症や貧血、血液型など)を行い、十分に説明を受けた上で同意書を提出します。前述の卵子凍結の記事でもお伝えした下記【卵子凍結をお考えの方に知っておいてもらいたいこと】はこの時点で確認をしておいてください。不明な点や不安があれば、遠慮せずにスタッフに声をかけてみましょう。

【卵子凍結をお考えの方に知っておいてもらいたいこと】

・現段階では凍結卵子を使用して出産できるのは数%であること

・卵子凍結を行うその過程で、健康への被害が出る可能性があること

・卵子凍結をした場合は体外受精・顕微授精になるためパートナーの理解が必要であること

・高齢出産のリスクが高まるというが、どのようなリスクか理解しておくこと

STEP2 治療開始~排卵誘発剤による卵巣刺激~

一般的に、1回の採卵で複数の卵子を得ることができるように、注射や内服の排卵誘発剤を使用します。副作用としては、重篤なものに卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼ばれるものがあります。過剰な刺激で卵巣が腫れ、重症化すると腹水や胸水が溜まって手術が必要なケースや、血栓症のリスクがあります。最近では、お薬の使い方でコントロールできますが、熟知した医師のもとで行うことが大切です。

STEP3 採卵

膣用の超音波にガイドを付けて針をセットし、卵巣の近くまで進めて、卵巣内の卵胞と呼ばれるふくろを刺し、その中の卵子を回収します。卵胞がたくさんできていても中に卵子がない場合や、採れても状態が悪く凍結できない場合もあるため、手術前の卵胞の数だけ卵子が得られるわけではありません。採卵のリスクとしては、穿刺するため腹腔内出血、感染のリスクなどの可能性があります。

STEP4 凍結・融解(解凍)

-196℃の液体窒素で凍結します。凍結している間は卵子の質が低下することはありませんが、操作が加わることで負担がかかったり、使用時にうまく解凍できない場合があります。また、凍結卵子を融解した後では、顕微授精が必要になります。精子を採取してもらう必要があり、夫になった方の同意が必要です。精子の採取方法は、男性側に問題がなければ容器に採ってもらうので、手術は必要ありません。

STEP5 移植

精子との受精がうまくいき受精卵となれば、それを移植します。カテーテルに受精卵を吸い、膣から挿入して子宮の奥に戻す方法です。しかし、移植可能な段階まで成長できるかわかりません。凍結していないfreshな精子と卵子を用いた場合でも受精しない、あるいは、途中で分割が止まり、移植できない場合があります。清潔操作で行うため稀ですが、感染のリスクがあります。

ここまでうまくいったとしても、移植時の年齢によって高齢出産のリスクが加わり、出産までたどり着けるのはほんの数%です。それでも、今はやはり結婚・妊娠できないので準備しておきたい方や、実際にその数%に入り出産できて良かったという方も出てくるでしょう。確かに、若いうちに凍結した卵子があなたの将来を助けてくれる可能性もあるかもしれません。しかし、やはり、妊娠・出産には適齢期があります。

決断の前に一度、お話ししてきたリスクや、将来使用するかわからない卵子を保有するということについて、ゆっくり考えてみてください。これらのリスクをご理解の上、皆様にとって一番幸せな選択をして頂きたいと願っています。

脚注:

※生殖補助医療(ART)とは、卵巣から卵子を採取して体外で精子と受精させ、受精した受精卵を移植する「体外受精」といわれる方法をはじめとする、近年進歩した新たな不妊治療法(参考:日本生殖医学会HPより)

Lealtaライター:荒木 依理(不妊症看護認定看護師・生殖医療コーディネーター)

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