性的マイノリティのトイレ問題を解決したい

1日の中で長い時間を過ごす職場、そこで気持ち良くトイレを使えないと、気持ち良く働くことはできません。トイレは、人としての尊厳の問題です。

2014年11月に「日本トイレ研究所」のイベントに登壇してから、私はトイレに並々ならぬ関心を持っています。トイレに困っている性的マイノリティ、かなり多いのではないかと思うのです。

私たちはLGBT等の性的マイノリティが働きやすい職場づくりを推進するNPOですが、企業からの相談でもっとも多いのは、トランスジェンダー、特にトランス女性(いわゆるMTF)の性別移行に関する話です。従業員については、上司、人事、産業医のチームでヒアリングして、本人が就業上困っていることに具体的に対応してもらっています。

トイレに関しては、事業所が小さく、コンビニや居酒屋のように共用トイレが一個あるだけ、という場合を除いて、ほぼ必ず話題に上ります。車椅子対応の大きな男女共用トイレを使ってもらうのか、女子トイレを使ってもらうのか、その場合は、他の女性社員にどう説明するのか、来社するお客様がびっくりしないか、など、相談にいらっしゃる人事の方は、かなり色んなケースを想定して悩んでいることが多いです。

私たちは、原則的にはご本人の希望を聞いて、それで問題ないかを周囲と調整して、対応してくださいと説明しています。ホルモン治療や服装の変化で見た目が変わっていく、いわゆる「移行期間」がだいたい数ヶ月から1年あるため、その間に周囲がその人のあり方に慣れて、トイレについても問題にならなくなることがほとんどです。

今年の11月、経産省職員が、女子トイレの使用など、職場環境の改善を求めて日本初の訴訟を起こしました。ここでも問題になったのはトイレです。希望するトイレを使えないということは、1日のうちに何度も、自分の「性別」を意識させられるということです。トランスジェンダーにとって、それがどれだけツラいことか、想像できなかったのだろうか、と思います。

私たちは性的マイノリティの職場に関するアンケート調査を続けていますが、そのアンケートの自由記載欄に「トイレ」という単語は数えると11回出てきます。2,000人規模のアンケートで、特にトイレのことを聞いているわけではないのに、この頻度です。また、トランスジェンダーで膀胱炎などの排泄障害を経験している人は27%でした。トイレに関するストレスが、身体の健康にまで悪影響を及ぼしているのではないかと考えられます。

1日の中で長い時間を過ごす職場、そこで気持ち良くトイレを使えないと、気持ち良く働くことはできません。トイレは、人としての尊厳の問題です。

思うに、トランス女性が女子トイレを使って良いか、という問いは、問題を捉え違えています。主に異性愛の男性から、「女性」がトイレという密室で性的な暴力を受けることが多いのが、そもそもの脅威であるはずです。トランス女性が問題なのではなく、性暴力のない環境づくりが課題だと思います。

アメリカでは、州ごとの同性婚の是非をめぐる議論で、反対派が「女装」した男性が女子トイレを使う姿をキャンペーン映像に使ったそうです。トランスジェンダーのトイレ問題は、同性パートナーの法的保障とは直接的に関係ないように思われるのですが、性的マイノリティに関する知識のない人には一緒の話に思えるのでしょう。これから同性婚などの法的権利に関する議論が始まるだろう日本でも、この問題はクリアすべきハードルになるかもしれません。

私たちは、性的マイノリティ、特にトランスジェンダーに関するトイレ問題について、まずは現状を把握するためのアンケート調査を行いたいと思います。できるだけ多くの性的マイノリティ当事者の声を集めたいと思いますので、是非、アンケートにご協力をお願いします。調査結果は統計処理の上、広く発表する予定です。

トランスジェンダー自認でなくても、髪型やファッションが典型的な男女の枠から外れると、やはりトイレでトラブルになることがありますので、対象は広く「性的マイノリティ」としています。また、特に自分は困った経験がないという方も、それはそれで大事な声だと思いますので、是非ご回答をお願いします。

【性的マイノリティのトイレ問題に関するアンケート調査】

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