高まる「外国人依存度」と変わらない外国人労働者の構造

2010年前後から現在にかけて、日本における外国人労働者に関する実態について、「変わったこと」と「変わらないこと」という観点から関連データを整理した。

労働力不足が顕在化するなか、先日閣議決定された成長戦略(「未来投資戦略2017」)で、日本経済の更なる活性化及び競争力強化の観点から、外国人材の受け入れと活用が盛り込まれた。当該内容は、第2次安倍政権誕生以降、閣議決定されてきた成長戦略において5年連続で明記されたことになる。

これを受け本稿では、2010年前後から現在にかけて、日本における外国人労働者に関する実態について、「変わったこと」と「変わらないこと」という観点から関連データを整理した。

1.変わったこと:増え続ける外国人労働者と高まる「外国人依存度」

日本国内で雇用されている外国人労働者及び外国人を雇用する事業所数は、過去数年間で増加の一途を辿ってきた(図表1)。

2016年10月末時点で、外国人労働者数は約108万人、外国人を雇用する事業所数は約17万に達しており、いずれも過去最高となっている。

2008年に「外国人雇用状況」の届出が義務化されて以降、徐々に捕捉率が高まっている側面があるとはいえ、過去数年間で日本国内における外国人労働者の存在感が高まっていることが窺われる。

実際、日本の労働市場における外国人労働者が占めるウエイトはどれほど変化してきているのか。総務省「労働力調査」と厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況」をもとに、全就業者に占める外国人労働者の割合を「外国人依存度」として試算した(図表2。なお、本稿では、現在と同じ形で産業別集計が公表され始めた2009年以降を試算対象とした)。

結果をみると、各産業において「外国人依存度」が高まっている。2016年時点では、全就業者の約59人に1人が外国人であり、2009年(約112人に1人)と比較すると約1.9倍の増加となっている。産業別に2009年と2016年を比較すると、建設業の約3.8倍を筆頭に、農業・林業:約3.1倍、医療・福祉:約2.7倍、卸売業・小売業:約2.5倍となっている。

また、2016年時点で宿泊業・飲食サービス業では、全就業者の約30人に1人が外国人となっており、これは特に都市部におけるコンビニエンスストアや飲食店で、外国人に接客を受ける機会が増加している実感とも整合する人も少なくないだろう。

2.変わらないこと:外国人労働者の在留資格別割合

外国人労働者数や雇用する事業所数の増加、及び「外国人依存度」の高まりという変化がみられる一方で、日本の外国人労働者に関する状況として変わっていないこともある。図表3には、外国人労働者の在留資格別割合の推移(縦棒グラフ)と、2016年10月末時点の内訳(円グラフ)を示している。これから2つのことが指摘できる。

1点目は、日本で働く外国人の在留資格別の割合は、従来から大きな変化がみられないということである。ただし、近年在留資格「留学」の割合が増加傾向にあり、働きながら学ぶ留学生が増えていることが推測される(図表3内:ポイント①参照)。

2点目は、在留資格の内訳をみると、就労を目的とした在留資格を付与され働いているのは外国人労働者全体の18.5%に止まっており、本来は就労を主目的とせず入国・滞在を認めている在留資格者が大きな割合を占めているということである(図表3内:ポイント②参照)。

具体的には、「国際貢献・技能移転」のために入国を認めている技能実習生が19.5%、日本で勉強するために入国を認めている留学生が19.3%、日本人の子孫として特別な関係があるため入国を認めている日系人らが38.1%となっている。

これから求められる議論の姿勢

「外国人依存度」の高まりと、外国人労働者の在留資格別割合にほとんど変化がない状況から、日本で就労することを主目的として入国・滞在が認められたわけではない外国人によって日本の産業が支えられている実態があることが示唆される。

今後、日本の総人口は減り続けていくなかで、どのように労働力を確保していくか。特に外国人の受け入れ・活用(活躍)については、2017年5月に開催された「『ニッポン一億総活躍プラン』フォローアップ会合」で、留学生の週当たりの労働上限時間の拡張や、現在新規入国が制限されている日系四世に対する「新しいワーキングホリデー」という提案が示されているが、表向きは就労を主目的とはせずに門戸を広げる方向については、再考も含め検討が必要だと考える。

また、外国人や移民に関する議論は印象論や情緒的な性質を帯びやすいため、データに基づいた実態把握や諸外国の教訓・取り組みを踏まえた建設的な議論が求められる。

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