パリのデパート「ギャラリー・ラファイエット」の屋上に、"垂直菜園"が登場

土壌不要の菜園や緑地は、研究からいよいよ実践段階へ進んでいることを実感しました。

パリのデパート「ギャラリー・ラファイエット・パリ・オスマン」の本館の屋上に、この春からオーガニック菜園が登場しました。土壌に種をまいたり苗を植えるのではなく、垂直に壁をつくって野菜や果物を栽培。今年3月に2週間かけて設置したそうで、今年取材にうかがった7月終わりには、イチゴやフランボワーズ(木苺)、トマトなどが赤々と実をつけていました。

ギャラリー・ラファイエットの屋上からは、オペラ座やエッフェル塔、モンマルトルの丘などパリの景色が一望できます。こんな素晴らしい場所で、無農薬のイチゴが栽培されています。

菜園を設置したのは、都市緑化対策のひとつとして壁面や屋上を活用する"地面以外での栽培(culture hors sol)"を研究・実施しているスー・レ・フレーズ社(Sous les fraises)。

2013年にパリ市が募集したプロジェクト「革新的な緑化」で発表したコンセプトにギャラリー・ラファイエットが注目し、今回のコラボレーションに発展したそうです。

300㎡の床面積に対して、菜園の総面積は1000㎡。垂直の壁面を作って栽培するため、土地の面積が限られた都市部でも、大規模な菜園をつくることが可能になるのです。

代表のヨアン・ユベールさんは、土壌不要の農業について約10年前から研究をしています。「当初は夢物語だと言われていましたが、パリで初めて実現しました。これだけ広い面積の菜園は世界一といえるでしょう」と話していました。

"壁面"の素材は、麻やウールなどの自然素材。ポケットのようなものがついていて、そこに野菜や果物、ハーブなど約2万1000株が植えられています。化学肥料は使わず、レストランなどから出る生ごみを処理した肥料と雨水を活用。下にたまった水は、循環させて再利用できるシステムになっているそう。

支柱に麻やウールでできた布を張り、野菜や果物を栽培しています。風がある日や気温が低い日は、網のカーテンで覆って保護するそうです。

ミニトマトやイチゴの木。周りには虫やミツバチが舞っていて、まさに田舎の菜園にいる気持ちになります。

「もっとも重要なことは、微生物を育て、多様な生態系をつくることです」とユベールさん。

栽培された野菜や果物はパリのレストランに卸しており、有名シェフたちも関心を示しているようです。

セージやミントなど、香りのあるハーブもたくさんありました。

菜園を上から見たところ。

後ろから見ると、自然素材で作った布であることがよく分かります。右に見えるのはオペラ座の裏側。

養蜂用のミツバチの巣箱。こんな素晴らしい眺めの中で、ハチミツが作られています。

土壌不要の栽培方法を研究し続けてきたユベールさん(左)。女性スタッフが日々、手入れをしています。

一般の人は菜園の中には入れませんが、誰もが入れる屋上テラスから菜園が少し見えます。手前の壁面には、スミレや柳、カラシなどが植えられています。

屋上テラスから見たところ。本館ドームの向こうに、壁面菜園が見えます。壁面に植えてある植物の案内もありました。

本館ドームの中は、こんな素晴らしいステンドグラスです。

限られた都市部のスペースを有効活用し、都市の生態系の再生にも役立つ、土壌不要の菜園や緑地は、研究からいよいよ実践段階へ進んでいることを実感しました。今後はアパルトマンやオフィスの屋上などにも応用してほしいものです。ユベールさんは「この技術を世界中に広めていきたいですね。東京で実現できたら嬉しい」と話していました。

Sous les fraises

Galeries Lafayette Paris Haussmann

40 boulevard Haussmann, 75009 Paris

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