「ヘリコプターペアレント」とは? 生きづらい子どもに育つ親の存在

「ヘリコプターペアレント」という言葉を聞いたことがありますか。

「ヘリコプターペアレント」という言葉を聞いたことがありますか。(カナダでは)ニュースで目にすることが最近多くなっています。

自分の子供の周りを、まるでヘリコプターがホバリングするように、関わり続けることがやめられない親のことをいいます。子供たちを泡で包むかのように扱い、結果として、仕事や人生に必要な能力に問題を抱える若い大人たちを育ててしまっているのです。

ヘリコプターペアレントは、自分の子供のために最善を尽くしていると思っていますが、実際は子供の成功の機会を奪っています。とくに、子供が仕事を得て働き続ける機会を損なっているのです。

ヘリコプターペアレントは、自分の子供が傷つくことを嫌います。すべての困難を和らげ、失敗から守ろうとします。

問題はこうして過保護に育った子供は、喪失や失敗、さらに失望といった、誰の人生でも避けられない状況に対処する方法を全く学ぶことがないということです。

親の過保護は、こうした若者が不満への耐性を学ぶことをほとんど不可能にしてしまいます。大切な経験を欠いたまま仕事に就いた若者は非常に不利な状態にあるといえます。

子供に過剰に関わり過ぎるヘリコプターペアレントの影響で、子供たちは健全な職業倫理や基本的な人間関係スキルを持たずに成長します。こうしたスキルがなければ、若者は期待される仕事上のタスクを完遂することができないでしょう。

ヘリコプターヘアレントは過保護になってしまうことで、自分の行動から得られる結末からも子供を遠ざけてしまいます。結果として、失敗による意義ある教訓や、情緒的な発達をうながす教訓を学ぶ機会を失ってしまいます。

ヘリコプターペアレントは、子供たちを仲間とのあらゆる衝突からも守ります。こうして育てられた子供は、成長してからも自分自身と同僚や上司との間で起きた問題を解決する術を知りません。

人は物事に挑戦し、間違いを犯し、学習して、再び挑戦することで問題を解決します。このプロセスが自信と能力と自尊心を育てます。ヘリコプターペアレントは、子供たちが仕事の成功のために必要なこうした特性を育むことを邪魔してしまいます。

ヘリコプターペアレントは、自分の子供たちがすべてに勝つべきだと考えています。また、スポーツに取り組む者はすべてトロフィーを勝ち取るべきと考えています。たとえ課題の期限が切れていても、出来が悪くても全員が合格点をもらうべきと考えているのです。

仕事の現場では、競争の勝者はひとりだけで、質の高い仕事だけが報酬を得るものです。もし子供たちが、"自分がどんな行いをしても自分は勝てる"という考えのまま大人になったら、成功のために自分が一生懸命仕事をしなければならないとは気がつかないでしょう。

こうした能力を欠く若者は自分たちが競争に敗れたり、面接をしくじったり、仕事を解雇されたりし続ければ、ひどく打ちのめされるでしょう。仕事の世界で勝者になるためには、どれほど多くの努力が求められるか理解することはないでしょう。

こうした若者には、能力も、問題に熱心に取り組む必要性への理解や、課題を1人で解決するために力を尽くした経験もありません。彼らはこうしたことは誰かが自分のためにやってくれると期待します。まるでいつも親がそうだったように。

基本的に彼らは自分のために考えて行動することができません。

ヘリコプターペアレントは、子供にいくつも悪い習慣を植えつけてしまいます。成功への過剰な期待を抱いて成長しますが、それは自分がどれだけの量と回数のエネルギーを注いだかとは関係ありません。そして同僚にも上司にも都合が良いわけではないのに自分は優先的に扱われるものと思っています。

仕事の面接では、雇い主は自信過剰な若者を敬遠します。そうでなければ、基本的なスキルの無さを警戒します。

多くの若者は、無知と無能のまますぐに高い報酬への期待を表しますが、それは実際の成果と無関係ならば役職面接では命取りです。

親が20代の子供の就職の面接に一緒に行くとしたら、それは雇い主からの信頼を損なうことになるでしょう。「なぜ?」と雇い主は自問するかもしれません。「仕事を探すのにママやパパを連れてくる必要があるのか。この若者はもう子供ではないというのに?」

ちょっとしたことでも、ヘリコプターペアレントは子供の能力を損ないます。ヘリコプターペアレントに育てられた大人は、コーヒーブレイクの後、自分のゴミを片付けたりカップを洗わったりせずに休憩室を出て行ってしまいます。こうしたことが同僚から不評を買ってしまうのはお分かりだと思います。

こうした若者は自分たちの後片付けを「誰か」に期待しています。それは子供の頃に自分の出したゴミをいつも親に片付けられていたのと同じです。自分の後ろにもうゴミを片付けてくれる人がいないことに気づきません。それは物理的にも、人間関係や仕事上においても同じです。

心理学関連の雑誌でバーブ・ネファー氏は「ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた人)はひどいうつ状態に苛まれている。若い労働者の5人に1人が職場のうつを経験している。

一方ジェネレーションX(アメリカで、1960年代初頭から1970年代に生まれた世代)やベビーブームの世代は、16%に限られていた」と書いています。

ネファー氏は続けて「ベンシンガー、デュポンアンドアソシエイツの白書では、ミレニアル世代は仕事の能力に不具合があり、常習的な欠勤の割合も高く、また争いごとや書き表せないような問題も多い」としており、いずれも「仕事の成果を損なう」原因となり得えます。

ワシントンポスト紙よれば、2013年には「ヘリコプターペアレントに育てられた大学生はうつの割合が高い」と報告されているそうです。

ワシントンポスト紙の記事には、続けて「過剰な親の干渉は、(子供の)自主性と能力の発達を阻害する。そのため、ヘリコプターペアレントは依存を促し、保護的な管理なしに仕事を完遂する能力を阻害する」と書かれていました。

ときに、子供のために最良の「ありかた」は、(親が)不在であること。

子どもが、ひとりで事に向き合うことが大事です。

上に紹介した記事から、ヘリコプターペアレントは若者のうつの増加に関係していて、職場での明らかな能力の欠如を招いているのは明らかです。

もしあなたが自分の子供に大人として仕事の成功を望むならば、自分自身と子育てのパートナーにヘリコプターペアレントの傾向があるかどうか注意が必要です。

子供を愛することは、導き、守り、支えることです。それは包み込み過保護にすることや、子供が自分で考え課題を克服したり失意や失敗を乗り越えたりすることを学ぶべないほど過干渉になることではありません。

親として最も愛情を示すことは、一歩下がって子供が失敗したり、自分の手で物事と格闘するのを見守ることです。子供のために最良の「ありかた」はその場にいないこと、という場合もあるのです。こうすることで、子供たちが自信と能力と自尊心、それに情緒的な知性を発達させることができるのです。

今まさに幼い子供は、能力的にも大人になるために自分を支えてくれる親が必要です。これは子供への干渉や過保護を止め、子供たちに自分自身で物事に取り組み、解決し、困難に打ち勝つ方法をすべて自分で学習することを促すという意味です。

ハフポスト・カナダ版に掲載されたものを翻訳・編集しました。