坂本九さん生誕75周年 年の瀬に「上を向いて歩こう」のメッセージ

12月10日、JR川崎駅の小川久光駅長の掛け声とともに、坂本九さんの名曲「上を向いて歩こう」の発車メロディーがミューザ川崎ゲートプラザに響いた。

「坂本九が愛した川崎。川崎の玄関口で"上を向いて歩こう"のメロディーが流れるのは嬉しいです。今日は(坂本九の)誕生日。いいプレゼントになりました」。坂本九さんの妻、女優の柏木由紀子さんは、記念セレモニーのステージで深々と頭を下げながら話した。

(写真:中央 柏木由紀子さん、左:福田紀彦川崎市長、右:JR東日本渡利千春横浜支社長)

12月10日、最低気温3度の凍てつく日曜日の朝。JR川崎駅の小川久光駅長の掛け声とともに、坂本九さんの名曲「上を向いて歩こう」(作詞:永六輔、作曲:中村八大)の発車メロディーがミューザ川崎ゲートプラザに響いた。北風が強い日だったにも関わらず、外で開かれたセレモニーに約150人が詰めかけた。柏木由紀子さんのほか、川崎市長らも参列。川崎駅は、1日に約20万人以上が利用する。その駅利用客や市民に川崎商工会議所やライオンズクラブ国際協会などが署名を呼びかけ、2か月足らずで約4000筆が集まった。今年6月にJR川崎駅と川崎市に提出し、実現した。京急川崎駅の電車接近メロディーに続いて、同日の始発から東海道線で「上を向いて歩こう」が発車メロディーになった。

(写真:市立富士見中学校吹奏楽部が「上を向いて歩こう」、「見上げてごらん夜の星を」、「明日があるさ」を演奏した。12月10日発車メロディーオープニングセレモニーJR川崎駅西口そば川崎ゲートプラザ)

"九ちゃん"の愛称で知られる坂本九さんは、川崎市川崎区で生まれ育った。(✳︎昭和36年に歌われた「上を向いて歩こう」は、大ヒットし「SUKIYAKI」として世界中で発売。昭和38年、米ビルボード誌で3週連続1位を獲得し、日本人初のゴールデン・レコードを受賞した。昭和60年、日航ジャンボ機墜落事故で亡くなった。生前は福祉活動に熱心だった。)川崎市が進める「音楽のまち・かわさき」の取り組みとして、昨年4月、ライオンズクラブ国際協会が川崎駅東口広場に坂本九さんの歌碑を寄贈した。

(写真:JR川崎駅東口広場の歌碑)

この歌碑は「涙がこぼれないように」の歌詞を表す。上部は、下まぶたを描くようにくぼんだデザイン。福田市長は、「九ちゃん前が待ち合わせ場所として、一層親しみを持っていただければ」と、期待を込めて話す。

JR川崎駅東口地下街 アゼリアでは、午前9時から通勤、通学する人たちへのBGMとして

「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」が流れる。"九ちゃん"の歌は、市民の生活に息づいている。

川崎市桜本町の商店街の入り口にある像は、"九ちゃん"によく似た少年が横に寄り添う猫とともに上を指差して微笑んでいる。

(写真:「さくらもと九福神」1999年に9人の福神さまの像が作られた。「あらゆる願いを上向きにして下さるのがこの九福神。そういえばどなたのお顔も上を向いています」と説明書きがされている。)

柏木由紀子さんは、記念セレモニーで遠くを見て思い返すように微笑みながら、

「このメロディーで坂本九の笑顔を思い出していただけたらとっても嬉しいです」と語った。地元市立中学校吹奏楽部の演奏が始まると、笑顔で体全身で小刻みにリズムをとりながら曲を聞いていた。

通りがかった外国人は目頭を熱くしながら、演奏に聞き入った。

この日は、生きていたら75歳の誕生日。"九ちゃん"は、天国からどのように今の日本や世界を見ているのだろうか。今年も残りわずかだが、テロ攻撃や殺人事件、ノロウィルスなど暗いニュースが内外で絶えない。せちがらい世の中、駅のホームを歩いていると、"九ちゃん"の発車メロディーが胸に染み入る。曲にのせて私たちにエールを送っているようだ。「上を向いて」明るく前向きに新年を迎えたい。

(前田真里:写真、動画も)

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