仮設住宅健診からみえた、復興の歩みと相馬市に必要なもの

7月16日から20日にかけて、相馬市の仮設住宅入居者を対象とした健康診断が実施された。東日本大震災以降、恒例の行事となっており、今年で5回目だ。

7月16日から20日にかけて、相馬市の仮設住宅入居者を対象とした健康診断が実施された。東日本大震災以降、恒例の行事となっており、今年で5回目だ。

相馬市役所に加え、東大医科研の当研究室、星槎グループ、瀬戸健診クリニック、福岡豊栄会病院、相馬中央病院、公立相馬病院、渋谷健司・東大医学部教授の研究室、大磯義一郎・浜松医大教授の研究室が参加した。例年と同じ面子である。

今年の健診に参加して、改めて相馬市の復興が順調であることを実感した。仮設住宅の入居者は、震災当初の2~3割程度に減っていた。多くの被災者が、再建した自宅や相馬市が準備した復興住宅(相馬井戸端長屋)に移ったようだ。

震災後早期に目立った肥満、高血圧の患者も減った。放射線に悩む人も見当たらない。

ただ、問題もある。仮設住宅の人口、特に若い世代の人口が減ったため、仮設住宅内での相互扶助が機能しなくなっているのだ。今年5月には、仮設住宅での孤独死している住民が発見された。相馬市で最初のケースである。

今後、仮設住宅の入居者は益々減少する。経済力がない高齢者が取り残されるだろう。相馬市関係者は「仮設住宅を出ると家賃を払わねばなりません。それが負担になる人もいます」と言う。このような高齢者は健康に問題を抱えがちだ。

何事も撤退戦は難しい。如何に、住民の健康を維持しながら、仮設住宅を縮小させていくか。相馬市に課された問題だ。

相馬市は今年度いっぱいで仮設住宅を閉鎖する予定だ。被災者をケアする場は、仮設住宅から、通常のクリニック・病院へと移行する。地域をあげた体制整備が必要だ。

ご多分に漏れず、相馬市は医師不足だ。ただ、明るい兆しもある。立谷秀清市長が設立した相馬中央病院には、大勢の若い医師が集まりつつあるのだ。今回の健診にも参加した越智小枝医師、森田知宏医師らだ。いずれも、最初は仮設住宅健診をきっかけに相馬市とのつきあいが始まり、やがて、この地域の常勤医となった。

森田医師は「相馬市は、立谷市長のリーダーシップの元、地域が一体となって医療を提供しようとしている。地域医療を学ぶ格好の場である。」と言う。

確かに、その通りだ。医療や教育などの現業を担うのは、多くの場合、市町村だ。国や県ではない。実力がある市長がいれば、相当のことは出来る。まさに相馬市がそうだ。5年間にわたる仮設住宅健診、内部・外部被曝検査、独居老人の集合住宅である「相馬井戸端長屋」など、具体例には事欠かない。

越智・森田医師らは、このような活動に参加している。現場での活動を通じて、様々なノウハウを身につけるとともに、学術誌に研究成果を発表している。彼らは、相馬で働き、大きく成長した。

相馬の復興には時間がかかる。相馬市に必要なのは、志のある若者だ。地域医療を通じて成長したい方がおられたら、是非、相馬にお越し頂きたい。相馬は期待を裏切らない。

写真:7月20日、相馬市大野台の仮設住宅にて

注:本文は「医療タイムス」に掲載された連載を加筆・修正したものです。

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