セックス依存症だった女性たちの話に「ジェンダー規範」の根深さをみた

「子ども2人が幼稚園に行っている時間、とっかえひっかえ」の言葉の裏にあるもの
Wの悲喜劇

AbemaTVのニュース番組「Wの悲喜劇」の年末年始の特番にゲストとしてはじめて参加した。

今回のテーマは「セックス依存症」。地上波のテレビではなかなか見ることのない社会的テーマに切り込み、当事者を交えてまじめに議論していくのが、この番組の持ち味だ。

Wの悲喜劇

お話をいただいたとき、「セックス依存症」という病気は存在するのだろうか?と思った。調べてみると、性行為の「依存」は、アメリカ精神医学会がまとめている「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版」(DSM-5)では、病気としては扱われていないが、「過剰セックス障害」(hypersexual disorders)として、提案されている。

番組に、当事者として参加した大木華さんの話がとても印象深かった。

大木華さん(右端)。ほかの当事者は覆面で臨んだ
大木華さん(右端)。ほかの当事者は覆面で臨んだ
Wの悲喜劇

大木さんは8年間、セックス依存症だった経験を経て、いま「不倫・セックス」のカウンセラーとして、当事者が集まる場を運営している。

大木さんは25歳の時に結婚して、子ども2人が生まれたが、夫とセックスレスの状態になった。それ以外に夫婦の間に問題はなかったが、体のコンプレックスもあって、大木さんはセックスレスの状態にひどく悩んだ。「なにか気に入らないことがある?」と夫に手紙を書いたこともあるという。

そんな中、あることがきっかけで、インターネットのサイトを通じてセックスフレンドを複数持ち、子どもが幼稚園に行っている間ホテルで会ったり、家族が寝静まった真夜中、性感マッサージを受けに家を出るような日々を送るようになった。「ひどいときには子ども2人が幼稚園に行っている間に、とっかえひっかえみたいな。この人ができないならあの人、と。気づけばやめられない状態だった」と振り返る。

自身の経験を詳細に話す大木さん(右端)
自身の経験を詳細に話す大木さん(右端)
Wの悲喜劇

セックスができないときは「オナニーしても、満たされない思いやネガティブな感情がこみ上げてきて泣いていた」という。ほかの参加者も皆異口同音に「愛されてないと思ってきた」「さみしかった」というのが印象的だった。

夫以外の人と恋におち、夫と離婚も協議したこともある。その間、うつにも苦しんだが「自分のどんな部分も認めることができてからは、徐々に克服していった」という。いまは夫とセックスレスを克服し、「以前よりずっと夫婦仲はいい」という。

疑問は残る。

アルコールや薬物などの物質の依存者にとっては、アルコールや薬物は「一生絶つもの」だ。しかしセックスは、一生絶つなんてことができるのだろうか? できないとすれば、「克服」のゴールは、どこに置くのだろうか。なぜなら、セックスは人間の自然の営みでもあるからだ。

そんなわたしの問いに、大木さんは言う。「自分を傷つけないセックスをすることがゴールだと、思います。自分を大切にできるのがゴールだと思う」。8年間、セックス依存の状態を経験した大木さんの話は実感がこもっていた。

「セックス依存」の克服のゴールをどこに置くかを考えたとき、「セックス」を「食べる」に置き換えると、見えやすくなった。人間が生きていくことと「食べる」という行為は切り離せない。だが、克服した人は、「食べる」という行為を続けながらも、拒食や過食という、自分を傷つけるような食べ方は克服できる。

一方で、セックスを「愛情」とセットで考えるがゆえの苦しみ、「愛される対象でいたい」という、受け身を求める苦しみなど、「女性」というジェンダーであるがゆえの、無意識の規範のようなものを、当事者たちの話から感じた。

番組に出てきた女性たちの話だけで全ては語れない。

しかし、彼女たちの話を聞くにつれ、女性は「受け身」(客体)だというジェンダー規範を、彼女たちも内面化しているように感じられた。

セックス依存症の彼女たちですら、そうなのだ。ここでも、私たちの社会に広がるジェンダー規範の根深さを見た気がした。

番組は、シェリーさんの司会のもと、当事者、取材者、専門家が出演して、赤裸々な体験談をもとに議論を深めていく
番組は、シェリーさんの司会のもと、当事者、取材者、専門家が出演して、赤裸々な体験談をもとに議論を深めていく
Wの悲喜劇

「Wの悲喜劇年末年始祭り・セックスにタブーはない!禁断の4時間SP」

【前編】12/31(日) 20:00~22:00、1/2(火)1:00~3:00、17:00~19:00

テーマ:①「あなたも?セックス依存症」②「なんでしてくれないの?セックスレス」

【後編】1/3(水) 22:00~24:00、1/4(木)13:00~15:00、1月6日(土)0:00~2:00

テーマ:③「セックスを仕事に選んだけれど...」④「恋をしない"アセクシャル"って何?」

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