産業機械オークションのRitchie BrosがIronPlanetを買収

建機メーカーの業態変化に歩調を合わせて新しい商機をつかんでいく必要がありそうです。

M&A Online編集長の田口です。今回は産業機械オークションのRitchie BrosがIronPlanetを買収した記事をピックアップしました。TransCap代表で米シリコンバレー在住のコンサルタント坂崎昌平氏がレポートします。(田口 雅典)

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Ritchie Brosは、世界最大の産業機械オークション業者です。広大な敷地の常設会場で中古の建機、重機、鉱山機械、農機、トラックなどをオークション形式で販売しています。ニューヨーク証券取引所の上場企業で、昨年の販売総額は$4.3B、先週末時点での時価総額は$3.6Bでした。

IronPlanetは、建機・重機マーケットプレースの運営会社です。オンラインのオークションを開催していて、昨年の総取引額は$787Mでしたが、過去3年間は年率25%で伸びているそうです。

同業のオフライン最大手によるオンライン成長企業の買収ということで、投資家にとってもシナジーが分かりやすい案件といえます。実際、買収が発表された8月30日のRitchie Brosの株価は前日比24%高となりました(同日のスタンダード&プアーズ(S&P)とダウ(Dow)の株価指数は小幅ながら下落)。

Ritchie Brosの主要顧客は建機・重機のエンドユーザーで、 建機・重機を処分したい法人顧客に強いIronPlanetとは、ビジネス的に補完しあえます。また、IronPlanetはRitchie Brosの海外拠点を足掛かりに日本市場を含むグローバル展開を加速するそうです。

1999年にカリフォルニア州で設立されたIronPlanetは、これまで$89Mの資金を調達しており、株主にはAccelやKPCBといった有力ベンチャーキャピタル、大手建機・鉱山機械メーカーのキャタピラー(Caterpillar)、小松製作所、ボルボ(Volvo)が名前を連ねています。

調査会社のKHLによれば、2015年の世界の建機メーカ上位50社の売上高の合計金額は前年比16%減の$133Bでした。これはリーマンショックの影響を受けて$109Bとなった2009年以来の低水準で、世界的な資源価格の下落や途上国経済の減速によるものです。

ちなみに売り上げベースでの建機メーカーの上位企業は、キャタピラー ($24B; シェア18%) 、小松製作所($14B;シェア11%)に続いて、Terex、日立建機、Liebherr、ボルボがシェア5%前後で並んでいます。

建機メーカーの売り上げは今年から17年にかけて底入れ反転するとの見方がありますが、再び中国市場での建設ブームに匹敵するような追い風が吹くことは期待できず、各社ともに建機の売り切りからICT技術を活用した高付加価値サービスへのシフトを急いでいます。

キャタピラーのCAT Connect や小松製作所のKOMTRAXのサービスがよく知られていますが、建機にGPS、各種センサー、通信機能を標準装備して稼働状況のデータを収集・分析することで、故障を予測して保守サービスを提供したり、安全対策や省エネに活用したりしています。

また、ドローンを使って顧客の施工現場を測量して、そのデータを使い、建機を自動制御・自動運転する取り組みも進んでいます。日本政府は、建設現場の人手不足対策として、自動化による生産性向上を可能にする法整備を進める方針を示しています。

現時点では、建機の新品販売の低迷とは裏腹に堅調な中古オークション販売ですが、長い目で見ると、建機メーカーの業態変化に歩調を合わせて新しい商機をつかんでいく必要がありそうです。

ご参考までに、最近の建機関連ベンチャー企業による資金調達をリストアップしてみました。

建機関連ベンチャー企業による資金調達(15年1月以降)

・中古建機オークションのIronPlanetが$85M(Cat Auction Servicesを買収)

・建機オペレーター監視のSeeing Machinesが7Mポンド

・P2P建機レンタルのEquipmentShareが$6M

・建機トラッキング・サービスのGetableが$5M

・建機マーケットプレースのソラビト(SORABITO)が5億円(日本企業)

・建機マーケットプレースのPlantMinerが$4M(オーストラリア、ニュージーランド市場)

・P2P建機レンタルのYard Clubが資金(キャタピラーも出資)

M&A Onlineより転載

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