#7119救急電話相談の現況と展望―適切な受診をサポートするために

「救急車利用の適正化」を図るために。

・#7119とは

#7119とは2007年に東京都で開始された救急電話相談事業(救急安心センター事業)です。急な病気やケガをした場合に「救急車を呼ぶべきなのか?」「今すぐ病院に行くべきなのか?」など迷い、自身で判断できないけれども救急車を呼ぶのは躊躇われる...そのような際の相談窓口として東京都では#7119「東京消防庁救急相談センター」を開設しています。同センターでは相談医療チーム(医師、看護師、救急隊経験者等の職員)が24時間年中無休で相談に対応しています。#7119は2018年12月時点で横浜市などの大規模自治体を含む9都道府県4都市において導入されるに至り、人口カバー率は40%を超えています。

・#7119の背景―救急出動件数の増加

労働者健康安全機構理事長の有賀徹先生によれば救急出動件数は年々増加傾向にあり、救急車の現場到着も遅れる中で東京大学救急医学教授の森村尚登先生は「救急医療においては需要と供給のギャップが生まれており、救急医療の疲弊は如実であった」と見解を示されています。一方で、救急車を呼ぶべきかどうかという自己判断は極めて難しく、自分自身で判断できないから救急車を使わざるを得ないということが起こっていました。そのような中、119を呼ぶ前に受診すべきかどうかを相談できるようにして、適切な受診を促すことにより「救急車利用の適正化」を図るということが#7119が開始された背景です。

・「救急電話相談の現況と展望」が開催

2019年1月19日、日本臨床救急医学会と日本救急看護学会の合同企画として「救急電話相談の現況と展望」が東京都医師会会館で開催されました。森村尚登先生より2007年からの#7119の歩みと今後の展望について基調講演が行われました。また、一般演題では救急医療の現場からだけではなく、行政からも発表が行われ、企画は盛況に終わりました。#7119の利用者は着実に増えており、最初の事業目的であった「救急車利用の適正化」から、「受療行動の支援」さらには「重症化の予防」へと事業は大きく広がりを見せています。これからはさらなる質の向上と全国展開のための教育体制の整備に取り組んでいきます。

※メディカルノートでは災害医療救急医療に関する情報発信も行っています。

1月19日に開催されたシンポジウム「救急電話相談の現状と展望」(日本臨床救急医学会・日本救急看護学会 合同企画)
1月19日に開催されたシンポジウム「救急電話相談の現状と展望」(日本臨床救急医学会・日本救急看護学会 合同企画)

【執筆/インタビュー】

井上祥(メディカルノート共同創業者・代表取締役/医師・医学博士)

Medical Note

2009年横浜市立大学医学部卒。横浜労災病院初期研修を経て2011年より横浜市立大学大学院医学教育学・消化器内科学、2015年3月に医学博士。一般生活者の医療リテラシー向上と「医師と患者をつなぐ」を理念に株式会社メディカルノートを創業。Medical Noteは2018年12月時点で月間1500万人前後のユーザー、47000のFacebookフォロワーを持つ日本有数のオンライン医療情報プラットフォームに成長し、Yahoo!と業務提携。2008年北京頭脳オリンピック"WMSG"チェス日本代表。日本医療機能評価機構EBM普及推進事業運営委員。NPO法人医療の質に関する研究会理事。横浜市立大学医学部非常勤講師。横浜市立大学医学部同窓会倶進会常任理事。

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