海外在留邦人への医療支援―外務省医務官という仕事

官民連携による邦人支援のためのネットワーク

・グローバル化と共に増える在留邦人と海外渡航者

グローバル化が進む中、2017年の外務省領事局の発表では在留邦人数は134万人、海外渡航者数は1789万人にものぼります。また、日本医師会会長の横倉義武先生は世界医師会会長にも就任され、グローバルヘルスに対しての貢献も求められます。そのような中、在留邦人に対しての医療支援を行うのが外務省医務官です。

・外務省医務官という仕事

「外務省医務官」は外務省に所属する医師です。外務省は外交と邦人保護の観点から国益を守っていますが、現地の医療情報の収集や緊急事態における邦人ケア、御遺族のケアが医務官の主な任務となっています。また、海外で邦人が巻き込まれる大きな事件などが起きた場合には死傷者、御遺族のケアのために医務官が現場に派遣されることもあります。2016年に起きたバングラデッシュのダッカにおけるテロをはじめ、枚挙に暇がありません。

・現地の医療機関との連携

現地の医療機関との連携も欠かせません。バンコク病院のように日本サービスセンターを立ち上げて、タイ国内だけでなく東南アジアの在留邦人のために医療提供をしている医療機関もあります(バンコク病院日本サービスセンター: https://bangkokhospital-jsc.com/ )が、まだまだ海外での医療提供体制には国によって大きな差があると言わざるをえません。外務省診療所の所長を務められる仲本光一先生( https://medicalnote.jp/doctors/171213-001-JF )は海外でなんらかのトラブルがあった場合、医療提供体制が整っていない場合には先進国への緊急搬送が必要なこともあり、その際には莫大な費用がかかります。可能であれば海外旅行保険は無制限のものに加入する方がより安心であるとおっしゃっています。

・官民連携による邦人支援のためのネットワーク

2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、外務省医務官や在留医療従事者を中心として立ち上げられた在留邦人支援のための官民連携ネットワークが邦人医療支援ネットワーク(Japanese Medical Support Network:通称ジャムズネット)です。メディカルノートにおいてもJAMSNET東京と連携した情報発信をしています。

【執筆/インタビュー】

井上祥(メディカルノート代表取締役/医師・医学博士)

メディカルノート

2009年横浜市立大学医学部卒。横浜労災病院初期研修医を経て2011年より横浜市立大学大学院医学教育学・消化器内科学、2015年3月医学博士(甲号)を取得。医師として多数のベストセラー医療書籍を執筆し、在学中よりメディカルノートを創業。一般生活者の医療リテラシー向上を理念に医療情報サイト「メディカルノート」を2015年3月に立ち上げ。2008年北京頭脳オリンピック"WMSG"チェス日本代表。日本オリンピック委員会中央競技団体ドクターとして2013年仁川アジア大会チェス日本代表のアンチ・ドーピングを担当。東京都医学総合研究所客員研究員。

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