LGBTと就活・就労をテーマにしたイベント「RAINBOW CROSSING TOKYO」今年も開催 参加企業は過去最大

LGBTも自分らしく働くことを考えるカンファレンス
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「LGBTと就活・就労」ーLGBTなどの性的マイノリティを取り巻く就活・就労環境という社会課題に近年注目が集まっている。

2017年、厚生労働省は『公正な採用選考の基本』に、「公正な採用選考を行うためには(中略)LGBT等性的マイノリティの方など特定の人を排除しないことが必要」と記載し、採用選考における公正を求めた。

しかし現状では、「履歴書等、男女欄どっちに丸をつけていいかわからず、就活のスタート地点にすら立てない」「職場に理解がないのでは...と思うため、カミングアウトすることが不安」「就職面接でカミングアウトしたら帰れと言われた」など、同性愛者や両性愛者の44%、トランスジェンダーの70%が求職時にセクシュアリティに由来した困難を覚えるという[i]。

ちなみに、国内人口の5-8%が性的マイノリティだと言われており[ii]、つまり平成29年3月の大学卒業予定者のうち性的マイノリティは2.1〜3.4万人にのぼると想定される[iii]。これは左利きの人の割合と近しい数だ、とも言われている。

■高まる企業の関心

2017年の経済団体連合会「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向調査によると、LGBTに対応する取り組みを実施している企業は42.1%、検討中の企業は34.3%であり、企業の関心の高まりがみられている。

企業の取り組みが増加している背景には、さまざまな要因があるが、その1つに2020 年の東京オリンピック・パラリンピックが挙げられる。2015 年、オリンピック憲章に、性的指向による差別禁止が明記され、また、2017年にはオリンピック・パラリンピックにかかわるすべての企業に遵守が求められる「持続可能性に配慮した調達コード」に、性的指向・性自認による差別禁止等が明記され、これからも企業の取り組みが増加すると考えられる。

また、2018年10月5日に東京都議会本会議において成立した「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例」案にも第4条において「都、都民及び事業者は、性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない」と記載されるなど差別の禁止が記載されたことで、企業の今後の取り組みがさらに注目をされている。

■LGBTも自分らしく働くことを考えるカンファレンス

そんな中、LGBTの子ども・若者の課題に取り組む認定NPO法人ReBit(りびっと)(https://rebitlgbt.org)はLGBTと就活・就労をテーマにしたカンファレンス「RAINBOW CROSSING TOKYO 2018」を10月21日(日)に東京大学で開催する。企業35社、LGBT学生・就労支援者など約800人の参加を見込んでいて、LGBTの就活・就労をテーマとしてイベントとしては日本最大の規模。

当日は、性的マイノリティの学生・就活生・求職者と、LGBTやダイバーシティに取り組む企業、そして就労支援者、行政、学校など、就労に関わるセクターが集まり、様々なコンテンツを通じた交流や、意見交換が行われる。

近年、LGBTが求職時や職場で抱える困難について社会の関心度が高まるにともなってRAINBOW CROSSING TOKYO も会を重ねるごとに、その規模を拡大してきた。初年度の2016 年には530人だった参加者も、今年は800人見込みと、大幅に増加している。参加者層は大学生や若年層を中心ではあるが、高校生からベテラン社会人までと幅広い。

RAINBOW CROSSING TOKYO 2018

http://lgbtcareer.org/rainbowcrossing/

■注目コンテンツ①企業ブース

企業ブースでは参加企業ごとのブースで、各企業のLGBTやダイバーシティの取り組みを知ることができる。参加企業数は、2016年には12社だったが、2017年は24社、今年は35社と毎年拡大を続けている。

<参加企業>

アクセンチュア株式会社、NTTグループ、LGBTファイナンス(12社)、ギャップジャパン株式会社、グーグル合同会社、株式会社資生堂、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ、株式会社ラッシュジャパン、ソニー株式会社、日本電気株式会社、株式会社丸井グループ、ユニリーバ・ジャパン、武田薬品工業株式会社、日本航空株式会社、KDDI株式会社、日本マイクロソフト株式会社、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、BLOOMBERG L.P.、EY Japan、日本アイ・ビー・エム株式会社、KPMGグループ、キャスレーコンサルティング株式会社、株式会社プラップジャパン、株式会社ペンシル

今年はじめて参加を決めたのは、Bloomberg L.P.、武田薬品工業株式会社、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、KPMGジャパン、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループなど。また、初年度は外資系企業の参加が目立ったが、日系企業の割合が年々増加している。外資から始まったダイバーシティ施策は、いまや日系企業にも広がっているということが見て取れる。

■注目コンテンツ②U-300 企業ポスターセッション

参加企業の規模も多様化している。これまでは、従業員数が何万人にも上るようないわゆる「大企業」の参加がほとんどだったが、今年は従業員300名以下の企業もポスターセッション形式で3社参加。大企業のイメージが強かったダイバーシティ施策が、様々な規模の職場にも広がっているという社会状況を反映している。

■注目コンテンツ③経験談ブース

体験談ブースでは、LGBTの社会人スピーカーたちが、自身のライフヒストリーについて語る。

スピーカーは「子育てしながら働くレズビアン」、「カミングアウトせずに公務員として働くパンセクシュアル」、「実際に職場でパートナーシップ制度を利用したゲイ」など、幅広い経験をもつLGBT計6名。参加者は、より自分の環境やキャリアイメージに近いロールモデルに出会うことができる。

■注目コンテンツ④キーノートセッションとLGBT就活調査結果報告

午前の部では、国際労働機関(ILO)駐日事務所 駐日代表 田口 晶子氏が、国際的な観点からLGBTの取り組みについてキーノートスピーチを行う。また、日本財団の助成のもとこの夏ReBitが行った国内のLGBT就活経験者向け調査や、就労支援者向け調査の報告もあり、「LGBTと就活・就労」に関する国内の最新状況を知ることができる。

その他にも、自分らしいはたらくスタイルを探せる「スーツ&メーク体験ブース」(提供:丸井グループ、資生堂)、就労支援者同士が対話や交流できる「キャリア支援ブース」、企業・行政・就活生・社会人などあらゆる立場の人が一緒にディスカッションできる「未来創造ブース」など、様々なコンテンツが予定されている。

「RAINBOW CROSSING TOKYO」には、行政、大学など様々なセクターもイベントの理念に共感し、後援や賛同として参画。

<後援団体>

厚生労働省、東京都、文京区、一般社団法人日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会(連合)、全国中小企業団体中央会、東京大学

<賛同>お茶の水女子大学、金沢大学、国際基督教大学、中央大学筑波大学、津田塾大学、法政大学、明治大学、立教大学、早稲田大学

「LGBTの就活・就労」をテーマにしたこのイベントに、これだけの団体が後援、賛同していることは非常に画期的な動きといえる。まさに時代が変わっていく足音が聞こえるようだ。LGBT当事者はもちろん、「働く」ことに関する全てのセクターの関係者にぜひ注目してほしい。

RAINBOW CROSSING TOKYO 2018

http://lgbtcareer.org/rainbowcrossing/

日時:2018年10月21日(日)9:45-18:15

場所:東京大学本郷キャンパス

主催:認定特定非営利活動法人ReBit(りびっと)

■午前の部:キーノートセッション(9:45~12:40(開場9:30)・安田講堂)

・国際労働機関(ILO) 駐日代表 田口晶子氏によるキーノートスピーチ

・調査報告 「性的マイノリティの就職活動における経験と就労支援の現状」

・企業担当者やLGBTアライの社員によるパネルディスカッション など

■午後の部:ダイアローグ(13:30~18:15(開場13:00)・御殿下記念館)

・出展企業のLGBTやダイバーシティへの取り組みを知るブース

・大学、行政での就労支援体制について知るブース

・LGBT の社会人たちと交流し、キャリアについて考えるブース

・働きやすい職場について参加者と意見交換をするブース

・自分らしいスーツやメークを試すブース など

<注釈>

[i]2016 特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ、国際基督教大学ジェンダー研究センター調査より

[ii]諸外国の調査ではLGBTは概ね2-5%程度などと推定されている。(釜野さおり・石田仁・風間孝・吉仲崇・河口和也(2015年)、性的マイノリティについての意識調査2015年全国調査報告書,207ページ)、国内の調査ではLGBTは7.6%(平成27年電通ダイバーシティラボ)や、8%(平成28年 LGBT総合研究所)といった結果がある。

[iii]厚生労働省「平成28年度 大学等卒業予定者の就職内定状況調査」により、平成29年3月の大学卒業予定者のうち就職希望者数は42.6万人。うち性的マイノリティの推計人口5~8%として計算。

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