アンジェリーナ・ジョリーの選択をきっかけに考えたこと。

私の気持ちは、「なぜそこまでやるの!?」という驚きから、情報収集し、友人たちとネット上で対話を交わすことで「無自覚だった自分を反省し、リスクを理解し、様々な選択肢があることを知ろう」というものに変わった。

「現代女性のライフスタイル」を大きなテーマに、ハフィントンポストにブログを開設することになったのだが、最初の話題に何を選ぼうかと考えていたちょうどその時、米女優アンジェリーナ・ジョリー氏が、遺伝性のがんを予防するため両乳房の切除手術を受けたというニュースが飛び込んできた。

ハフィントンポストにも「アンジェリーナ・ジョリー、乳房切除手術を告白」として詳しい記事が掲載されている。

記事によると、彼女は、乳がんと卵巣がんの発症リスクと関連する遺伝子の変異がわかったことで、リスクの高いほうの乳房切除手術を決意。約3か月かけて、乳房を切除し、インプラントで復元。乳がんのリスクはその結果、87%から5%以下になったという。

アンジーの母親は、乳がんで、56歳の若さで亡くなった。彼女は「子どもたちに『私は乳がんで死ぬかもしれないと怖がらなくていい』と言えるようになった」...とある。

ここまで聞いて、まず最初に感じたのは「なにもそこまでやる必要はなかったのでは!?」という驚きだった。予防のために、健康な器官を切除するというのは、いくらなんでも、やり過ぎではないのか、と。

すぐにこのニュースをFacebookでシェアしたところ、フレンド達から様々なコメントが書き込まれた。

「がんになってから考えても遅くないだろうに」

「スケジュール調整が可能な時期にリスクを減らしておく、これこそが、プロの女優の生き方」

「こういう選択をした女性を、差別せず、恋愛対象にできる男性の存在も、その選択を後押ししていると思う」

など。

どれも、確かにそうだ。でも、まだ「アンジーの問題」から離れていない気がする。では、自分自身だったらどうか。そう考え始めたとき、ふと、毎年、婦人科検診を受けていることを思い出した。

長年の女性誌の編集経験から、婦人科検診の重要性はよくわかっているつもりで、年に一度は乳がん検診も受けている。けれど、それは、私にとって単なる儀式となってしまっていたのかもしれない。異常なし、ああ、そうですか、という言葉を交わすためだけの。

それだけ、乳がんは "他人ごと"だった。遠い出来事だったのだ。

アンジーの本当の気持ちが知りたくなり、米ニューヨークタイムズ紙に掲載された彼女の手記「My Medical Choice」を読んでみた。そうしたら、次の一文に目が留まった。

On a personal note, I do not feel any less of a woman. I feel empowered that I made a strong choice that in no way diminishes my femininity.

(個人的な意見ですが、女性としての欠如はまったく感じていません。女性らしさを損なわない、信念ある選択をしたことで、力強くなったように感じます)

手術を受けてのちの、彼女の気持ちである。なんという力強い言葉。これもまたFacebookに書き込んでみたところ、次のようなコメントをもらってハッとした。

「乳がんで乳房を切除しなければいけなかった女性に対する、何よりの応援メッセージだと思いました」

そうだ。私にはこの視点も欠けていた。すでに乳房切除手術を受けた、数多くの女性達がいる。彼女たちにも、アンジーのこの言葉はきっと届くことだろう。

「多くの女性に遺伝子の検査を受けてもらい、もしリスクが高かったならば、こういう(予防的乳房切除という)強力な選択肢があることも知ってもらいたい。だから私の体験を公表したのです」というアンジー。

彼女が手術を受けたPink Lotus Breast Centerでは、今回のケースについての詳細を「A Patient's Journey: Angelina Jolie」というタイトルでブログに公開している。

実は、彼女の選択を、自分の中でどう位置づければいいのか、しばらく混乱していた。でも、わかった。

彼女の行動が、多くの人にシェアされ、考えるきっかけになればいいのだ。結論を出すことが重要なのではないのだ。私も、そうやって、自分の理解を深めていけばいい。今は、どこにいようとも、多くの人と話し合うことのできる場がある。

私たちは、そういう時代に生きている。

実際、私の気持ちも、「なぜそこまでやるの!?」という驚きから、情報収集し、友人たちとネット上で対話を交わすことで「無自覚だった自分を反省し、リスクを理解し、様々な選択肢があることを知ろう」というものに変わった。

今後も、さまざまな"きっかけ"をとらえていきたい。

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