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2018年12月13日 17時14分 JST | 更新 2018年12月14日 13時02分 JST

「マクロビオティック料理って、日本食のこと」マドンナの元パーソナルシェフ、西邨マユミがプロの料理人に語る

宗教やアレルギー、病気といった垣根を越えてあらゆる人が食べられる料理、それがマクロビ料理だと可能なんです。

portrait of Mayumi Nishimura
I shot this myself
portrait of Mayumi Nishimura

「マクロビオティック料理はあらゆる人が食べることができるベースの料理。そこに例えばお魚をくわえる、お肉を足してみるのは可能。」

西邨マユミの言葉に受講者から同意の声が上がる。11月21日に沖縄県那覇市で開催されたイベントでの一場面だ。

イベントに参加したのは全員ホテルやレストラン、カフェなどで何らかの形で調理に携わる方たち。参加者は「アレルギーの子どもに対応したくて」「カフェでビーガンやベジタリアン向け料理を出したい」「海外からのお客様でビーガンの方がいるが、どのようなレシピを出したらよいのかわからない」など、参加した理由は様々だ。

マクロビオティック料理とは

今回研修会で取り扱われたのはマクロビオティック(以下マクロビ)料理だ。もともとマクロビは日本での昔からのいわゆる「玄米菜食」が考え方の基本。その考えに地産地消に近い「身土不二」、そして精製されていない穀物(全粒粉、玄米など)を摂る「一物全体」の考えがベースになる。海外からはじまったイメージも強いが、実は日本が発祥。桜沢如一(さくらざわゆきかず)が提唱、その後海外で受け入れられてきた。21世紀に入ってから特にアメリカのセレブリティで流行したマクロビは日本へ逆輸入されたことになる。

西邨マユミはマクロビを1980年代アメリカで学んだ。マクロビブームのはじまる前、しかしナチュラルフードの流行はすでにアメリカで始まっていた。アメリカで食生活に変化をもたらしたとして、上院特別委員会の報告書で取り上げられたのは1977年だった。

西邨マユミはマクロビ料理のシェフとして30年以上にわたり海外で活動してきた。その根幹は、「どんな人にも食べてもらえる料理」だ。

「宗教やアレルギー、病気といった垣根を越えてあらゆる人が食べられる料理、それがマクロビ料理だと可能なんです」と西邨は言う。

野菜や豆、穀類を使った料理は最近日本でも知られるようになったハラル(イスラームの戒律にのっとった料理)だけではなく、コーシャ(ユダヤの教えに基づく料理)にも対応可能だ。

「これは2020年の東京オリンピック・パラリンピックはもちろん、増加するインバウンド向けの料理としても有効です。宗教上の規制がある人はもちろん、あらゆる食事法の方に満足いただけます。また、もしお肉や魚を食べたいなら、足せばよい。」

「一度作った食事から『抜く』ことはできませんが、『足す』ことは可能です。ベースの料理を用意することであらゆるシーンに対応が可能になるんです。」

プロの料理人のレシピを置き換える。

研修会では単にマクロビ料理を学ぶだけではない。和食や洋食、中華といった料理でのどう肉や魚を置き換えるのか、使い慣れない大豆でできたお肉や麩、インドネシア由来のテンペ(大豆の発酵食品)などのユニバーサルなレシピが紹介された。

例えばテンペのツナサラダ風であれば、蒸したテンペをすり下ろすことでツナの食感を再現する。卵を使ったマヨネーズの代わりに豆乳で作られた豆乳マヨネーズは、植物性のみと思えないほどの濃厚さだ。

「あらゆるジャンルの料理人には何百というレシピを持っています。そのレシピをビーガンやベジタリアンの方向けにどう食材を変えて、置き換えていくのか。ルールと置き換えるための食材の性質を知るだけで、あらゆる人に楽しんでいただけるレシピに変えることができるんです。」

「大切なことは私のレシピを再現することではありません。レシピから学び、どうアレンジしていくのか。私のはあくまでも『ルール』でしかないんです。」

レシピは現在SNSやアプリで無料配信が当たり前になった。そんな中でレシピは「売る」のではなく「共有する」ことが大事なのだと西邨は言う。「大切なことはルールを知り、普段ベジタリアン向けレシピのないところでもいざというときにどうしたらよいか知っているか、ということ。それだけで、増えるインバウンドやビーガン・ベジタリアンの方に楽しんでいただける料理を提供することが可能になります」

もともとのイベントのきっかけは、沖縄で急増する海外観光客による県内でのリゾートウェディングにどう対応するかということ。その中にまずは置き換える方法や食材を伝えることができればと思ったのがきっかけだ。

「何を食べたかはもちろん、どのように食べたか、それが大切。あらゆる人が楽しく食べることができれば。」

西邨マユミの今回の取り組みは、きっかけに過ぎない。この企画を受けて、有機農業に従事する生産者と厨房に入る調理人をつなぐ取り組みも行いたいと西邨は考えている。

「体に良いものを美味しく食べる。これが健康への第一歩です。毎日食べるのは無理でもせめて週に1回はお肉や魚を控える。それはできると思います。そこからどう身体が変化するのか、そんなきっかけをこれからも作りたいと思います。」

次回帰国する2019年春にはさらに生産者と調理人をつなぎ、畑から台所、そして食卓という「食」にまつわるステージをつなぐ試みができればと話す。

西邨マユミの取り組みは始まったばかりだ。

西邨マユミプロフィール

マクロビオティック・ヘルス・コーチ/パーソナル・シェフ。日本パーソナルシェフ協会 顧問/一般社団法人オーガニックヴィレッジジャパン(OVJ) アドバイザー

1982年に単身渡米、マクロビオティックの世界的権威である久司道夫氏に師事。その後、マサチューセッツ州のクシ・インスティテュート・ベケット校の設立に参加し、同校の料理主任および料理講師に就任。同時に、がん患者や子どものために食事を作る経験を通して、また働く女性でも無理なく続けられるよう、時代のニーズに合ったマクロビオティックのあり方を提唱・実践している。2001年より通算10年間にわたり歌手マドンナ一家のパーソナル・シェフをつとめ、ワールドツアーにも参加。その他にもブラッド・ピット、ミランダ・カー、スティング、ガイ・リッチー、ゴア元副大統領など多くのセレブリティに食事を提供してきた。現在は国内外で精力的に活動中。公式サイト:www.mayuminishimura.com

西邨マユミの主要著書

  • 『正しい食欲のつくり方』(ワニブックス、2015年)
  • 『三河みりんで味わうプチマクロ料理』(キラジェンヌ、2013年)
  • 『心とカラダを整える スムージー&スムージー』(講談社、2013年)
  • 『Mayumi's Kitchen 日本語版』(講談社、2011年)